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くろねこの冒険~目指せ!異世界一周~  作者: 葉桜丸
第一章 はじめまして、異世界
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57話 レベルアップした子猫とステータス

やっとシャティから解放してもらったジャックを掌に載せ、様子を見る。

はーはーと小さな体を上下させ息をしているが、怪我はなさそうだ。


…うん、ちょっとだけ大きくなった、かも。

それに以前のように腹這いではなくきちんと足で体を支えて立っている、掌にあたる小さな肉球の感触がくすぐったい。顔も心なしか少ししっかりしたように見えるし、耳も微かに大きくなった。可愛い。


ふかふかの黒い毛並みを見つめながら自然と口許を緩めていると、下を向いていたジャックが突然ぴょこんと顔を上げた。

そして何か慌てた様子でわたわたと己の背後を振り返り、と思えばひっくり返って、履いているズボンを前足で引っ張ろうとしているようだ。

「脱ぎたい、のか?」

思わず聞けば、コクコクと頷く子猫。

不思議に思いつつ彼の背中のリボンを慎重に引っ張り、ほどく。よし、今度は上手にほどけた。


オレの掌で仰向けになって、わちゃわちゃと後ろ足を蹴りズボンを脱ごうとしているらしいジャックだったが、リボンを緩めても自力ですんなり脱げるものではなかったらしい。

彼が悪戦苦闘するのを見ていたら、いつのまにか廻りに皆が集まって見守っていた。

無言だが、一様に頬が緩んでいる。うん、ジャックを見ていると自然と笑顔になるのはオレだけではないようだ。


どうにもならなそうなので、見かねてズボンの端を摘んでそろそろと引っ張ってやると、後ろ足がスポンと抜けて、小さな体はその勢いでころんとでんぐり返りしてしまった。

そして露になるジャックの下半身。

「ぶっふ!」

「ぷっ…くっくっ」

「ミャ!!」

するとそれを見たマリオとキャシーが噴き出した。それを見てジャックが怒った声で鳴く。

なんで笑う…あ、そういえば教会でも子供達に笑われてた。

毛がないと面白いのだろうか。笑うとジャックが拗ねてしまうから、止めてやってほしい。

「ミュウウウ…」

ああ、ジャックが唸っている。とても不満そうな目で毛のない下半身を振り返って見ている姿が、なんだか物悲しい。

「…くっ、わかる!分かるぞ…!」

何故かそれを見守るバリーが片手で目を抑えて嗚咽していた。


と、ジャックの白い肌が見えている部分、腰から先が微かにぷるぷると震え始めた。

「ミ?ミャ、アギャアーーーア!?」

「ど、どうした、ジャック」

その震えは下半身に広がっていき、体全体が痙攣するようにガクガクと揺れ、程なく短い足をばたつかせ、もがき始めた。

慌てて片手に載せていたのを両手にし、その体が転げ落ちないよう支える。

突然のことに皆固唾を飲んで見守っていたが、徐々にジャックの体に異変が起き始めた。

まっ白だった尻や後ろ足が黒く染まり、柔らかな毛の流れが出来ていく。

瞬く間に…ジャックの全身は艶やかな黒い毛に覆われていた。



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



け、毛が生えたーーー!!

なんかいきなり痒くなったと思ったら、毛ーーー!

うわー良かった、ゲームとかだとレベルアップする時体力が回復したりするの思い出して、まさかと思ってたけど。

まさか本当に生えるなんてラッキー。時間差でふっさふさ。ようやく猫に戻れた気分だ。

いやーレベルアップがある世界、超便利じゃん。


「…な…んじゃそりゃあ!?おい、なんだそれ!なんなのそれぇー!?」

うおっ、バリーどうしたんだ?

なんか叫びだした、どうしたのおっさん。ズルいとか同士じゃなかったのかとか、そんなん叫ばれてもわかんないよ。

ちょっとびっくりして、思わずクルルの肩にかけ上ってしまった。


おー、前より動きが軽いぜ。ズボン脱いだのもあるけど、足もすこーし長くなったような…気のせい?

「うおおおおお…ッレベルアップすると生えるだなんてぇー!なんて羨ましい俺も魔物になりたーい!!」

「ちょっとバリー、さすがにそれは…いえ、悪かったわ。でもね、一応言っておくけどぉ、普通の魔物はレベルが上がっても毛や怪我はそのままだからねぇ。こんな事例聞いたこともないからー…多分この子は色々特殊なんだわぁ、そもそも種族も分類もわからないものぉ」

マリーの話にふんふんと頷いているクルルとキャシーだったが、肝心のバリーは頭を抱えて叫び続けていた。

おっさんの大きな両手の平で包まれた頭部、黒いバーコードの隙間から覗く肌は木漏れ日を受け艶やかに輝いている…

…あ。なんかちょっと、察したわ。



それにしても、四つ足できちんと立てるのはやっぱ楽だなー。

さて、おっさんのことはいったん頭の中から追い出して、と。大丈夫とは思うが一応腰と尻の毛が本当に生え揃っているのか確かめよう。

背後を振り返る。でもひねりが足りなくて見辛い。ぎゅっ。

せ、背中が半分までしか見えない、ふぬ、ふぬ。

クルルの手の平の上で、後ろ付きに廻る俺。


ぐるぐるぐる。


「何してるのジャックちゃん。クスクス」

ぬぅ、笑われた。だって見えそうで見えないんだよコレ。

…あ、見えた!

よし、ちゃんと生え揃ってる、しっぽの先っちょまでちゃんともふもふ。

これで一安心だな、せっかく作ってもらったズボンだけど、もう履かないで良さそうだ。



その後、クルルの手から下ろしてもらい、軽やかな足取りで気が済むまで地面をてこてこ歩きまくった。

気分的には全力で走りまわりたかったんだけど、早く歩こうとした段階でコケたので諦めた。

二本足と四本足、もうさすがに慣れたとはいえ感覚が全然違うからな。違和感がなくなるまで要練習ってところか。


すぐ襲いかかってくる遊び好きな子猫達はシャティとリタが相手をしてくれていたので安心安全。

うむ、やはり自分の足で歩けるのは気分がいい。

少し疲れたので馬車の前で雑談を始めたクルル達の足元に落着き、一休みする。

前足をペロペロ、うーん肉球がヒヤーッとして気持ちいい。


しかしレベルアップねぇ。改めて考えてみるとわくわくする。

ゲームとか漫画の知識を思い出して考えてみようかな。レベルアップ、レベル…

んー、なんか新しく出来ることが増えてたり、体力、腕力が増えてたり?

そうなるとここは異世界、魔法とかはどうなんだろう。俺ただの猫じゃないんだよね?魔物って言ってたし魔法使えるんじゃないの。

どうせなら以前ライアットのじいさんがやったみたいな、ド派手な魔法を使ってみたい。

あー、ゲームみたくステータスとか数字になってると分かりやすいんだけどなー。

そう思った瞬間、顔のすぐ目の前が明るくなった。


ふお!?

な、なんか出てきた!これ、これってアレか!?


俺の目の前には、淡く光る四角い枠がふよふよと浮かんでいた。

装飾みたいのはなくて、RPGのステータス画面みたいに文字と数字が並んでるだけ…光ってはいるけど。


って、近い。近すぎて読めない。

目が悪いじいちゃんみたいに顔を後ろに引いて目をすがめていると、光る枠がふよふよふよーと少し後退した。

あ、これなら読めるよ、ありがとうステータス画面さん。

えーっと、なになに?



[ 名前 ]  ジャック

[ 年齢 ]  一カ月未満

[ 種族 ]  猫もどき?

[ 職業 ]  使い魔

[ 称号 ]  非力なる魔獣

[ レベル ] 1

[ 力 ]   1

[ 体力 ]  2

[ 攻撃力 ] 1

[ 防御力 ] 1

[ 魔力 ]  10

[ 敏捷性 ] 1

[ 魔法 ]  鑑定魔法(初級)

       火魔法(初級未満)

[ 装備 ]  -

[ スキル ] ベビーシャウト

       ちびっこクリティカル

[ 特殊 ]  変化

       ウロボロスの加護

[特殊スキル] ド根性



…?


これ、もしかして俺のステータス?

わぁ、こういうふうなんだ。なんだかほんとにゲームみたいだな。

わくわくしながらざっと目を通すも、所々違和感があって頭に入ってこない。


しかしふと気になって、ちらりと周りの様子を確認してみる。

クルルもキャシーもみんな頭上で何事もなかったように会話しているだけで、俺の眼前の「ステータス画面(?)」を見ている様子がないのだ。


若干一名シャティだけはこっちをガン見してるけど、鼻息荒いし多分違う理由で見てる。

ふぅむ。

自分のステータスは他の人には見えない、とか?プライバシー的にそれならありがたいけど。

おっと、まぁとりあえず確認せねば。

俺は鼻歌混じりにそれをじっくり読み込んでいった。


…ん~?

な、なんかやっぱあちこち突っこみたい箇所があるんスけど。

種族名「ねこもどき?」って、ホントに種族名か?もどきって言っちゃってんじゃん、ハテナついてるし。

おい「非力なる魔獣」って何さ。

確かに弱っちいけれども。うう、生まれてすぐは弱くて当たり前じゃん。きっとすぐ強くなるもんね(予定)

しかも「レベル1」…さっきレベルが上がったのに、1…じゃさっきまでの俺はなんなんだよ。

「力1」とか「体力2」とかあからさまに数値が低いのは、まぁ置いておこう。平均値がどのくらいかも知らないし。

もしかしたら案外、悪くない数値だったりするかもしれないし。見たまま判断すると軽く絶望しそうな低さに思えるけど、うん、まだ結論は早いよね。


ぱっと見て妙に気になってるのが、特殊って項目の「ウロボロスの加護」ってやつだな。

…ウロボロスって、なに?タバコの銘柄?


んー、どこかでちらっと聞いたことがあるような、ないような。

なんだっけ、星座とか神話とか、だっけ?

うーん、加護…加護?

あー、映画とかで「神のご加護」とかいうセリフあったよね。御守り的なもの、かな?ほんとにわかんないぞ、何これ。


うんうん悩みながらステータス画面ぽいものを眺めていたら、近寄りすぎて髭が枠に触れてしまった。すると一瞬光が強くなる。

「…ミッ!?」

わ、枠がもう一つ出てきた!?びびった!

「ミュ?」

なんだ、なになに…

新しく隣に出てきた枠には、短めの文章が書かれていた。



[ウロボロスの加護]

異界の神ウロボロスの加護。「ウロボロスの興味」「ウロボロスの好奇心」を経て得られる。この神の祝福をその身に受けた者は数えるほどしかいない。

効果:即死無効、体力・魔力・敏捷倍増。全属性魔法効果倍増。



んん?

神様…ウロボロス…って、もしかしてあの女か?

ウロのこと、だよね?他に神様の知りあいなんていないし。

すげぇ、あの女、いやウロ様すごい奴だったんだな!なにこの効果、これってめちゃ強いんじゃないの!?

体力倍増とか魔法効果倍増とか、見るからにすごそう!


これならきっと俺もすぐ強く…

もしかして「即死無効」って…今まで死にそうな目にあっても生きてたのは、これのお蔭か。

おお、マジでウロ様命の恩人。いや恩神?

ありがたやありがたや。

手を合わせてお祈りしておこう、なむなむ。いや違うかな、なんて言って祈ればいいんだろ。ウロウロ?

んー、違う気がする。次に会った時きちんとお礼言っておこ。


思いがけない幸運に気を良くして、ワントーン高い鼻唄を奏でながら他の項目を見る。

さて次に気になるのは、魔法、スキルって項目か。

これももしかして、触ると説明文が出たりするのかな。

ちょいと前足で触れてみる。


ぱっ


おお、新しい枠が出た。なになに…



[鑑定魔法(初級)]

任意の物質、人物の詳細を知ることができる。内容は熟練度によって異なる。

消費魔力は、鑑定内容により上下する。



か、鑑定ってあれじゃね?

確か、ギルドに行かないと受けられないって言ってたよな。それってことはものすごくレアな魔法…だよね!?

やった、俺この世界の勝ち組か!?

詳しく解ってないけど多分間違ってないよね、うわ、俺すごいラッキーじゃん!ギルドの担当員は鑑定魔法だけで食べていけるっぽいこと言ってたもんな、ライアットのじいさんが。


舞い上がってウキウキしながら、さて実際に使ってみようと思い、はたと気づく。

まほう、ってどうやって使うんだろう?


か、鑑定魔法、魔法ってことは、えっと…なんか呪文とか唱えるのか?なんにも解らないんだけど。

目の前のステータス画面ぽい枠を再度つっついてみるも、何も起こらない。うりゃ、つんつんつん。

く、触ったら発動するって訳じゃないのね。

しばらくもたもたしていたが、ふと背後に気配を感じて振り返る。

「ジャック、大丈夫、か?」

いつの間にかしゃがんだクルルが俺を見下ろして、心配そうな顔をしていた。


…あ。

そっか、もしかして何か人とか物とか、魔法かける対象に向かってないとダメなのかも。

俺は体の向きを変えて、クルルのほうに意識を集中すると「こいつに鑑定魔法を使いたい!」と強く考えてみた。


「ミャーッ!(かんてーまほー!)」

ぱっ


やった、出た!!

俺とクルルの間に、さっき見たような光る枠が現れて…だがその瞬間俺は何故か目の前が真っ暗になり、意識を失っていた。

ステータス考えるの難しいです。

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