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くろねこの冒険~目指せ!異世界一周~  作者: 葉桜丸
第一章 はじめまして、異世界
55/102

55話 レベルアーップ!

馬車内に作られた椅子から足を下ろし、立ち上がろうとするリタ。だが腰を浮かせようとするとその肩がぐらりと揺れ、とすんと再び椅子に尻をついてしまった。

「無理するな、もう少し休んでいたほうがいい」

「バリー…、お、オークは?私達、助かったの?」

リタは不安げに辺りを見回しながら、胸の前で両手をぎゅっと握りしめた。

怪我はなさそうだって言ってたけど、ほんとに大丈夫なのかな?唇が白いし震えてるみたいだ。元々が細くて華奢な娘だからすごく痛々しい。

「ね、猫は?子猫達はどこ…」

「大丈夫だ。ほら、そこに」

バリーに言われてから椅子の下の木箱に気づき、リタは急いで中を覗きこんだ。その顔がくしゃっと歪み、破顔する。

震える腕を箱に伸ばすと、さっきまで物音一つさせず箱の中で大人しくしていた子猫達が次々とリタの腕にしがみつき、肩や膝によじ登っていった。

「ニャー(こわかったよー)

「ミャー(ここどこー?)」

「ニャー(かーちゃんはー?)」

リタにまとわりつき、ニャーニャーと騒ぎ始める子猫達。彼女はすごく猫に好かれてるんだな。

泣き笑いしながら子猫を一匹ずつ抱きしめ、5匹目を解放したところでキョロキョロと馬車の中を見回す。

あ、俺のこと探してるのかな?子猫達と一緒になってたし。

「ミュー」

クルルの肩の上から、俺も無事だよーと声をかける。声を聞き付けてぱっとこっちを見たリタの目が驚きに丸くなった。

「リタ、こいつが俺たちを助けてくれたんだ。しかもたった一人でな」

バリーが朗らかに笑い、クルルの頭をぽんぽんと叩く。

リタは驚いた顔になりしばらく目を瞬かせて、でも頬をほんのり赤く染めながら「ありがとう」とつぶやいた。か、可愛いなこの娘。

クルルは一瞬遅れて自分が言われたと気づいたらしく、ぎこちなく小さく頷いた。

反応うっす!おいこら、こんな美少女に頬染めてお礼言われて、そんだけかい。健康な男子としてお前それでいいのか。

「…ニャ?」

そこで、リタにしがみついていた子猫達がこっちに気づいた。真ん丸な十個の瞳が一斉にクルルを見詰める。

「「「フギャアアアア!?」」

…すっごい勢いで、再び木箱の中に飛び込んでしまった。しかも5匹とも。

あー。子猫達もこいつが怖いわけね。

そろーっとクルルの横顔を盗み見たが、お通夜みたいに悲壮な顔になっていた。

リタの傍にいたバリーがぎょっとして、しかしすぐ何かに思い当たったように何度も頷く。

「クルル、お前オークの帰り血を被っちまったんじゃないのか?それで怖がってんだよ。村に帰ったら石鹸で体洗っておいたほうがいいぞ」

おお、ナイスフォローおっさん!

ん?

っていうか、石鹸あるんだ。じゃ、もしかしてお風呂もあったりするのか…いや昔の映画とかだと金持ちの家にしかなかった、ってそういやここ異世界じゃん。どうなんだろ。

お風呂かー、人間だった時は大好きだったんだけどなー。もし俺も風呂に連れていかれそうになったら、死ぬ気で逃げねば。


箱の中で身を寄せあい震える子猫達を撫でてから、リタがようやく立ち上がった。しかし足元がふらついてて、なんか危なっかしい。

バリーが肩を貸そうとするも高さが合わなかったらしく、右手を添えるだけに落ち着いた。リタは時間をかけてふらつきながらも馬車から降り、街道の脇にあった石に座った。


それから、バリーとリタが話をし、クルルがぼーっとしてるのをしばらく眺めていたが、なーんか頭上が気になってふと見上げてみた。気配っつーのか、妙な空気を感じる。


(………)


なんか声がするような…

なんにもない、よく晴れた空しかないんだが…鳥が鳴いてるんかと思ったけど、鳥だったらピーとかキーって鳴くはず。

やっぱり、これは声だ。誰かが小声でしゃべってる。


(…ねぇ、人がいるよ)

(人だね、小さい毛むくじゃらもいる)

(わー、かわいいな!)

(こら、近づいちゃダメだよ)


…んー?日本語?

声がはっきり聞こえたので、その方向にさらに目を凝らしてみる。


じーーーーー。


…お。

なんか、何もないと思ってたけど、半透明の小さな雲っぽいのが浮いてた。しかも、たくさん。

これ、あれだ。ヴァイスが使ってた奴のミニチュア透明バージョンだ。


(気づかれないようにね)

(わーい)

(近づきすぎると気づかれちゃうよ)

(仔猫がいるー)

(人間だー、お祭りはー?)

(歌!音楽!早くお祭りー!)

(バカ、お祭りは再来月!)


耳を澄ます…会話の内容がちょぴっと聞こえた。小さな子供みたいな声がわきゃわきゃ騒いでる、みたいだ。

小さいふわふわの雲が、うろちょろと空を動き回る。無意識にその一つ一つを目で追った。眉間に力が入り髭がふわぁっと広がっていく。

あー、なんだろこの気持ち、捕まえたい。一匹欲しい…


じーーーーー。


(責任重大だよ、ボクらが守るんだ)

(ねー、ヴァイス様はー?)

(だからさー、聞いてるのー?)


あ、今ヴァイスって言った奴がいる。やっぱあいつの関係者か。


じーーーーー。


(…ねぇ、あの黒いのがこっち見てるよー?)

(え!?)

(うわわ、もうちょっと上行こう!)


あ、透明雲がぞろぞろ上に上がってく。声も聞こえなくなっちゃった。

なんだったんだあいつらは。



雲が見えなくなったので諦めて視線を戻す。だがクルルもバリーも、あの雲に気づいていなかったらしい。

えー?あんなにキャーキャー煩かったのに、なんで?

俺は頭にはてなマークを浮かべつつも、気にしないことにした。なんか今日は色々ありすぎて、考えるのがめんどくなったのだ。

まー異世界だし、なるようになるさー。




オークは倒したし、もう村に帰ったほうがいいんじゃないかなーと思ってたんだけど、なにやら騎士団が救援に来るはずだからそれを待ったほうがいいと言うバリー。

そもそも馬車で出てきたから距離がいまいち分からなかったけど、今いるとこは村から10キロくらい離れてるらしい。で、馬車はオークが乗り込んで来た時にその重さに耐えきれず、あちこち壊れちゃっていた。

馬車の修理なんてすぐには出来ず、リタはそんな長距離を歩けない。なら、お迎えを待つほうが安全だぞーということだ。

また魔物が襲って来るんじゃないかと不安を訴えるリタに、すぐ傍にオークの死体が積み上がってるから、余程凶悪な魔物でもない限り警戒して近寄らないと説明していた。


ふーむ、オークはわりと強い魔物っぽい言い方だな。

弱い魔物だとスライムとか、昆虫系のがいるってどっかで聞いたっけ…あ、始めて村に入った時に聞いたんだ。スライムと一騎討ちやらされて負けた時。

…スライム、強かったですよ?


釈然としない気持ちでいたら、街道の向こうからドドドッ、ドドドッっという何かの足音が聞こえてきた。

程なく俺達の前に馬に股がった鎧姿の騎士達が現れ、辺りがにわかに騒がしくなった。

無事を喜びながらオークの山に驚く騎士団の団長に、バリーが説教を始めたのにはビビった。偉い人なんじゃないの?その人…

でも、騎士団の率いる馬車の中からキャシー達が降りてきて、俺はそれ所じゃなくなった。

「ジャックちゃーん無事だったんだね!?心配したんだよぉーーーー!」

「フギャーーーー!!」

「ちょっとシャティ!猫禁止はどうしたのっ」

「もふもふもふもふもふーー!」

「シャーッ!ギャーー!」

キャシーに助け出されるまで、俺は全身頬擦りされもみくちゃにされたのだった。




「全く…事情が事情だから仕方ないとはいえ、今回クルルがいなかったら俺もリタも危なかったんだからな!」

「うう、すまない…」

「バリーのおっさん、悪かったって」

助けに来るのが遅かった騎士団、あと村の自警団の面々が俺達の前にずらりと並んで…正座させられていた。大男ばかり、鎧とか着込んでの正座は、すごく異様な光景だった。

つーかこっちの世界にも正座する文化あるんだ。

あ、でも後ろのほうで何人かぷるぷるしだした。限界早いね、やっぱ鎧の重さがキツいのかな。


バリーは怒りつつも、騎士団と自警団が遅れた理由を聞いて思案顔だ。

「オークジェネラルか…どのくらい育った奴だったんだ?」

「ああ、成体に近いがまだ若い個体だったよ。あと、片言だが言葉も話していた」

「まじか」

団長の言葉に、頬をひくつかせ青褪めるバリー。

なんでも、俺らが馬車で連れ去られてすぐぐらいに、村の近くにオークの大群が現れたそうだ。

それを騎士団が迎え撃ったのだが、団長いわく普通のオークの群れとは全くレベルが異なる強さだったらしい。

その理由は、オーク達を率いる親玉にあった。


ゴブリンやオークはちょっと大きな森があるとすぐに数を増やし、群れを作って他の生き物を襲うようになる。近辺に天敵がいない、餌場が豊富、また人間に討伐されない等の条件が重なるとさらに個体数は増大、集落と呼ばれる「村」を形成する。

そうなるとさらに厄介なことに、進化した個体が生まれ始めるんだそうな。

ゴブリンも進化すると強くなるみたいだけど、オークの進化した個体はかなりヤバイ。元々普通のオークでも、300キロ越えの巨体から繰り出される攻撃は強烈で、ビギナー冒険者が毎年何十人も犠牲になるくらい強いらしい。こえー。

オークが進化する時、ごく稀に「ジェネラル」や「キング」という種族が生まれるんだが、これが一匹いるだけで、並の戦力では太刀打ちできないほど統率のとれた群れになってしまうらしい。

こうなると、最早村や町レベルの自警団や並の冒険者では相手をするには危険なので、国の直轄の騎士団の出番となる。それも一個師団相当の戦力が要る、と。


で、今回いきなり現れたオークジェネラルなんだが、どうも様子がおかしかったそう。

力馬鹿で魔法を使えず知能も其ほど高くないはずのジェネラルなのに、数種類の魔法を使用し、人語を話し、部下へ細かく命令を出してかなり高度な戦略すら感じ取れたそうな。

これはかなり異様なことのようだ、団長の顔も渋いし、自警団の人も苦虫を噛み潰したように顔を歪めている。

「気になるのは奴の…最後に言った言葉だな。あんなの信じる訳じゃねーが、万が一に備えて早急に集落を潰す必要がある」

自警団の…こっちも団長って呼ぶのかな?一番偉そうな人がすごく嫌そうな声で言う。


自警団の団長(仮)は獣人だった。

見上げるくらいでっかい大男で、変な色の皮の鎧にマントを羽織ってる。頭のてっぺんにはピンと立った犬耳、シェパードっぽい立派な毛並で一ヶ所切れ目が入ってる。

むき出しの腕は太く固そうな筋肉に覆われていて、全身あちこち傷だらけ、服もボロボロ。こんな強そうな人なのに相当苦戦したんだろう。

よくよく見れば騎士団の人達も鎧が土や赤黒い血で汚れてて、白い包帯が随所に覗き見えた。ど、どんだけ強いんだオークジェネラル。


聞いててゾッとしたんだが、そのオークジェネラルに止めを刺す時、妙なことを叫んだらしいのだ。

「ココデ ワレヲ コロシテモ、アレガアルカギリ ワレラハ フメツダ!!」

…うん、これは多分ヤバイやつ。何かとっておきの秘策があるっぽい、これほっておいたらさらに強いのが出て来るね。




わいのわいのとこれからの事を相談しあう騎士団と自警団、バリー。

深刻な顔の彼らとは少し離れた場所に移動して、壊れた馬車の横にクルルとキャシー、リタが座って休んでいた。

「なにー!?こいつらが猫ちゃんを浚っただってー!?」


ゲシッゲシッ


「こらこらやめなさぁい、いくら犯罪者だからって無抵抗の人を蹴っちゃダメよぉー」

そしてマリーとシャティもいた。

馬車の中に気絶したまま転がされている男達を見張って…蹴っている。

「ニャー」

「大丈夫だよ、ボクがいるからね!悪いおじさんは成敗するからっ」

「ニャーニャー」

「成敗するのはギルドよぉ…バリーさんが言ってたでしょお?こいつら、禁止薬物を無許可で持ってたのよぉ。モノの出所を調べなきゃいけないの、殺しちゃダメよー」

「えー」

口を尖らせてぶつくさ言うシャティ。頭の上や背中には子猫達がしがみついていた。

つーか驚いた…子猫達があの女にめちゃめちゃなついてる。何故だ。

あ、リタもなんとなく不満そうな顔だ。やっぱあの女は変態と見られてるわけね。

「オークジェネラル率いるオークの大群の襲撃に、狂い茸の不法所持の冒険者。すごいな、下手したら小さい村一つなんて消し飛んでたかもしれないじゃないか」

ぼやきながら顔の汗を拭うマリオ、しかし少し捻っただけで「いてて」と腹を抑えている。

オークの大群に村が危うく襲撃されかけたところを、騎士団+自警団+村の有志で戦ったらしく、たまたま滞在中だった冒険者のマリー達も加勢したのだという。


ちなみに、いろんな人に賢者様とか呼ばれてるライアットのじいさんは…二日酔いのダメージが色濃く残っていたらしく、攻撃魔法を使った反動で倒れてしまったそうだ。

今は教会で休んでいる、と騎士団の人達が頭を掻きつつ苦笑いしていた。

魔法って、使う側にもダメージ来るのかな?それともじいさんが貧弱なだけ?

団長の様子からすると後者かな…


それはいいとして、マリオが辛そうだ。また傷口開いたんじゃねぇの?

怪我人なんだからおとなしくしてろってのに。こいつこの調子じゃいつまでも怪我治らないんじゃないのか。

「しっかしクルル、お前強かったんだなー。猫人が一人でオーク5体倒すとか中々聞かないぞ、心配して損した」

「そうよ、もー!一人で森に突っ込んでくなんて。村にオークの群れが来るし、あたしすっごく心配したんだからねっ!」

ぷりぷり怒っているのはキャシーだ。なんと彼女もオークと戦ったのだという。「あたしも一匹倒したのよ!」とドヤ顔で言ってた。

大人しく話を聞くクルルだが、目線は馬車のほう…シャティに群がる子猫達から離れない。すっごくせつなそうな顔だ。

「ミュー」

なんか可哀相なので、肩の上から慰めてやる。元気出せよ。


ポフッ


クルルの首の根元に前足を押し付けてムニムニした。

本当は肩をポンポンと叩いてやりたいんだが、それやると多分バランス取れなくて落っこちるからね。

「ジャック…」

気持ちは伝わったみたいだな。クルルが俺に微笑みかける。

「ミュ?」

と、思ったら片手で持ち上げられて、そっと地面に降ろされてしまった。

え、なに?

「どうしたの?あ、もしかしておトイレ?」

「た、ぶん」

うおおいキャシー&クルル!?違うよ、俺今もよおしてないよ?

「ミ、ミャ」

「こっちの草生えてるとこのが見えなくて落ち着くんじゃない?ほんとジャックちゃんて猫なのにお利口よね、おトイレしてるとこ見られたくないなんて」

おおい、俺首を横に振ってますよー。トイレじゃないよー、気づいてー。

アピールするも空しく、俺はたんぽぽやぺんぺん草っぽいのがわさわさ生えてるとこに移動させられてしまった。


あー…なんか言いたいことがすんなり伝わる時と、全然ダメな時があるんだよなぁこいつら。

背の低い草の間から見上げ、ため息をつく。

「ニャー!(ちいさいのいたー!)」

「ニャニャー(遊ぶー)」

「ニャー(バッタとるー)」

うわ来た。

シャティに群がっていた子猫達が俺を見つけて、一直線に駆け寄ってきた。まるでお気に入りのオモチャを見るようなキラキラした目で…。

あっという間に先頭を走る白っぽい子猫が突っ込んできて、草の上に押し倒された。

「ミ!(ぐぇ)」

「ニャアー(あちょぼー)」

「ニャー(はっぱいっぱいー)」

「ニャー(ひろーい)」

広さはたいしてないものの、背の低い草が一面に広がる原っぱは子猫達にとってかなりワクワクする場所のようだ。村の広場と似てるけど違うしな、こいつら普段は村から出られないみたいだし。


でもちょっとこれ、誰か助けてくんない?

テンションマックス状態で次々まとわりついてくる子猫達に突き飛ばされ抱きつかれ、はっ倒される。


ゴリッ。


「ミャ!(いてっ)」

せ、背中の下に何か固いものがあったっぽい、思いっきり乗っかってしまった。いったーい。


ピカッ!!


「ニャ!(わっ!)」

「ニャニャ(ひかった?)」

な、ななな何!?

なんか今俺、一瞬光ったよ!なに今の!?

光はすぐ消えたが、子猫達と顔を見合わせて困惑する。あれ、気のせいじゃないよね?

「ん?今、その猫光ったぞ…レベルが上がったんじゃないか」

「ミャ!?」

レベル!?マジで!?

マリオの言葉に慌てて飛び起きると、俺の背中の下敷きになっていた物がぱらぱらと地面に落ちたのに気づき、振り返って確認してみた。


…バッタ。

俺の全体重で…ばらばらになったバッタの残骸が散らばっていた。ちょっとグロいね、サイズ的に。

えー…俺ってバッタ一匹分でレベルアップしちゃうほど弱かったのね…な、なんか軽くショック。レベルが上がったのは単純にうれしいけども。

体を半分起こして背後を振り返った状態で複雑な気分になっていると、なんとも言えない顔をしたキャシーと目があった。

「…バッタ…あれでレベルアップ…?嘘でしょ……あ、ああ!違う違う、ほんと良かったわねジャックちゃん、これで使い魔として認めてもらえるわよっ」

ううう、へこむからそういうこと言わないでくれよぅ。

「ジャックちゃんがレベルアップ!?み、見せて見せて!」

「まぁー、やっと何か倒せたのねー」

ぎゃあ、セクハラ女が来たぁ!

わたわたと周りの子猫達を掻き分けて逃走を試みる。つーか、マリーはもうあの女止める気ないだろ。


よちよちよちよち。


「ゲーット!」

ぱふっ!


「えっ」「あら」

数歩進んだところであえなく確保されてしまう俺。

くっそー、やっぱりハイハイだと遅…あれ?

い、今俺歩けた?歩いてたよね!?

「まぁーすごいじゃない、その子歩けるようになったのねー」

「むむむっ…プラス110グラム!」

「ちょっ、なんで持っただけで体重分かるの」

「ボク、実家が肉屋なんだ」

「…に、く?」

おいこら、俺を豚バラ肉とかと同じ扱いすんな。クルルが顔を青くしてるじゃねーか。

つーか、俺って体重もちょっと増えた?歩けるようになったし、一個レベルアップしただけでこれってことは、どんどん上げて行ったらすぐ大人になれるんじゃないの?

シャティの手の中でもがきながらも、喜びが勝っている俺だった。

うらー覚悟しろ、この変態女!レベルが上がってパワーアップした俺の攻撃に恐れおののくがいい!


がぶがぶ、けりけり!

じたばた、じたばた。


「おー!蹴りもかみかみも少し強くなってるよジャックちゃーんでへへへへへ」

だらしなく目尻を下げて俺をなでまわし頬擦りするシャティ。

ぬあー!まさかのノーダメージ!


自分がもがき続ける横でマリーが微妙な顔をしていることに俺は気づかなかった。

「…レベルが上がったのに、110グラムしか大きくならなかったのねぇ。全然違いがわからないわぁ~」

「うーん、魔物の子供って一つ二つレベル上がると別の生き物みたくなるはずなんだけどな。これは…ちょっと先が長いかもしれんぞ、クルル。おい、聞いてるか?」

「シャティ、ジャックがいやがって、る。離してくれ…ない、か」

「も、もう少しもう少しー!あああほわほわふわふわぁー!肉球キックがたまんないよー!」

「フギャーーーー!!」

やっとレベルが上がりました(笑)

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