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くろねこの冒険~目指せ!異世界一周~  作者: 葉桜丸
第一章 はじめまして、異世界
41/102

41話 幕間 勇者山田の旅立ち(中編)

長くなってしまったので、3つに分けて投稿いたします。

お上品な晩餐会が終わり、小柄な少女はメイドに連れられて部屋へ帰っていった。

去り際にちょっと名残惜しそうな、まだ何か話したいような顔をしていたが。ま、今回俺はしばらくここに残って様子を見るから、明日でもいいだろ。。


「で?エリシャの姉さん、状況は?」

少女が退室した後にやっとテーブルに並んだアルコール類を眺めながら、どれから飲むかうきうきと悩む。ここに来るとうまい酒が飲めるのがいいな。

そんな俺の態度に、部屋に待機している近衛達の目つきが鋭くなった。めっちゃ睨まれてる。それを尻目に向かいの椅子に座ったエリシャ…皇太后は難しい顔でグラスを手に取った。

「思わしくはないわね。我が息子ながら愛想が尽きそう…」

「…そっか」

二人して一息にグラスを煽ると、ゴクリと飲み込みながら目を閉じた。最高級の酒、だがそれを味わうにはちょっと苦い話題じゃねぇの。

あー、もーどうしてあのクソガキとクソガキは…



この国、っていうか世界中のどの国でも、今現在異世界からの召喚を行うことは禁止されている。

そもそも過去現在未来において、召喚術なんて知識と技術はあっても世界共通で禁忌であったはずなのだ。あの魔王とかいう化け物が現れるまでは。


10年以上前になるか、突然どこからか魔王と名乗る化け物が魔物の軍勢を率いて現れて、各地で暴れ始めた。

奴らに対抗する術をもたない人々は蹂躙され、瞬く間にいくつもの国が滅ぼされた。で、それまで世界中でいがみ合ってた国々は、同じ人間同士で争ってる場合じゃないと気付き、団結。対策を練り始める。

そこで一部のアホが異世界から強大な力を持つ者を召喚し、魔王を倒してもらおうと提案した。たしか、言い出しっぺはどこだかの国の学者だったか王族だったか。なんでも、異世界から召喚される者は例外なく神々からの贈り物を受け取り、絶大な力を持って現れるそうだ。

各国の王の多数がこのアホ作戦に乗っかってしまい、それまでの教会の教えを捨てるような真似をしやがった。すなわち、女神教では大罪にあたる…いや、人として許されない外道の…異端の術『召喚魔法』を実行してしまったのだ。さらにありえないことにそれが次々成功してしまった。

召喚された者は全員とてつもない力を持ち、勇者と呼ばれ魔王と戦うようになっていった。


ちらりと、テーブルの向こうでナッツを齧りながらグラスを揺らす人物を見やる。

エリシャは、10年前も今回も、なんとかして王を思いとどませようと努力していた。自分の息子があんな悍ましいことに加担するなんて信じたくないと言って、涙さえこぼしていた。

だが結局彼女一人の力では、金と力に狂ったこの国のお偉方と…奴らに染まってしまった王を止めることはできなかった。



つい数か月前にこの国で秘密裏に『召喚』されたのは、まだ若い一人の少年だった。

彼は王の「魔物の脅威から人々を守ってくれ」って与太話を鵜呑みにし、みるみる内に強大な力を示し始めた。俺がエリシャからの連絡を受けて慌てて駆け付けた頃には、すでに王とアホ共の影響で我儘で横暴な奴に成り下がってしまっていた。数日で染まっちまったんだから、元からの性格なのかもしれないが。


俺は、10年前に得た褒章で世界から『生きる権利』を勝ち取った。なので、今はいつどこに行こうが何をしようが自由だ。誰も俺の生き方を決めることはできない。どの国のどんな権力にも屈しない、与しない。

だからエリシャを助けてやりたくっても、俺が馬鹿共を直接ぶちのめすのはアウト。まぁ、そういうことをすると故郷に迷惑がかかる、と思う。多分。うん、まずいよな。


つい今しがた部屋を出て行った少女を思い返す。あのちっこいのも、この国の犠牲者の一人。

クソガキ勇者を召喚して味を示したのか、王はあろうことか猛烈に抗議していたエリシャにすら内密に事を運び、舌の根も乾かぬ内にさらなる召喚を行ったのだ。

結果、なんと2回目の召喚も成功してしまった。

が、そこでまぁ予期しないことというか当たり前と言うか、召喚の魔法陣と古代魔石がとうとう壊れてしまった。ま、都合3回使ったんだし、あんなふっるいモンいつ壊れても不思議はない。だからまぁ、次の犠牲者が生まれることはない。唯一の安心要素だな。


しかし、まぁ…クソガキ勇者もちっこいのも、召喚されてすぐ鑑定の魔道具で徹底的に調べられている。

ちっこいのが召喚されて今日まで、せいぜい2,3ヵ月ってところか。その短い期間で、新しく身につけた魔法に、スキル。言葉もあっという間に話すようになった、と。

末恐ろしい、こりゃクソガキ勇者どころか10年前のよりすごい奴になるかもな。



エリシャが言うには、ちっこいのは自分に戦う力がないことを悩んでいるらしい。だがその理由が、なんと自分を助けてくれたエリシャの力になりたいというもの。

勝手に違う世界へ連れてこられて、言葉もわからず閉じ込められて…こんな理不尽な扱いを受けてなお、他のやつが困ってるから力になりたいとか、人がいいにも程がある。

うーむ、そういうことなら俺も少しは手伝ってやるか。

要は敵を攻撃出来ればいい、剣や槍を使わなくてもそれは可能だ。やりようはいくらでもある。

悩むエリシャにそう伝えると、嬉々として承諾してくれた。

なんか、俺相手に特訓するって話になってるが…周りに侍る騎士共が悪い顔で笑ってる。さっきのまだ根に持ってんのかよ、仕方ねーじゃん雷雲に突っ込んじまったんだから…

それから数日間、俺は毎日ちっこいのの特訓に朝から晩まで付き合わされることとなった。



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



私は今、激しく揺れる馬車の上で後ろを向いて仁王立ちをしている。

冷たい風がびゅんびゅん吹き付けて顔が痛い、辺りは真っ暗で時おり動物のうなり声みたいのが通りすぎていく。馴れない揺れと寒さで体がぷるぷる震える。


不安をごまかすため、もう何度目になるかわからない動きをまた繰り返す。

私の胸元で揺れる、キレイな貝殻みたいな何枚もの丸い板。それを手に取り、じっと眺めるのだ。

これはガルムが届けてくれた食べ物にくっついていた…貝殻だとばかり思っていたけど、なんと竜の鱗だった。かなり反則的な力を持つ代物らしく、肌身離さず持っているようにと薦められた。

ガルムが言うには、これは竜の中でも守りに優れた白竜の物。これを身に着けていれば、ある程度の攻撃は勝手に防いでくれるそう。

得意気に私にその話をしていたら、傍にいた騎士さん達も欲しそうに見ていた。それに気がつくと笑って、なんとも気前よく全員に同じものを配ってくれて、必ず全員また生きて会うようにって約束させられた。ほんとめちゃくちゃなヤツだ。

揺れる馬車の上でキラキラと松明の明かりを反射する鱗を見つめ、祈る。

…お願い、皇太后様を。私達を、守って。




ある夜、部屋で休んでいたらメイドさん達に起こされた。

そんなこと今までなかったから驚いて飛び起きた、皇太后様の部屋に連れられて行ったら、騎士さんもメイドさん達もガルムも、屋敷中にいる人が全て集結してて。みんな深刻な顔で何を話してるのかと思ったら、とんでもないことになっていた。


ずっと私の処遇について揉めていたお偉い方々が、なんと皇太后が謀叛を企んでいるとかいう結論に落ち着いたらしい。どうしてそうなるの。

私を利用して国家を転覆させようとしているとかなんとか、根も葉もないお話を作り上げて。ありえないことに証拠も用意されているらしく、明日の朝一番に捕縛する算段になっているとのこと。

それを知らせに来てくれたのは…なんていう人か忘れたけど、普段は王様の側近を勤めてるっていう初老の騎士さん。彼は何度も皇太后様のことを助けてる立派な人だそうで、私がこっそり鑑定した時は「皇太后の忠実なるナイト」ってかっこいい称号がついていた。

鑑定で偽の情報を表示させることはできないらしいから、彼が嘘をつくことはありえない。


…事実無根なんだけど疑いを晴らすことはどうあがいても不可能、彼女を擁護する少数の貴族は皆すでに投獄されてしまっている。皇太后様が捕まったら確実に死刑になることがすでに決定しているそうだ。

そんなこと、私が許さない。

周りを見回すと、皆寝巻きのままだけど目には強い力が宿っているのがわかった。彼女を守りたい、それはここにいる全員の総意だろう。

「ふぁ…」

…若干一名、ちょっとやる気が足りない奴もいたけど。

まだ半分寝てるみたいなガルムの背後にすたたたと回り込み、全力で膝カックンしておいた。でもちょっとよろけただけで転ばない、むぅ。


ナイトさん(仮名)によると、ここへ知らせに来る途中ですでにいくつか隠蔽工作を仕込んで来たらしい。何人かの替え玉も、皇太后様の服を持ち出して街のあちこちで準備中。

皇太后様は「味方がいない」といつも嘆いていたけど、彼女を慕う人はかなり大勢いるみたいね。

王様はかなり本気で皇太后様を捕らえるつもりらしく、動員される兵士の数と練度がものすごい、と聞かされた。騎士団もいくつか動くようで…。

曲がりなりにも自分の母親に対して、なんでそこまで…そう思ったが、言えなかった。悲しい気持ちは一旦忘れて、今は彼女をどうにか無事に逃がす方法を考えないと。


時間が迫るなか全員で情報を出しあい、脱出計画を練る。

替え玉の人達と城下町の人達が、いくつかの固まりになって目立つよう表の通りを移動して。さらに目立たない裏の道を騎士さん達とメイドさん達が三手に別れて陽動すると言うけど、すぐ気づかれ追われる事を考えたら…向こうは人海戦術、さらに馬車も軍用のものすごい速度が出るのを出してくるみたい。

対して、こっちの馬車は…皇太后様専用の物とはいえ、速度は普通のと対して変わらないらしい。馬の種類がそもそも違うんだそうな。

多分、すぐ追い付かれて戦うことになる。

私は、そこである作戦を提示した。

皆すごく驚いて口々に反対してたけど、これが多分一番成功率が高いと思う。だから、勇気を振り絞って必死に皆を説得したわ。



それが、つい数時間前のこと。

私の立つ馬車の遥か前方には、皇太后様と騎士が数人だけ乗った馬車がある。そしてこことは別の道をさらにもう三台の馬車が走ってる。


それぞれの馬車には皇太后様の服を着て変装した者が一人ずつ、さらにガルムがこっそり「いやがらせ程度の足止め」を仕込んだよう。詳しい内容を教えてくれないのが不安だけど、奴も王様達に対して相当怒っているのが解るし、なんとかなるはず、多分。

私が考えた作戦、それは騎士さん達だけでなく私も戦いに参加するというもの。

大丈夫、ここ数日ガルム相手に特訓してきたじゃない!練習通りに動けば、足止めくらいは出来るはずよ。少しでも、皇太后様が逃げる時間を稼ぐんだ。

それに私は(放置されてたけど)一応召喚者だし、おおっぴらに逃げ出せば追うのに人手をさかない訳には行かないはず。

なんとかっていう偉い教会に内緒で召喚したから、存在が明るみに出ること自体避けたいはず。うん、万が一捕まっても私なら殺されることはないだろう。


「………」

「………」

ガタガタ揺れる馬車の上、松明の灯りがぼんやり照らすのは、御者を務める騎士さんと私の二人だけ。無理を言って他の馬車のほうに戦力を集めてもらったのだ、離宮での私の特訓を見ていた彼らはしぶしぶ応じてくれた。

空が少しだけ白々としてきた、夜明けまでもうすぐなんだろうか。もう、街を出てけっこう走っている。座るとお尻が痛いから立ったり座ったりしてて、何もしてないのにへとへとだ。

いつ追手が追いつくかわからないし、緊張が続いていたが…お互いにずーっと無言で。それどころじゃないって思いもあるけど、なんか気まずくなってきた。

何か話したほうがいいのかな?でも、この暗い中馬車を走らせるのは集中力がいるだろうし、邪魔になるのも悪いよね。


密かに悩んでいると、馬車の速度が徐々に落ちてきた。ああ、そろそろ分かれ道につくのかな?たしか、分かれ道で違う道に入るのよね。うん。

騎士さんが街道の真ん中に馬車を停めて、二頭の馬に水筒の水を飲ませる。

「…ヤマダ様、あちらです」

私は、こっちの世界では「ヤマダ」と呼ばれている。皇太后様だけは名前で呼んでくれるんだけどね。

騎士さんがそっと手で示した方向、森の奥の暗がりに目を凝らす。そこで、なにかが光った。

「わ…!」

青い硬質の鱗が、松明の明かりを受けて艶やかに輝いた。木々の間から覗く見上げる程に大きな体がゆっくりと動きだし、こちらへ向かってきた。かなりそろりそろりと歩いてるみたいだけど、やっぱり一歩踏み出すたびに地面が揺れる。すごい重量だ。

木を何本かへし折りながら目の前までやってきた巨大な生き物を、唖然と見上げる。

…これが、竜。

「グルルゥ?」

無言で見つめられていた竜が、小さく鳴いた。鼻息かもしれない、少し戸惑うような雰囲気が伝わる。

視線を上げて目を見ると、なんか困った顔をしてるような。

「あ、ご、ごめんなさい、ちょっと驚いちゃって。その、あなたがソラ…さん?」

「フンッ」

あ、頷いてる。言葉がわかるのかしら?

「ガ、ガルムから話は…聞いてるのかな?あの、巻き込んで申し訳ないんだけど、私たちを助けてくれる…ますか?」

言葉を選びながら話しかけるも、目の前の竜はまた困った顔をすると、くいっと顔を傾げた。

「ヤマダ様、竜と会話ができるのはあいつだけですよ。大丈夫です、この竜は彼の弟分と聞きますし、奴よりよっぽど頭がいいですから」

「え?そうなの?」

騎士さんがこっそりと教えてくれた。そ、そうか、お話できないのが普通よね。


馬車の後ろで体を丸めて寝るポーズになった竜のソラさんをチラ見しながら、少しだけ馬を休ませる。大人しいって分かってはいるんだけど…なんせ大きい、うかつに傍に寄ったら踏まれそうだ。

騎士さんが言うには、ソラさんは年中こっそりと離宮に遊びに来てたらしく、馬も騎士さんも怯える様子はない。恐々してるのは私だけだ。そういや、離宮の真ん中に異様に広い中庭があったっけ。


あ、そうだ。この休憩の間に騎士さんとお話しておこう。

こっちの服に着替えてからも持ち歩いている携帯電話を取り出すと、ストラップをはずした。

「あの、もしも…もしも私が間に合わなかったら、代わりにこれを皇太后様に渡して下さい」

「…!?」

おずおずとストラップを差し出すと、騎士さんは目に見えて動揺していた。

変なことを頼んで申し訳ないけど、大切なことなんだ。このストラップが私の宝物だってことは皆に話してあるから。

皇太后様は優しいから、私を置いていくとなったら反対するかもしれない。でも、こうしておけば納得してくれる。形見っていう言い方は嫌だけど、覚悟は出来てたってことが伝わるはずだ。

騎士さんは私とストラップを何度も見比べた後、何故か微笑んだ。するとマントの下をごそごそしてキレイな短剣を取り出し、ストラップを私の手から持ち上げ、代わりにそれを載せた。

「では、私はこれを。必ず…皇太后様に届けて下さい」

あっけに取られて、手の平に載せられた短剣を見る。私の手にあると大きく見える、柄も鞘も金色で、キラキラした石が飾ってありすごく高価そうだ。

「あはっ…それじゃ二人とも、絶対に生き残るしかないですね」

「ええ、お願いいたします…ふふっ」

騎士さんの笑顔につられて、私も笑ってしまった。それを見てまた騎士さんが笑う。


二人して照れ笑いしながら、各々の託した物を紹介しあった。

この短剣は、思った通りものすごく価値の高いものらしい。知らなかったけど、騎士さんて皆貴族の出身の人ばっかりなのね。…傷とか汚れとかつけないように、気を付けないと。

「このストラップはですね、私のいた国で流行ってる尻」

はっ!?

やばい、途中まで話して気がついたけど…今のこのちょっといい雰囲気の中で、これ…このストラップのキャラクター名を出すのは駄目だと私の中の「女の子」な部分が警鐘を鳴らしてる…!?そうだ、この名前は絶対まずい、ど、どうしよう!?

「?彩りが美しい、不思議な形ですね。この護符を作った方の紋でしょうか」

「そ、そう!これは、しり、しー…シリル!シリル・ヤマダって人が作ったんですよっ」

口から出まかせでなんとか無理やり誤魔化した。だ、大丈夫かな?

「ヤマダ…貴方と同じ家名なのですね。なるほど、それで思い入れがあるとおっしゃっていたのですか」

感心したように頷き、ストラップを手に持ち揺らす騎士さん。

なんか騙したみたいでごめんなさい、それ「尻ふうせんヤマダ」っていう、日本の人気アニメのキャラクターなんです…おそらく、人間をディフォルメしたものだって気づいてないらしい彼。呪術的な何かの形だと思ってくれて、しきりに良い物だと褒めてくれた。

うん、もし万が一この後私に何かあったとしても、美しい思い出として残るでしょう。



ソラさんに後を任せて再び馬車を走らせ始めると、東の空がうっすら明るくなってきた。

いよいよ夜明けだ、多分もう追手が出ているはず。計算高いナイトさんのおかげで出発を気取られることなく先手を打てたのがありがたい、もしかしたら国境辺りに待ち伏せがあるかもしれないけど、それはここを無事抜けてから考えればいい。

「…ヤマダ様!」

「き、来たのね!?」

全速力で馬車を走らせながら、それでも私より先に追手の馬車に気が付く騎士さんはすごいと思う。私まっすぐ後ろを見張ってるんだけど、なんにも見えないし聞こえないわ。

しかし、数秒もすると背後の街道から微かな地響きと、舞い上がる土煙が見えてきた。うわぁ、聞いてはいたけどすごいスピード!いや、もしかしたらこっちの想定より早い段階で気づかれたのかもしれない。このままだとどのぐらいで追いつかれるんだろうか。

でもソラさんのとこで何台か足止めできたみたいで、私達を追ってきた馬車は2台だけ。ナイトさんが言うには、多分本命の馬車がどれかっていうのは分からないだろうから…


「…!?」

あっという間に目視できるようになった背後の馬車を一瞬振り向いた騎士さんが見て、息を飲む気配がした。あれ、何かまずいことになってる、ような。

嫌な予感がするので、私も慌てて目を凝らして追手の馬車を確認した。な、なんか甲冑姿のおっきい人がぎっしり…馬に直接乗ってる人もいっぱいいる、先陣はそっちみたいね。街道の石畳が大きな馬の蹄で叩き割られているらしく、舞い上がる土煙に瓦礫が混ざってるわ。

そんな勇ましい人達の中に、一人だけ小柄できゃしゃな少年がいた。纏う甲冑もあんまりごつくない、軽そうな物。

うわぁ、当たり引いちゃった。よりによってあいつが…

「待てー!!国家に仇なす反逆者めー!」

勇ましい声が、もう聞こえるほどに追いつかれてきている。私達の馬車を追ってきたのは、勇者…木下なんとか君だった。

ヤマダさんは頑張るのです。次回(笑)

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