第23話 本気の証明
巨大離島リゾートに合宿に来た星明達、そこで出会ったお嬢様学校「桜ノ宮高校」の生徒「白咲 日和」と出会う。
だが、リゾート地には須磨伊里高校の暴走族レディースが自警団で来ており、さらに、白咲は露苦出無子高校の筆頭「金剛 力」の彼女だった。
合宿を無事に終えるには、星明と白咲が鍵となるだろう。
ホテルに連れてこられた星明は、露苦出無子高校トップの金剛とゲームをし、友達になった。
星明の悩みを聞いてくれる金剛だったが、狙われている白咲の護衛を頼むと、金剛は即答で否定した。
「悪いな星明、それは出来ねえ。」
「え……どうしてダメなんだ?金剛さんも、日和は大切なんだろう?」
「ちっ、分かってねえな星明。金剛さんは女に手を出す出さないのそんなレベルの低い話をしてんじゃねえよ。
お前が本気じゃねえから断ってんだよ。」
「何言ってんだ、俺は本気だ!!本気で日和を守りたいと思ったから今ここにいる!!それは、金剛さんも同じなはず!!利害は一致しているはずだ!!」
「星明、1つ勘違いしているようだから言っておく。お前と俺じゃあ日和に対する思いは完全に別なんだよ。
お前は日和の彼氏だから守っている事になってるが、俺は暴走族の総長として日和を守ってたんだ。」
「いやだから、そのまま協力すれば、日和はより安全になる!!」
「お前それ本気で言ってんのか?それが日和のためになると本気で思ってんのかよ。」
「だから本気だ!!俺じゃあ力不足だから、金剛さんを頼っているんだ!!」
必死に説得しようとする星明、だが金剛は話す度、協力しようとする意思はどんどん見えなくなり、さっきまでの好意的だった態度が、一気に嫌悪する表情へ変わっていった。
「星明、本気なんだとしたら、なんで日和の彼氏なんかやってるんだよ。そんなに対して好きじゃねえだろ。」
その言葉を聞いた白咲は立ち上がった。
「金剛さん!!それはさすがに言い過ぎです!!星明君は星明君なりに頑張って……」
「黙ってろ日和、星明の日和に対する思いは何となく分かる。」
「何だと金剛、言ってみろよ。」
星明はまるで見抜かれていると感じ、拳を握りしめる。
「お前はあれだろ、このリゾートで浮かれてナンパでもしようかと考えてたんだろ??その時に偶然、絡まれている日和を助けて関係性を築いた。
実際、日和はお前に好意を持ったかもしれないが、お前はそれで女を捕まえれた気になって日和への思いはそこまで大きくねえんだよ。」
「だから!!俺はずっと……」
「ずっと……??自分に嘘をついてるのか?彼氏がいると聞いた時から、お前の中で芽生えかけた好意は無くなっただろ。」
「ダメ!!星明君!!」
「……知ったような口を!!」
星明は金剛に飛びかかろうとするが、金剛は頭を掴んでテーブルに叩きつけた。
「野郎、何しやがんだ……」
「図星かよ全く、ここまで分かりやすい男だとは思わなかった。」
「ふざけんな……言いたいことあるならはっきり言いやがれ!!」
「星明、お前そうやって、今まで自分に嘘ついてきたんじゃねえのか?」
「……は?」
――突如として星明の脳内を過去の記憶が過ぎる。――
「なんで……なんで私のことを助けてくれなかったの!!あんなにお願いしたのに、約束したのに!!」
「待て待ってくれ!!俺はただ、■■の事を!!」
星明の伸ばした手は彼女には届かなかった。その後の出来事は、星明の記憶の奥に籠る。――
――過去の記憶が脳裏に過ぎった星明の前には、絶望しか無かった。――
「昔の事でも思い出したのかよ。その笑えない表情見ればわかるぜ。」
「金剛……取り消せよ、さっきの言葉。」
「取り消さないし、お前の心を暴いてやるよ。」
「黙れ……黙れ黙れ!!それ以上喋るな!!」
星明の拳が、金剛の顔に当たる。
「人の過去を暴いて楽しいかよああ!?それが友達のする事じゃねえだろ!!」
「それもそうだな、お前の言ってることは一理あるが、1つずれている。」
金剛は星明の顎を狙って殴り返した。まともに食らった星明は立てず、膝をつく。
「ダチだから教えてやれることもあるんだよ。日和はてめえの事を本当に好きでお願いしたんだよ。じゃなきゃ彼氏やってくれなんて普通言わねえだろうが。」
「だから……それはお前の部下が暴走するからだろうが。」
「本気だったら、相手が誰であれ逃げようとするんじゃねえよ!!引導が相手だろうと、鬼道院が相手だろうと、最後まで自分の役目を果たす、それが本気って意味なんじゃねえのか!?
相手を発見して逃げて、友達が総長だからこの人に匿って貰えれば安心だ、戦う事はない。
お前の考えてることは格上の相手から逃げてるだけじゃねえか!!」
「違う!!俺は……」
「どうしても納得出来ないんならいいぜ、俺が言っていることを証明してやる。」
「え……」
ビタァン!!
金剛は日和に平手打ちした。
「痛っ!!」
倒れる日和、彼女は今まで手を出してこなかった金剛から、初めて暴行を受け、涙が滲み出ていた。
その涙を、星明は見逃さなかった。
「……クソ野郎!!許さない、お前だけは絶対に許さない!!」
星明は金剛を押し倒し、顔面を殴り続ける。だが、金剛の体格に合わない力で、星明を仰け反らせ、顔面に蹴りを入れて立ち上がった。
「だから1歩遅いってんだ!!本気ならその場で叫ばずに止めることが出来たはずだ!!後から本気の力で来やがって……それを逃げというのがまだ分かんねえのか!!」
「もうやめてください金剛さん……星明君の心はもう既に……」
「逃げだからなんだって言うんだ……安全策を取ることがそんなに悪いことなのかよ……日常的に喧嘩しあってるお前とじゃあ分かんねえか。
日和の事を思ってるやつが本人に暴力振るうのかよ!!それが元カノにやることかよ!!自分で守って自分で傷つけて、結局お前は女に手をかけた最ッ低のクズだ!!
お前なんか他の不良と対して変わんねえよ!!」
無様にも喚き続けることしか出来なかった星明、それはあまりにも見苦しい光景で、白咲も星明に対する信頼は消えかけていた。
それは軽蔑したからではない、これ以上星明を傷つけないための、彼女なりの優しさだった。
「もういい、こいつ連れて行け。肝が据わった男かと思ったが、期待外れだ。」
「待てよ……日和をどうする気だってんだ。」
「お前には見合わねえよ、俺といた方が安全だ。」
「お前が決めるな!!手を出すようなやつが安全なわけないだろ!!」
「もうやめて星明君!!私なら大丈夫ですから。」
「見苦しいぞ星明、これ以上女に庇って貰うつもりか??金剛さんの行動に理解出来ないようじゃ、相手が雑魚でも彼女を守れねえよ。」
―― 星明は、ホテルの外に出されてしまった。
1日だけだった白咲との思い出が蘇ってくる。それは短い様でとても長い。
だが、失恋した、寝とられたと感じるほどでもなかった。
それが、金剛が言っていた本気では無いという事だと、今になって理解した、その瞬間に、彼女の事をどうでもいいと思ってしまったことが、証明となってしまった。
「俺は……俺は……」
立ちすくむ星明に、柄の悪い男が声をかけてきた。
「なあ兄ちゃん、この辺に金髪の背の小さい男性見いへんかったか?」
「金髪の小さい……誰ですかあなたは。」
「露苦出無子高校のもんや、兄ちゃんも年は近そうやな。それで見いへんかったか?」
「見てないですよ……それでは。」
「おーそうや、それと白い髪の青い目をした女の子も見いへんかったか?この辺で目撃したって聞いたんやけど。」
白咲の事を探していると気づいた時、星明は振り向かずにはいられなかった。
「何が目的ですか。」
「知ってるよーやな、ちょっとヅラ貸せや。悪いことはせーへん、お前にとってええ話を用意したんや。」
「明らか裏があるのバレバレなのに信用するとでも??」
「見た感じ、お前誰かに裏切られたんやろ。かわいそーになあ、メンタルもだいぶ傷つけられたように見えるで??話ぐらいせえへんか?」
星明は、その男に引きずり込まれるかのように賛同した。これがより、自分の首を締めることになるのを星明は知らなかった。




