第19話 金剛 力
巨大離島リゾートに合宿に来た星明達、そこで出会ったお嬢様学校「桜ノ宮高校」の生徒「白咲 日和」と出会う。
だが、リゾート地には須磨伊里高校の暴走族レディースが自警団で来ており、さらに、白咲は露苦出無子高校の筆頭「金剛 力」の彼女だった。
合宿を無事に終えるには、星明と白咲が鍵となるだろう。
合宿1日目の夜、山岳エリアにて星明はレディース率いる美咲と再会する。
「乗れ星明、聞きたいことは山ほどあるんだろ?」
星明は美咲のバイクに乗り、ヘルメットを被った。
「しっかり捕まれよ、飛ばすからなぁ!!」
「うおっ!?」
美咲の体をしっかりと掴む星明、バイクのスピードはフルスロットルで山岳エリアを駆け下りていく。
「っ!!美咲さん!!このままでは速すぎて会話出来そうにないです!!」
「馬鹿野郎!!誰がこんな状況下で喋ろうってんだ!!落ち着いたところで話した方が会話が入りやすいだろうが!!」
「それでもとば、飛ばしすぎうおおお!?」
星明はもはや、美咲にしがみつくのに精一杯だった。――
――ホテルエリア――
僅か数分で山頂から麓に降りた星明と美咲、目の前には、宿泊施設が並ぶホテルが沢山並んでいた。
「し、死ぬかと思った……」
「たくっ、根性ねえな。あれぐらいの坂、男ならかっ飛ばせるだろう。」
「み、皆さんは遅れているようですが……」
「うるせ、いちいち待ってられるほど暇じゃねえんだ。とっとと行け!!私らの部屋でじっくり話してやんよ。」
美咲さん……ホテル取っていたんだ……でもどうやって??お金はどこから……って、あまり考えるのはよそう。
だが、美咲の部屋となると恐らく……
――美咲の部屋――
星明の予想は、当たっていた。
「お!星明じゃねぇかよ!!何やってんだよこんな時間に。」
「……許斐さん、それは俺が1番知りたいです。」
許斐 音娘、レディースの副総長を務めており、美咲さんの相棒だ。
何故か俺の事を好きらしい。
「いいから座れ!!立ち話は嫌いなんだよ。」
「美咲さん……どこから話せばいいのやら。」
「じゃこっちから聞いてやるよ、さっき話していた白咲って女、あいつは敵だ。」
「……敵?何の事ですか……」
「知らないで話してたのか?白咲は露苦出無子高校の筆頭、金剛の彼女だ。」
「金……剛?」
「あー星明はまだ知らねえか、金剛力、露苦出無子高校の番張ってる奴だよ。露苦出無子高校は3つの勢力で暴走族が構成されてんだ。
金剛はその3つの勢力の頂点に立つ存在なんだよ。で、お前が会った白咲って女は金剛の彼女ってわけだ。
だから星明から情報を聞きたいってわけ。」
許斐さんは詳しく説明してくれた。
「そういう事だ、彼女から何か聞き出せたか?」
尋問する美咲、だが星明は答えなかった。
「ちょっと待ってください!!色々情報が入りすぎて……白咲さんは、そんな悪い人じゃなかったですよ!!」
許斐は星明を蹴り飛ばした。
「おい星明!!質問にはちゃんと答えろ!!大事な事なんだよ!!」
「もう一度聞くぞ、彼女から何か気になる事を聞いたか?」
「し、知らない!!俺は何も知らない!!喧嘩をやってるんじゃないんだよ!!白咲さんも、そんなことは望んでいない!!」
「答えねえか……」
許斐は星明を離した。
「ちっ!!白咲のやろーは星明を完全に陥れたようだぜ。」
「陥れたって……白咲さんがそんなに悪い人なんですか!!俺からすれば、あなた達が喧嘩を売ろうとしてるように見えますよ!!」
美咲は立ち上がり、星明の胸ぐらを掴む。
「おい星明、今回は合宿中だから今の発言は大いに見逃してやるよ。
私らは好きで暴走族やってるんじゃねえんだ。須磨伊里高校、隣の桜ノ宮高校も含めた、姫達を守るために動いてんだよ。
いざって時に、お前は姫達を守ることができるのか?あ?
んな事も理解出来ないなら大人しく吐けや。」
美咲は星明を離す。
「ゲホッゲホッ!!……金剛については、何も知らない。白咲さんが酷い目に合わされていないって所ぐらいだ!!」
「ま、大方そんなところだろうな。」
「何だと……俺を苦しめるなんて真似、しなくても良かったんじゃないのか!?」
「落ち着け、美咲さんは金剛とは知り合っているんだよ。
知り合いというか、元彼だな。」
「……は?ますます意味が分からないですが……」
「金剛は、暴走族の中でも最強と慕われてきた。あいつが出た抗争で無事なグループはひとつも残っていない。
当時の、露苦出無子グループは荒れていた。今より無法地帯になっていた、そこに金剛が現れ、3つの勢力に別れて均衡を保っている。」
「金剛と美咲さんはいつ、知り合ったのですか?」
「レディース結成前につるんでたんだよ。最強の女と言われていた私と、最強の男と言われた金剛のタイマンを繰り広げていた。
結果は引き分けだっただけどな。それから、別れて私らはレディースを結成した。」
「そんで最近だ、金剛が露苦出無子の奴らをぶっ飛ばしたって情報を掴んだ。
どうやら1人の女子を襲おうとして制裁を受けたみたいだけどな、その女子が白咲 日和だ。」
「……金剛 力、一体何を考えているんだ……」
「引き続き彼らの動向を見張ってくる。許斐は星明を返してやれ。」
「美咲さん!!」
「何だ。」
「白咲さんの件は……俺に、任せて貰えませんか!?」
「好きにしろ。」
美咲はレディースと共に、リゾート地を巡回した。許斐は星明を宿に戻したあと、美咲の所へ向かっていった。――
――一方、白咲がいる所では――
金剛のいる部屋に白咲は向かっていった。部屋のドアを開けて入る。
部屋には何人かの不良がゲームをしていた。
「ああん?何だこのアマ、部屋間違えたんだじゃねえのか??」
「間違いでもいい、男ばっかで退屈してたんだ、ちょっと俺らと遊んでけや。」
「あれ?金剛はいないのですか?」
「どけお前ら!!手を出すな!!その子は金剛さんの嫁さんだ。」
「鬼道院さん!!え!?この人がマジっすか!?」
「あら鬼道院さん、お久しぶりですね。」
鬼道院 豪、3つのグループのうちの鬼道院グループのリーダーである。
実質、金剛に次ぐ実力者である。
「金剛さんは今、飲み物を買いに行ってるところだ。」
「こ、こいつが……金剛さんの彼女……」
「すっげーべっぴんさんだ……」
手下達が見とれている間に、金剛は戻ってきた。
「おーいお前ら!!やっと全部持ってこれたぜ、揃いも揃ってフルボッコにしやがって……!!今度は絶対に俺が勝つ!!」
金剛は少し小柄であり、強面では無く、ベビーフェイスのような顔つきをしている。
「こ、金剛さん!!今はそれより、客人が……!!」
「何だ?客人??」
「金剛さん、ご無沙汰ですね。」
「……誰だ??」
「なっ!!何度も言わせないでくださいよ金剛さん!!この方はご自身で助けた白咲さんですよ!!」
「あー思い出した!!久しぶりだな!!綺麗すぎて忘れてたぜ。」
「お前らズラかれ!!金剛さんと白咲さんの再会だ!!」
「はっはい!!」――
――手下達は颯爽に部屋を出て、金剛、白咲、鬼道院の3人が残った。
「鬼道院さんはいいので?」
「ああ大丈夫だよ。彼がいろうといなかろうと、別にラブラブな話をしに来たわけじゃないことは知っている。」
「そうですか、部下達はみんな、血の気が多いですね。」
「引導と晒野グループが勢力を上げてきているんだ。あの2人のグループは喧嘩しか脳が無いからね。」
「そんでもって、俺らと金剛さんでこの島で集会開いてたってわけだ。どうも奴ら下剋上を狙ってやがるからな。」
「日和、しばらくこの島に避難していろ、桜ノ宮も標的にされている、特に晒野グループはおっかねぇぞ。」
「大丈夫だと思いますよ、桜ノ宮高校の隣、須磨伊里高校が守ってくださっているので。」
「レディースか……確か引導グループがそいつらにフルボッコにされたんだっけ?」
「そのレディースは桜ノ宮高校の護衛役も果たしておりますので、身の危険は無いでしょう。」
「油断するな白咲、いくら金剛さんが率いているからとはいえ、言うことを聞かない野郎だっている。さっきもそうだった。」
「そのケジメのために、私の身を案じて彼氏を演じているのですよね。」
「あのカス共を自らの手でやらなきゃ行けなかったのは俺の落ち度だ。日和には申し訳ないと思っている。」
「相変わらず、暴走族とは思えない程に優しいですね。そのうち、美咲にも引けを取りますよ?」
「おい白咲!!口を慎め!!金剛さんの前でその名は!!」
「大丈夫だ鬼道院!!暴走族と言うのは女を相手にした時点で負けなんだよ。
そんなしょうもないことにこだわってるせいで、女相手に負けた総長の下にはつきたくねえと、あの2人は血気盛んなんだろうが。」
「ですが、レディースは本気でそちらを潰そうと動いていますよ??」
「大丈夫だ、向こうはそう突っ込んでくるほどバカじゃない。慎重になっているはずだ。」
「そもそも俺らは喧嘩しに来たんじゃない。向こうから売ってこない限り手を出すつもりはない。」
「それなら安心しました。須磨伊里と桜ノ宮は合宿中……レディースが護衛する中、生徒はバカンスを楽しんでいます。」
「ちっ、俺らが邪魔だって言いてえらしい、金剛さん、もう帰りますか?」
「いや待て、日和……もう1つ要件はありそうだな。」
「察しが良くて助かります、須磨伊里高校に
安井 星明という男子がいます。彼には手を出さないでもらえませんか? 」
「星明??誰だそいつは。」
「彼は私がビーチで絡まれている所を助けてくれました。喧嘩は、強くは無さそうですが、私は少し、彼に注目しようかと思いまして。」
「なんだと白咲!!金剛さんを捨てるというのか!!」
「落ち着け鬼道院、日和……お前の気持ちを縛る気は無い、恋愛でも何でも好きにしたらいいよ。」
「あっさりと聞き入れるんですね。素直すぎて正直裏がありそうで怖いです。」
「俺のケジメが今ようやく終わったからだ。日和の事を守ってやれる人が現れたから、もう俺が守る必要は無くなった。」
「寂しいなら寂しいで言えばいいんですよ?あなたの彼女のままでも。」
「そんな気はねえだろ。早くここから消え去りな、これ以上日和の自由を縛りたくないんだ。」
「では、お言葉に甘えて。ありがとうございました、あなたとの時間は楽しかったですよ。」
「うるせぇ、会う機会は少ないだろうが。」
「それもそうですね、要件、ちゃんと守ってくださいね?」
「いいから行け!!」
白咲は、部屋を出ていった。
「良かったんですか、別れてしまって。」
「別にいいさ、付き合ってないようなもんだし、だが、その星明という男がクソ野郎者なら、容赦なく殺す。
鬼道院、星明という男を調べろ。そして全員に伝えろ、今後も白咲に手を出せば殺すってな。」
「分かりました、特に引導と晒野にはきつく言っておきます。」
「さあて、レディースも星明も、1度は俺が出てきてやった方がいいかもな。
……って!!んなくだらねえこと考える場合じゃねえ!!リベンジだ鬼道院!!今度こそボッコボコにしてやる!!」――
――金剛に別れを告げた白咲に、未練はなかった。元々、金剛の罪滅ぼしによる関係性だったからだ。
星明はまだこの事実に気づいていない。




