第16話 リゾート地での出会い
須磨伊里高校で中間試験を無事に乗り越えた生徒にはご褒美が用意される。
それは1週間のリゾート地での合宿だ。費用は全て学校側が負担し、生徒たちの負担は一切なく、まさに豪遊出来る、至福の時間である。
――ビーチサイドエリア――
このリゾート地は巨大な離島リゾートであり大きさは沖縄県の、宮古島に匹敵するほど広大である。
島を全周するには、車でも少なくとも半日を要する。
リゾートエリアは主に3つに区分されている。ビーチサイドエリア、山岳エリア、ホテルエリアがメインとなる。
ビーチサイドは、海や砂浜。山岳エリアは島中心の高台から全体を見渡せる。ホテルエリアは名高い宿泊施設が並んでおり、土産や温泉などを楽しむ。
そんなビーチサイドエリアで、当然のようにはしゃぐ男2人がいるのは当然のこと。
「いよっしゃぁぁぁ!!海だ!!女だ!!ビーチだ!!」
「言い方!!近藤、お前らが来れたのは全てあの吹雪会長のおかげなんだからな?」
「当然分かっている。だがな星明、会長は俺たちに合宿を満喫して欲しくて問題を帳消しにしたんだと思うぞ?」
そう、俺と近藤と黒音は中間試験において、暴力行為、器物損壊、悪質な偽造動画を起こした。それらの件は、吹雪会長の顔をたてた事により、揉み消しとなった。
「まぁとにかく、過ぎたことは言ってもしょうがねえ!!見ろ!!みんな大好き、浦原黒音の水着姿の登場だ!!」
黒音は元よりクラスの人気者である。故に誰も言えない秘密を黒音は知っている。……まあ今はその確証は無いが。
そして、更衣室から黒音が出てきた。
だが、出てきたのはラッシュガードを来た黒音だった。黒音どころか、女子は全員ラッシュガードを着用していた。
「な、ななな……何でだよ!?海でのイベントと言ったら、普通水着イベだろ!!」
「ごめんね勇気君、風紀の問題もあって吹雪会長から規則が改訂されたの。」
「まあ……共学化した以上男女間の問題を避ける為だろうな、下着泥棒の事件とかあったことだし。」
星明は何となく想定していたが、やはり水着を期待していたのか、少しショックだった。他の男子達は星明以上に、近藤と同じぐらいショックだった。
「ふっざけんな生徒会!!俺たちの……俺たちの憧れのイベントを……くっ!!」
「まぁまぁ、そんなことを言わずに、遊ぼうよ!!」
満面の笑みで近藤を元気づける黒音、おそらく裏は無いだろう。
「うおおおおお!!それでも俺は、黒音が好きだァァァ!!!」
近藤は勢いよく海に飛び込んだ。
「バカだなったく。」
「星明君は、これからどうするの?彼女探し?」
「そうだな、新たな出会いを……って!!前にも言ったが、何で俺が彼女作りのために入学したってことを知ってるんだ!!」
「勇気君からこっそり聞いちゃった♡あまり私の前で、ぼろを出すのは良くないよ?」
「あの時に気を使ってやったのが間違いだった……!!」
「そんなことは無いよ!これでも、星明君には感謝してるんだよ?償いとして、出会いが無かったら……私が付き合ってあげてもいいんだよ?」
黒音は星明の耳元で囁いた。
「なっ!何言ってるんだ!!そんなの滅多に口にする事じゃないぞ。第一、近藤の恋路は邪魔する気は無いし、俺はお前に少しトラウマ植え付けられてるんだぞ?絶対に嫌だ。」
星明は動揺しながらも、断る。
「残念、もうチャンスは無いよ?でも、星明君が落ち込んだ時は、私が慰めてあげるよ!!
……それであんたの心を完全に壊してやる。」
「黒音……俺をどうしようと勝手だが、近藤を傷つけようものなら絶対に許さないからな。」
「大丈夫だよ、勇気君には今は何もしないよ?利用する機会があるまで泳がせてあげる。」
黒音はそのまま近藤の所に向かった。
「やっぱり……間違いだったのかな。」
1人残った星明の元に、同じクラスの男子が声をかけてきた。
「なあ星明、お前まだ黒音を気にかけてるのか?」
「だから違うって言ってんだろ。」
こいつは「高橋 信」俺が黒音に土下座告白した時から、本人にとっては慰めようと気を使ってくれているのか話をし始めて知り合った。
自クラスでは信が初めての友達だ。信も彼女目当てでこの学校に入学したみたいで気は合う。
「どう思う星明、良さげの女子は見つかった!?」
「んなすぐに見つかるわけないだろう。だいたい、水着イベだって言うのにみんなラッシュガードだし……」
「まぁ……俺は正直こっちの方が好みだけどな!!それより、見つからなかったらもうこっちから行くしかないだろう。
やるだろ?ナンパ!!」
「そのつもりで行くが、無計画で特攻すれば犬死だ。いいか?こういうのはタイミングが大事なんだよ。」
「へっ!星明はまだまだ分かってないなあ。こういう時は勢い、ノリで全てが変わるんだよ!!俺は行くぜぇ!!」
信は突っ走って行った。
「……まあ、俺も探すとするかな。」
と、星明が動こうとした時、女子が見知らぬ男2人に絡まれていることを目撃する。
……ラッシュガード、うちの生徒か……困っているようだし、助けてやるとするか。
星明は助けに向かった。
「おい、俺の彼女に何をする、今すぐ離れろ。」
「あ、あなたは一体!?」
「何だこのガキ、俺たちはお前に用はねえんだ、さっさと失せな。」
「それとも、やるって言うのか?」
2人の男は少し体格がでかい、妙に筋肉質だし、勝てる見込みはあるのか……!?
「頼む……穏便に済ませないか?」
「けっ、冷めたぜ、ほか当たるか。」
「命拾いしたな兄ちゃん、せいぜい守ってやりな。」
あっさりと男2人は引き下がっていき、星明は少し拍子抜けだった。――
――「あ、ありがとうございます。彼氏のフリをして、助けてくれたんですよね?」
「ああ、突然悪かった、困ってそうだったし見過ごせなかったから。」
よく見ると白い長髪、青い色の目をしている。同期にいたか……?
「あんた……須磨伊里高校の生徒……だよな?」
「いいえ違います、私は桜ノ宮高校の生徒です。女子校で須磨伊里高校から、割と近いところにあります。」
他校の生徒だったとは、通りで見かけない姿だったわけだ。
「そうだったのか……俺は須磨伊里高校1年の安井星明、好きに呼んでくれて構わない。」
「桜ノ宮高校2年、白咲 日和と申します。」
「と、年上だったとは……すみませんでした!!」
「いいえ、タメ口で大丈夫です。その方が親しみやすいので。本当に、助けてくれてありがとうございます。」
間違いない、白咲さんはおそらく、お嬢様だ。喋り方や振る舞い方から見て気づいた。
優しい上にタメ口でも大丈夫という寛大さ、これは、新たな出会いと言うやつか。
「ラッシュガードだったから……須磨伊里高校の生徒と勘違いしてしまった。」
「桜ノ宮も、ビキニは禁止なので、無理は無いですね。でも、私はこっちの方が好みですから、ガッカリでしたか?」
「いやそんな……まぁ嘘では無いけど。」
白咲はスマホを取りだし、連絡先を渡してきた。
「これも何かの縁です。助けてくれたお礼もありますし、私の連絡先を差し上げます。困った時や暇な時などにいつでもかけてきてください。」
「え、いいんですか?そんな不用心に。」
「大丈夫です。私はあなたを悪い人ではないと信用してますから……それとも、女子の連絡先を手に入れるのは嫌でしたか?」
「い、いえ!!ありがたく……」
そういえば、高校に入って連絡先を交換したのは白咲さんが初めてだ。吹雪会長の時は向こうからかけてきたし、他の女子とはまだ繋がっていなかった。
「またどこかで会いましょう、それでは。」
白咲さんは一礼し、どこかへ行った。お嬢様系なのか、他校というギャップからなのか、星明は少し惚れていた。
「おい星明、さっきのマブイ彼女は何だ??」
信が戻ってきた。
「いやさっきのはナンパされてたのを助けてあげた、そしたら連絡先を貰った。」
「なっ!?てめぇ俺より先に抜けがけしやがったな!!ちくしょう!!絶対に追いついてやるからなあ!!」
「ちょっと待て!!って行ってしまったか。」
白咲は確かに美しい、俺の心がまだ揺らいでいる。
だが、少し彼女を正面から受け入れることは少し、難しい。何故か、彼女に裏がありそうな気がしてしょうがない。
これが運命の出会いとなるなら、それはまだ……俺には早い気がした。




