第12話 中間試験④ 友情
須磨伊里高校中間試験の内容
・試験内容は学校生活、授業態度、小テストの成績などの内申点の総合で評価される。
・評価「1」が1つでもあれば補習対象となる。
・評価「2」が2つ以下、残りが評価「3」以上で合格とする。
・合格者は1週間の自由行動、豪遊が認められる「合宿」に参加できる。
――合宿について――
須磨伊里高校が提携するリゾート地への1週間の宿泊である。
費用は全て学校側が負担し、生徒は自由に無料で豪遊出来る。
補習対象となった生徒には、合宿への参加は認められない。
つまり中間試験とは、合宿に参加する生徒を見極める試験である。
中間試験終了まで残り7日。
星明は大胆にも、黒音に土下座告白をし、振られた。
だがそれは本心からではなく、星明の作戦の内の一つだったからだ。
星明の告白は1年のクラス全体に響いており、当然、黒音の事が好きである近藤に伝わる。
黒音が1組に戻り、女子から告白の事を聞かれる。
「浦原さん告白されたの!?」
「すっごい声だったけどどんな感じだった!?」
黒音は困惑するも応えていた。
「いや別に何も、急に土下座で告白してきたからびっくりしちゃった!!」
黒音はまだ困惑している。
星明が好意を持って告白してないことはさすがに黒音は分かっている。
問題は告白そのものの行動を取った理由についてだ。
星明の行動が作戦なら愚策中の愚策、メリットは何一つない。
黒音は星明の告白行動について思考を巡らせるしか無かった。
当然、告白騒動に近藤も加わる。
「黒音、誰から告白されたんだ?星明からか?」
「うん、星明君から土下座して告白されちゃった。勇気君と同じだよ!」
近藤は、聞いた瞬間に星明のいる3組の教室に向かう。
「おい星明!!」
「近藤……。」
「一体どういうつもりだ星明!!俺に黒音への思いを大事にしろと言いながらも、抜けがけで告白だと!?
俺を舐めるのも大概にしろ!!」
近藤は星明の胸ぐらを掴み問う。
星明は近藤の手を抑える。
「近藤、今はよそう。試験に響く。」
「ふざけんな……!!そんな事はもうどうでもいいんだ。星明、お前は良い奴だと思っていたが、こんなクソ野郎だとは思わなかった!!」
「無理はない、けど近藤……俺は。」
「……ちょっとこい!!」
近藤は星明を引っ張って屋上に連れ出した。
――屋上――
立ち入り禁止ではないが、生徒が好んで使う場所でもないため、誰もいないことが多い。
「星明、てめぇ恋愛をなんだと思っているんだ。」
近藤は珍しく、激昂している。
「黒音に告白したことなら悪かった。けど俺は本当に黒音の事は好きではない。」
「違う!!そんな事はお前の口から聞きたくねえよ!!
お前が俺の恋愛相談している時は、お前のことを師匠みたいに思っていた!!
だが!!お前は告白そのものを侮辱した!!」
近藤は泣きながらにも星明に告白について説明する。
「いいか星明!!告白というのは嘘であれ本気であれその言葉は必ず相手に伝わる!!
好きではない状態で告白するというのは、相手を傷つける最低な行為だ!!
お前が黒音を好きかどうとかの問題ではない!!
恋愛においてやっては行けないことをしたから俺は怒っている!!」
近藤の熱弁に、星明は何も言い返せない。
当然の結果だ、必死に頑張っている近藤を前に、土下座告白という演技をしたからだ。
「俺が間違っていた。すまない近藤……」
「許されねえ……お前は恋愛の重みを分かっていない。だから彼女が出来ない!!」
「それは、言われたくねえよ……!!」
「だろうな、だが星明の過去の事はどうでもいい、今はお前をぶん殴る!!
タイマンはれや星明、1発入れてやらねえと気が済まねえ!!」
「どの道、いずれこうなるとは思っていたぜ近藤、手加減はなしだかんな!!」
ドカッ!!
2人は、正面から殴り合いを始めた。
「ぬぅぅぅ!!こんなもんかよ星明!!
お前は!!俺より!!強えだろうが!!」
ドゴォッ!!
「あれからやっぱり鍛えたんだな近藤!!こんな力なら、露苦出無子の奴らとやり合えるはずだ!!」
「いい気になってんじゃねえよ星明!!お前のそういう上から目線な所が大嫌いだ!!」
「言ってくれんじゃねえか!!俺もお前のバカな所が嫌いだ!!」
ドゴォッ!!ドサッ!!
2人は相打ちで倒れてしまった。――
――数分後――
伸びていた2人は、同じ空を見る。
「はぁはぁっ、クソ!!こんな怪我じゃあ俺ら2人合宿には行けねえな。」
「心配するな近藤、アテはある。」
「なんだそりゃ、てめぇこれも計算のうちで考えてたのかよ。」
「まあ、一部は賭けだけどな。」
星明と近藤は起き上がる。
「星明、お前がやった事は認めねぇが、お前の思惑には乗ってやる。」
「いいのか?黒音を裏切ることになるかもしれないぞ?」
「大丈夫だよ。黒音を裏切ったとしても、きっとあいつは切り捨てることはないだろう。」
「意味分かんねえ、近藤の黒音に対する愛はどこまで大きいんだよ。
それより、早く保健室に行こうか。」
こうして、2人は仲直りに成功した。
――保健室――
2人は保健室の担当、愛理先生に治療してもらった。
「全く、年頃の男子はすぐ喧嘩に発展するんだから、もっと話し合いなさいよ。」
「す、すみません。」
「まあそれも青春のうちのひとつよ。あんたたちのために、暴力行為の事は水に流してあげるわ。」
「ありがとうございます。愛理先生で良かったですよ。」
愛理は星明に少し、指導した。
「もう星明君、大人を舐めちゃダメよ?そんな理由で保健室を利用しに来たら、成績全部落とすわよ?」
「そんな事は出来ないはずです。先生が生徒に手を出しているという報告は生徒会でも来てますから。」
「……いい度胸ね、その調子で頼むわよ。」
「愛理先生って本当に寛容なんですね。」
「まあ、生徒を癒すのが保健室なんだから困ったらいつでも頼りなさい。」
「ありがとうございます。失礼します!!」
2人は怪我を治し、保健室を出た。
「で?黒音の事どうするんだよ。」
「……俺がやれる手は尽くした。後は天に任せるだけだよ。」
「どういう事だ?ますます意味が分からなくなったぞ。」
「そのまんまの意味だよ。最後に伝えるとするなら、近藤!!全てはお前次第だ。お前を信じてるぞ。」
星明は近藤の胸に手を当てて、去っていった。
「……俺にどうしろってんだよったく。」――
――中間試験終了まで残り6日――
星明は全てを尽くしたのか、告白から何もしてこない。
黒音はますます怪しいと睨んでおり、星明の動向を探る。
「本当に、あの告白は何だったの……??近藤君の傷を見るからに、星明君と喧嘩したのは間違いない。
まあでもそんな事はいい、最後の準備は整った。」
中間試験の星明と黒音の戦いは、遂に最終局面を迎える。




