Day 08. アミュレット
魔具作りを学んでいることもあってか、レンはたまに〈青枝〉の人たちから、発掘品だったり歴史的遺物だったりを見せてもらえることがある。今回リズと見せてもらったそれも、そうだった。二百年前に存在したウィトリスという国の王妃様が持っていたという、アミュレット。角の丸い略三角形の大きな赤い石と、その下に同じ色の小さな雫型の石をぶら下げたブローチだった。
「これ……天然ものですか?」
〈木の塔〉の一角。大きな図書室の奥にある資料室。薄暗く棚と机ばかり並ぶ倉庫のようなそこは、本来は特定の人間しか入ることができない。今回まだ魔術師見習いの立場のレンが入れたのは、リズの友人だという歴史専門の男性――ルーファスのお陰だった。
銀髪と翠の瞳の、女とも見間違いそうな美丈夫。それこそ、このアミュレットを身に着けていても違和感なさそうだ。つまらないローブなどではなく、身なりをきちんとしていたら、だが。
閑話休題。
レンが気になったのは、そのアミュレットに嵌った宝石である。若干黒味を帯びた赤の石は、おそらく柘榴石。だが、肝心なのは、それが天然石であるということだ。
一度神様が滅ぼし、創り直したこの世界では、熱により生み出される宝石は魔術師などによって作り出される人工物だった。しかし、昔はそうではなかったらしく、天然物があちこちに流通し使われていたとか。そんな天然物の宝石は、現在では旧世界の遺物から発掘されることでしか手に入れることはできないため、かなりの貴重品。
「らしいな。……よく分かったな」
「これでも魔具技師見習いなので」
魔具には宝石や輝石などの結晶を使う。だから技術よりも何よりも先に〝目利き〟を鍛えさせられた。幸いにして、レンはその手の才があったため、すぐに身に着けられたのだが。
ルーファスとリズの感心の言葉を受けたあと、リズがふと漏らした。
「あんたの目に似てるからさ、見せてって頼んだの」
レンの目は赤い。色素が薄い体質のため、血の色をしている。確かに、黒っぽさも混じったその色は自分の眼に似ているかもしれない。
「柘榴石は、昔騎士や兵士が自分の妻に贈ったものらしい。これを身に着けていた王妃様も、そんな風にして贈られたんだろうね」
そうなのか、と知らなかった事実に感心する一方で、くすぐったさを覚える。レンは目の色のことで、あまり良い思いをしたことがなかった。揶揄ばかりされていたと思う。
このシャナイゼに来る前の話だ。
そんなレンの内心を理解しているのか、いないのか。もう二年もお世話になっている歳上のお姉さんは、ほのかに笑う。
「綺麗だよね。これも、あんたの目もさ」




