Day 28. 宇宙旅行
「あの星って、太陽と同じなんだね」
幼馴染の兄さん姉さんたちが連れてきたという異国の少年レンは、とても賢く〝見どころのある〟少年なのだが、教育的環境には恵まれていなかったらしく、〝もの知らず〟な一面がある。今回の星の話についてもそれだ。あれを何だと思っていたのか、と問えば、
「宝石みたいなのが空に嵌っていると思ってた」
可愛らしいと思ったことが知られればまず彼は怒るだろう、と思ったので、リオルタールは黙っていたが、つまりまあ、こういうことである。
「そもそもあの空に果てがない? っていうのも驚いて」
レンは自分の知識不足を認識していて、それを恥ずかしいことだと思っているらしい。一方で、好奇心はとても旺盛で知識欲は貪欲と言えるほどなので、新しいことを知ったときはこうして赤い眼を輝かせる。それこそ〝空に嵌まった宝石〟のごとき輝きだ。
「『果てしない空』って言うのに?」
「誇張表現のようなものだと思ってた。ほら、『遥かなる我が故郷』みたいな感じで」
「文学的表現を引用できる辺り、君の知識ってホントどうなってるの?」
「……故郷で良く歌われる歌の中にあっただけだけど」
彼の故郷は海辺だそうだ。船乗りの歌かな、とリオルタールは推測する。
「この世界が球状で、宇宙ってところに水の中みたいに浮かんでるっていうのも想像できない。そもそも誰がそんなこと知ったの?」
「それは遥か昔——旧世界の人類による知識だよ」
神様が世界を壊す前、人類は戦争をしていたらしいが、一方でとてつもない技術力を有していたらしい。その技術力で空をも飛んだとか。魔術を用いてでさえ宙に浮かぶのは一苦労な今の世界では、なかなか考えられないことである。
「旧世界の人間は、その宇宙ってところに行ったってこと? この地球を飛び越えて、あの空を突き破って? どうやるの、そんなこと」
さすが、と言いたくなるほど次々に浮かび上がるレンの疑問に、リオルタールは答えられなかった。それは、リオルタール自身も知らない〝忘れ去られた知識〟だった。神様は、世界を壊したときに、いくつかの知識も葬ったらしい。また世界を壊すようなことにしないためだと言われている。それなら仕方ない。仕方ないが、もったいない。
「……いつか、僕は宇宙に行くのが夢なんだ」
それは、兄も幼馴染たちも、否定はせずとも無理だと苦笑する夢だ。リオルタール自身も、絶対に叶わないと解っている。それでも夢を見ずにはいられない。
自分ができなくても、いつかの未来に、誰かが行けるのであれば。
「いいね。浪漫がある」
彼が肯定してくれるのは、〝知らないから〟だろうか?
などと一瞬思ったりするが、そうでないのは、顔を見ればすぐに分かる。全てを理解したうえで、彼はリオルタールの夢を肯定してくれる。
「そしたら、レンくんも行く?」
「そうだなぁ……」
レンはしばし、口を曲げて視線を上にやった。
それから、にやり、と。
「珍しいものが見れるなら、それも悪くないかな」




