Day 27. 相性
「レティアって、一番神様らしい神様だよねぇ」
シャナイゼの街の真ん中に聳える大樹。魔術師が塔にしたそこは、木の幹の終わり、枝がその先に手を伸ばしていく辺りに、バルコニーがある。木の股に挟むように載せた大きな木の板。その上は憩いの場であって、ベンチはもちろん、テラス席よろしく丸テーブルもいくつか置いてあった
そんなバルコニーのテーブルで、ウィルドはリズとレンとお茶をする事がある。いずれも歴史や遺跡に関心を持っているので、話が弾みやすかった。
そんな仲良しの集まりのなかで、唐突に溢されたリズの言葉に、ウィルドは瞼を震わせた。
「ああ、分かります分かります。偉そうなんですけど、カリスマ性? みたいなのがあって、導いてくれそうな感じがありますよね」
「しかも自分勝手感を感じさせない」
「分かります分かります」
この世界には、四人の神がいる。新しい世界を創り上げた、創造神エリウス。混沌とした以前の世界を破壊した、破壊神アリシア。新しい世界で人々の希望となり導く、光神レティア。世界の歪みを断ち切り夜の安寧を齎す、闇神オルフェ。こうしてみると錚々たるたる顔ぶれだが、実際のところはエリウスはただ子どもの我儘で人々を弄ぶクソガキでしかないし、世界の破壊を後悔したアリシアは職務放棄。オルフェに至っては命令にただ従うだけのお人形、だった。――『だった』と言わせてもらう。当人の名誉を持って。
一方で、歴史の節目節目で現れて、きちんと人々を導き歴史を変えてきたレティアは、過去においても現在においても、普通の人が想像する神様像に一致するだろう。
ウィルドも認める。認めるが。
「そこの神様が怒ってますよ」
レンがニヤつきながらこちらを指差した。
「怒ってはいません」
面白がる少年にこめかみをひくつかせながらも、ウィルドは冷静にティーカップをソーサーに戻した。それから、組んだ両手をテーブルに置く。
「ですが、彼女はどうにも癇に障る」
強い意志を宿し、自信に満ち。不敵な笑みより垣間見える気丈さと豪胆さ、そして凛々しさ。まさに太陽光を人型にしたような女なのだが――
長い歴史の中で彼女と関わったときのことがいくつもいくつも脳内を過ぎり、ウィルドは組んだ両手を震わせた。現代風に言うならば、「ムカつく」だ。
テーブルが揺れ、カップとソーサーが互いを叩き合う。そんな様子を見て、リズとレンが呆れたように顔を見合わせた。
「神様にも相性ってあるんですねぇ」
だからこの世界は、うまくいっていない。




