Day 23. 怪盗
シャナイゼの治安となると、真っ先に話題に上がるのは、〈木の塔〉の戦士たちだ。だが、〈木の塔〉が対処するのは、もっぱら魔物。国が運営する街の治安維持のための警察組織を、当然ながらここシャナイゼも抱えている。対魔物と対人間で住み分けがされているため、両者は互いに不干渉で、関係性は無関心に近い良好状態だった。
のだが。
その警察が、珍しいことに、〈木の塔〉に協力要請をしてきたという。
「なんで?」
研究室に集まったリグとリズ、そしてウィルドまでも首を傾げる。
「最近、怪盗? とかいうやつが出てるんだってさ」
宝を持つ家や施設に手紙を送り付け、目当ての物とそれを奪う宣言をし、警察たちが警備する中に忍び込んで盗み出す気狂い窃盗犯が、最近シャナイゼにいるらしい。因みに、予告状の署名から同一犯と認識されているようだ。
「その泥棒、魔術を使ってることが最近分かったらしくて」
「あー」
だから、本来は魔術研究機関である〈木の塔〉を頼ってきたわけだ。背景を知ってみると、警察側の要請も納得できるものがある。怪盗については、わけがわからないが。
「その怪盗、なんていうの?」
署名があるということは、偽名だろうが通称だろうが、何かしら名乗っているはずだ、とリズは言う。
「ラパンだって」
珍しくウィルドが噴き出した。一同、彼に注目する。彼はまるで酢を飲んだような顔で、グラムに尋ねてきた。
「……ルパンではなく?」
「『松の木』名乗ってどうすんだよ。『ウサギ 』のほうが泥棒らしいだろ」
木、動かないし。
しかしウィルドは、納得したようでいまいち飲み込めていないような奇妙な表情で首を傾げていた。
「で、俺らがやるの? 市街戦慣れてないのに」
グラムたちは、例に漏れず対魔物の戦闘を主としている。そして、魔物と戦うのは基本的に街の外。グラムたちの管轄は、短草草原だ。
「本当は、いろいろあって第十一小隊になるはずだったんだけど」
因みに第十一小隊も、別に市街戦が得意なわけではない。貧乏くじを引いただけだ。
「宝石泥棒に殺意マシマシのレンが手に負えないからって、代わりをお願いされて」
「…………」
仕方ないか、と全員が肩を落とした。




