Day 22. 楔
「お前たちだって同罪じゃないか!」
禁術に手を出した外法魔術師が、リズを指さして叫ぶ。 その通りだ。否定するつもりはない。リズの隣には、罪の証である異世界の狼が立っている。理を捻じ曲げて引きずり込み、還すこともできかった、無知と横暴と傲慢の結果が。
ハティが来てから、リズは片時だって己の愚を忘れたことはない。後悔しているというのだって烏滸がましい。それでも――いや、だからこそ。
シャナイゼの東に広がる遺跡群。コンクリートと呼ばれる材質で造られた矩形の塔は、旧世界のものだとか。千年以上のときの流れてかなり風化しているが、それでも何とか骨格くらいは残っていた。
魔術師たちはいつもこのような遺跡の中で夢を見る。新しい技術の発見、旧世界の技術知識の取得。そして、誰にも見咎められることなく、未知を切り開くことを。
目の前の彼もそれだ。
絨毯だったと思われる襤褸切れの上で這い蹲った、リズとそう歳の変わらない男。魔術師は誰も彼も知的な印象を与えるのだが、それが愚行に結びつかないとは必ずしも言えないのが残念なところ。
彼のこの無様な有り様は、リズが痛めつけたあとによるものだった。説得を試みたものの、彼は抵抗し立ち向かってきたので、応戦せざるを得なかった。調度品らしきものが破壊され散らばっているのは、一悶着あった所為。リズの多大なる魔力を叩きつけた結果だった。
「気持ちは解る。同調も同情もする。だけど、見過ごすことはできない」
そうしてリズは、また一つ魔法陣を描く。
言い訳がましいのは自覚している。この行いを正義というつもりもない。
だが、かつて愚を犯したからこそ、楔の一つとなって禁忌を砕き、この世界の崩壊を防ぐとリズは決めている。たとえいつか、自分自身が打ち捨てられたとしても。




