Day 18. もう二度と
――ふざけるな。ふざけるな。
自分の邪魔をした挙句、命まで奪おうとしてきた相手から、フリアは死に物狂いで逃げだした。すでに疲労が体内に蓄積しており、足元は覚束なかった。それこそ日の暮れた短草草原を這うように走っているのだが、平らに見える大地は意外に凹凸があり、思うように前に進めない。 なければ、奴らに追いつかれるというのに。
ふざけるな。 生存本能に急き立てられている間も、フリアの胸中にはどす黒い憤りが渦巻いていた。
フリアは魔術師だ。だから、魔術師らしく魔術の研究をしていただけなのだ。それなのに、奴らはフリアの研究を非難した。金術を使うな、と偉そうに言ってきた。奴らとて、禁術に手を出していたというのに。 人間を実験体にしただけで、ごちゃごちゃと。
後にした研究所が脳裏に浮かぶ。あそこに作品たちをたくさん置いてきた。きっと、奴らにすべて壊されていることだろう。フリアの努力の結晶が。理想の塊が。
生きていてこそ、と思い、フリアはすべてを捨てて逃げ出した。このシャナイゼからも出ていく覚悟だ。だが、辿り着いた沙漠を前に不安が立ち上る。茫漠とした石ころばかり転がる大地と、果てしなく広がる星屑の空。あまりにも何もなく、対岸は遠く、とても希望を見出すことができない。
もう二度と、自分は夢を叶える機会を得ることができないだろうか。 この不毛の地を乗り越え、一から再起を図ることができるのか。暗い未来に恐怖さえ抱く。
でも。
フリアは一歩踏み出した。ここで諦めては、望みは一生叶わない。いつか理想に辿り着きたいその願いだけが、沙漠を前にしたフリアを奮い立たせた。
そして、このときの彼の勇気は、再び人に絶望を振りまくことになる。




