表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/31

Day 12. 謂わぬ色

 リビングの、寝室へと繋がる廊下への扉が開く。部屋に入ってきたその人は、半分ほどしか開いていない赤い瞳でティナを一瞥した。

「おはようございます」

 ぶっきらぼうなあいさつに応じて、先に朝食の席についていたティナはだんまりのまま頭を下げた。彼が怖いからではない。ティナは、言葉を発することができないからだ。さんざんご主人様に仕込まれたので、理解はできる。だが、しゃべるとなると……どうしても恐怖に喉がひきつる。昔は、言葉を口にすると殴られることのほうが多かったから。

 彼――レンは、それを理解してくれている。だから、ティナをとがめることはない。でも、慰めることもなかった。彼はティナの容姿が嫌いだから。狐の耳と尾を持つ、およそ人間のものとは言えない異形の姿が。

 でも、虐めることもない。ムスッとした顔でティナを見るだけで、避けたりもしない。優しい人だとティナは思っている。

「今日、ルビィは……」

 レンはテーブルにより、出掛けた保護者が残した書き置きを見た。

「わ、今日は子守担当か……」

 がっかりした様子に、ティナは慌てて身の回りを見回した。探しているのは、小さく切った紙の束を輪っかで綴じた単語帳。言葉を発せないティナが意思疎通を図る手段。

 結局身の回りではなく、赤いスカートのポケットの中にあった。滑る指で急いでめくる。

 それをレンが制止した。

「いいです。何が言いたいか、おおよそ察しは尽きます」

 ティナは手を止め、呆然とレンを見上げた。だって、彼はやりたいことがあるのに。嫌いなティナに付き合うなんて、嫌に決まっているのに。

 だから、迷惑をかけないよう、『おとなしく家にいる』と伝えようとしたのに。

 レンは下を向いて溜め息を吐いた。

「くだらない遠慮はしない。……ただ、今日は僕、買い物に行きたいので、それには付き合ってもらいますよ」

 つまり、レンはティナと一緒にいてくれるばかりか、何処かに連れて行ってもくれるのだ。耳と尻尾を隠さなければいけない、面倒な見た目をしたティナを。大嫌いな異形の姿をしたティナを。

 やはり、レンは優しい。

 なんだかんだ言いながら一緒にいてくれるこの〝お兄ちゃん〟が、ティナは大好きだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ