表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生駒姫は、親バカな父・義光と従兄の政宗を和解させて東北大同盟を作り処刑フラグをへし折ります!  作者: 双瞳猫
第1部:転生幼女、親バカ父と暴走従兄の喧嘩を止める

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/100

第12話「駒のプレゼン①——『ここで争えば、南の猿の餌食です』」(後半)

「——間者が入っているということは」

 私は、その空気を断ち切るように言った。「南の猿は、今の奥羽の状況を見てるに違いないでしょうね。最上と伊達が戦を続ければ——両軍は消耗しますよね。消耗した後に、猿が動く。それが——最も恐ろしい筋書きではないでしょうか」

 義光と政宗が、同時に私を見た。

 ——よし、なんとか止まった。

 政宗が、私を見た。その目が、細くなっている。

「……続けなさい」

 ——来た。

 政宗従兄様が、自分から「続けなさい」と言った。これは——この人が、私の話を、一人の武将としてきちんと聞く、と決めたんだろう。

「秀吉にしてみれば、今、奥羽に直接兵を出す必要はないのです」

 私は続けた。「最上と伊達が互いに消耗した後——『惣無事令を守らせる』という名目で介入するだけでいい。その時、奥羽に抵抗する力は、ほとんど残らないのではありませんか?」

 義光の目が、静かに鋭くなった。

 政宗が、腕を組んだまま、静かに言った。「……それは、そのとおりかもしれん」

「——では」

 私は、少し間を置いた。

「なぜ今、戦を続けようとなさるのです?」

 天幕の中に、静寂が落ちた。

 春の風が、天幕の布をかすかに揺らした。遠くで馬が嘶く声がした。それ以外は——静かだった。

 政宗が、私を見た。その目は——「正面から向き合うべき相手」を見定める目だ。

「なぜ戦を続けるのか」という問いは、正しい答を求めているわけではない。「答えはわかっているはずでしょ」という確認にほかならない。この二人は賢い。だから——この問いの意味が、すぐにわかるはず。


 義光は、腕を組んだまま、静かに娘を見ていた。

 七歳の幼女が、伊達政宗を——「独眼竜」を——黙らせている。

 戦国の将として、この問いの鋭さは、無論理解できる。「なぜ戦を続けるのか」——答えは一つしかない。「義理や感情が、論理を上回っているから」。そしてその答えを、政宗は自分でわかっている。だから黙っているのだ。

 ——(これほど鮮やかに……やはり俺の血か。駒はいつの間に、これほどの知恵を……)

 義光は、その思いを静かに胸の奥に仕舞った。表には出さない。しかし——目の奥が、また少し変わった。

 ——(……あやつに褒めそやされるのは業腹だが、まあ、俺の子だ。道理よな)

 義光の口の端が、わずかに動く。

 義姫が、その横顔を見て、静かにため息をついた。


 片倉景綱は、天幕の隅で静かに状況を観察していた。

 殿が——黙している。

 「なぜ戦を続けるのか」という問いに、殿が答えを持っていないわけではない。しかし——その答えを口にすることが、この場の問答では致命的なげきとなる。七歳の幼女が、その構造を正確に理解した上で、この問いを投げた。

 ——(ただの童ではない……兵法を地で行く知略の塊だ)

 景綱は、そんな確信を抱いた。

 先程「ほう」と漏らした殿の目を、景綱は見逃していなかった。「面白い」と言った時の声の質も。そして今——殿が「聡い従妹殿だ」と小声で言った瞬間、義光殿の眉間の皺がさらに深くなった。

 ——(殿の心は、既にこの姫様に絡め取られている……そして義光殿は、その危ういほとぼりを見逃してはいない)

 景綱は、もはや避けられぬであろう火種を静かに咀嚼そしゃくした。

 ——(頭痛の種が増えるばかりだ……一刻も早く、独り酒をあおりたいものよ)

 景綱の隣で、氏家守棟が静かに立っていた。その目が、わずかに景綱の方を向いた。

 二人の目が、一瞬だけ合った。

 ——(……似たような業を背負っておられるようですな)

 ——(……お察しします。……左様、お察しいたしますぞ)

 言葉は交わさない。しかし——二人の間に、静かな連帯感が生まれた瞬間だった。


 私は、政宗従兄様が黙してしまったのを見ながら、静かに次の言葉を準備していた。

 「なぜ戦を続けているのか」——この問いへの答えを語る必要はない。政宗従兄様は、すでに答えを持っている。私がすべきことは——その答えを「別の選択肢」に変えることだ。

「……続きをお話ししても良いですか」

 私は、静かに言った。返答を待たずに話を続けることにした。

「争う理由よりも、手を結ぶ理由の方が——ずっと大きいのではありませんか?」

 政宗が、私を見た。

 義光が食い入るように私を見てくる。その目は完全に「次は何を見せてくれるんだ、我が愛娘よ!」とワクワクを隠しきれていない。……チョロい。

 ――お父様、次はいよいよ本命の『奥羽大同盟』の話をしましょうか。お二人とも、準備はよろしいですか? 

 天幕の外では、出羽の春の風が、静かに吹いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ