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悪の秘密結社は今日も平和です!  作者: ぽんすけ
七章

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勝手に魔改造ダメ絶対



ある日、アジトのリビングにて。



「ファントム、遊びに来たぞー!」



厄災が遊びに来た。

カジュアルなワンピースに身を包んだ幼女は勢いよく扉を開けるなり、全速力でソファに寝転がるボスの元に向かい、無防備な腹の上に思いっきりダイブする。

当然ながら「ぐっはぁ!?」と潰れた悲鳴を上げるボスだが、幼女は気にせずその頼りない胸板に頬を擦り付けた。

なんて嬉しそうな表情だろうか。

透き通るような美しい白髪に、血に濡れた深紅の瞳。

まるでビスクドールが命を宿したかのように整った容姿を持つ彼女こそ、世界を股にかけるヴィラン組織───天空都市"エヴァントラス"の王、ミューラ・ローズブラッドである。



「このアジトは面白いな!我輩の城とは違って地下にあるというのはもちろん、そこら中にトラップが仕込まれてるだろう?何故か我輩には反応しなかったが、一度受けてみたいものなのだ!」

「え?ちょっと待ってトラップ?何それ知らないんだけど」



ボス、初耳。

表の廃墟に取り付けた人感センサーはボス発案なので知っているが、ミューラの口振りからするにアジト内部で色々と見つけたのだろう。

ボスすら知らないトラップの数々を。

ボスのジト目が、そのトラップの開発者であろうダウナー系美人科学者に突き刺さる。

縦セタタートルネックに白衣を羽織ったその女性───ソアレは、足を組んでソファに腰掛けたまま、そっと視線を逸らした。

そしてあたかも何事も無かったかのようにマグカップを傾け、コーヒーを一口。



「ソアレさん?いつの間にアジトを魔改造したの?」

「ちょっと何言ってるか分からないね」

「ほう。論より証拠を見せた方がよろしいか?」



ボスは据わった瞳で、ミューラの体を持ち上げる。

暗に「今からミューラに正確な場所を教えてもらってもいいんだぜ?」と脅しをかけているのだ。

ソアレはやれやれと肩をすくませる。



「まぁ、安心したまえ。団員と()()()()には作動しないよう設定してある。仮に侵入者が現れた時、無防備なのは心もとないだろう?」

「それはそうなんだけどね?まったく……次はちゃんと、事前に確認してからにしてよ?知らぬ間に家がトラップまみれとか怖いって」

「了解したよ」



ニコリと微笑んでカップをソーサーに置いたソアレであるが、日頃の行いがちょっとアレすぎて、本当に大丈夫なのかとボスは少しの不安を抱いた。

やっぱ日頃の行いって大事だよね……。



「……姫様、血……」

「おおっ、そうだったのだ!ファントムに会えたのが嬉しくてすっかり忘れてたのだ」



思い出したかのようにポンと手を叩き、ミューラはボスの首筋に顔を寄せた。

そしてその鋭い犬歯を肌に突き立て、ゆっくりと溢れ出した鮮血を夢中で飲み始めた。

吸血鬼である彼女にとって、体質に合うボスの血はまさにご馳走。

A5ランクの黒毛和牛のステーキを頬張っているようなものらしい。

ボスとしても吸血されるのは、もはや慣れたものだった。

天空都市エヴァントラスとの間に起こった諍いが解決してからというもの、何かと暇があればミューラはボスの元に遊びに来ていた。

廃墟の外で遊んだり、公園に連れていかれたり、他にも色々と。

アジト内部まで来たのは今日が初めてだが、それ以外の時も必ず出会い頭に吸血されていたので、牙が刺さる時の痛みにさえ、ボスは若干の慣れを見せる。



「今回はアシュトラスも来たんだ」

「……ん。姫様の……護衛」



口下手な印象を持たせる淡白で間延びした声でそう答えたのは、黒髪金瞳の表情が乏しい少女だった。

アシュトラス。

実力ではミューラに次ぐ、エヴァントラスの実質的No.2である。

艶のある漆黒の鱗で覆われた手脚と尻尾を持ち、乱雑に結った髪の隙間からは特徴的な角が垣間見えた。

動けないボスに代わって、クール系有能秘書ことイリスさんが対応する。



「お久しぶりです」

「ん……。これ、ラミリス……から」

「おや、ありがとうございます」



イリスは、無造作に手渡された紙袋の中身をちらりと見る。

透明な袋に包まれた保冷剤と、その下には底の深いタッパーが入っていた。

タッパーの蓋にテープでくっ付けられたメモ用紙によれば、タッパーの中身は作りすぎた自家製のカレーだとか。

お隣さんからのお裾分けかな?

ありがたく頂戴し、イリスは代わりにこの前買ったクッキーの詰め合わせをアシュトラスに手渡した。



「……()()。あの狼女、は……?」

「あの、前も言ったけど"王様"はちょっと……」

「……?王様は……王様。姫様の、(つがい)。私たちの……王となる、存在。だから………王様で、あってる」



さも当然のことであるかのように、アシュトラスはこてん……と可愛らしく首を傾げてそう言った。

いつの間にかミューラと結婚することになってた件。

もちろん、ボスにその気は無い。

以前も全く同じことを言われたので、念のため否定したのだが……。

「姫様とは……遊び?」とブチギレられた。

解せぬ。



「ま、まぁその件は置いておいて……。ウルフちゃんは今日、友達と出かけるんだってさ。確か映画とかカラオケ行くって言ってたよ」

「残念……。筋がいい、から……手合わせしたい、と……思ったのに……」



どうやらアシュトラスは、ウルフちゃんのフィジカルオバケっぷりを(いた)く気に入ったようで。

運動代わりに手合わせ出来ないかと密かに期待していたらしい。

だが残念ながら今日はウルフちゃんはお出かけ中。

ちょっとだけ、しょんぼりした雰囲気を漂わせるアシュトラスであった。






ここからはミューラ&アシュトラス×ボスの日常回です



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

感想等々、何かしらのリアクションをいただけると、作者は大変喜びます。狂喜乱舞です。ぜひともお願いいたします!( ^ω^ )









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