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悪の秘密結社は今日も平和です!  作者: ぽんすけ
六章

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ヴィランとヒーローの共闘戦線



ここは都内にある、ヒーロー協会が管理する高層ビルの屋上だ。

平時は入ることの出来ないこの場所に、多くの個性的な人影が集まっていた。



「改めて、こうして集まると壮観ね〜」

「……そうだな」



語尾をのほほんと間延びさせて微笑む、魅惑の金髪魔女ことNo.2ヒーローのシャイニング・ウィザード。

ホウキに優雅に腰掛けた彼女の横で、No.1ヒーローであるビルドマンは腕を組んだ状態で静かに頷いた。

赤と青のアメリカンな覆面に隠されて表情は伺えないものの、少なからず目の前の光景に思うところがあるらしい。

それを言葉にはせず、寡黙なまま通すのはいつもの事だ。

そして二人の背後には、今回の作戦に参加するヒーロー達も集まっていた。

三英傑たるイナズマ、ユウキ、マッスルマン。

加えてランキング6位のガルバンと、暴風ヒーロー・テンペストだ。

総勢七名。

ヒーローサイドの厳選された戦力である。



「……なんか少なくね?」



一方、ラプラスを筆頭に集まったヴィラン連合の面々。



秘密結社Xからはイリス、ソアレ、ウルフちゃん、八咫烏ちゃんが。

魔王軍からは魔王様、シルヴィア、セレスティア、綾桜(ようりん)が。

互助会からはゼロ、剛鬼が。

百鬼夜行からは九尾、ライオネル親分、幻狐が。

ラプラスの家からはラプラス、テンパライが。



………と、人数だけ見るならヴィラン連合側が圧倒的に多かったのだ。

それに関して、ゼロからツッコミが入る。

もう少し連れて来れなかったのか、と。

まぁそれを言った本人がツーマンセルなので、あまり人のことを言えた立場では無いのだが……。



「あのねぇ〜……。私たちヒーローの相手はエヴァントラスだけじゃないのよ〜?野良怪人やら他のヴィラン組織だって、都合良く活動を辞めてくれる訳ないでしょ〜?」



シャイニング・ウィザードから送られるのは呆れの視線だ。

この国で暴れる悪役は、なにもヴィラン連合だけではない。

大小数多くあるヴィランの組織や野良怪人達が、今回の作戦を実行するためにわざわざ大人しくしてくれるかと言えば、絶対にそんなことは無い。

むしろヒーロー協会の活動が弱まれば、嬉々として行動に移るだろう。

だからエヴァントラスに戦力を割きつつ、ヒーローとしての通常業務も滞らせる訳にはいかないのだ。

そのため、ヒーロー協会のトップであるシュウォルテは作戦に参加しない。

また戦力として頼りになるご意見番はタイミングの悪いことに現在海外出張中であり、帰国が間に合わなそうなのでこちらも不参加。

他ヒーローは純粋に実力が足りていないなどで、この少数精鋭で挑む事となった。

悪役(ヴィラン)が少しでも自重してくれれば、その分、多くの戦力を投入出来るんだけどなぁ……。

そんな言外の想いが伝わってくる。

ゼロはそっと視線を逸らした。

そうでした、ヒーローが忙しいのは自分達ヴィランのせいでした。



「メンバーも揃ったので、そろそろ作戦の概要を説明したいのですが……」

「あら。お願いするわ〜」



時間的猶予もどれだけあるか定かではない。

お喋りも程々にして、ラプラスから今回の作戦の概要が説明された。

まぁ作戦とは言っても、実に単純かつ明快なものだ。



「エヴァントラスへは、私の"転移"を使って侵入します。その際、それぞれの組織によって侵入地点を分けるので、別方向から同時に奇襲を仕掛けましょう」



この作戦における目的はただ一つ。

いかに消耗させず、九尾をミューラの元に送り込むかだ。

ミューラへの勝利条件として九尾の存在は必要不可欠。

しかもラプラスの見立てでは、二人の実力はまさに横並びと言うにふさわしいほど拮抗している。

会議では勝てると明言していたものの、それは彼女の傲慢な性格に由来する一種の強がりでしかないことは、ヴィラン連合の()()全員が理解していた。

実際はかなりの苦戦を強いられることが目に見えている。

確実に勝てる保証はどこにもないし、むしろファントムという絶好の吸血ストックを向こうが保有している限り、基本的に不利だと考えて良いだろう。

吸血鬼にとって相性の良い血は、上級のパワーアップ兼回復アイテム。

泥沼の戦いになればさらにその差は顕著になる。

そのため、どんな形でも加勢は必要だろう。

分散奇襲作戦は、その加勢を成り立たせるためでもある。

多方向から攻められれば、それを迎撃しようとする敵側も戦力を分散させなければならず、九尾が抜ける穴を作りつつ、手が空き次第、九尾に加勢することも可能だ。

もし仮に敵が奥地で籠城しようとも、その時はこちらも総力でぶん殴るまで。



「あなたの転移って本当に便利ねぇ〜」

「一応、制約もあるんですよ?たとえば目測の範囲内のみですとか、今回で言えば、一度の転移における人数制限などが該当しますね」

「あらそう〜。確かにどこへでも転移出来るのなら、要人警護とかやってられないわよね〜」



どれだけヒーローが手を尽くして警護しようが、一瞬にして目の前に現れて一瞬にして姿を消されたら、もはや暗殺や誘拐を防ぎようがない。

そのような完全無欠な能力でないことを、ヒーローとしては安堵するばかりだ。



「質問が無いようでしたら、早速乗り込もうと思うのですが……どうでしょう」



ラプラスが周囲を見渡すが、誰からも反対の言葉は返ってこなかった。

むしろ秘密結社Xの面々や九尾など、一部のメンバーからは急かすような前のめりな雰囲気さえ伝わってくる。



「それでは。皆さん、ご武運を」



ラプラスがゆるりと右手を天に掲げると、それに伴って薄紫のオーラが集まった全員の体を包み込む。

高層ビルの屋上に、謎の薄紫の波紋が広がり始めた。

見据えるのは、大空をゆっくりと漂う天空都市エヴァントラス。

パチンッ!と澄んだ音が鼓膜を揺らした。

ラプラスのフィンガースナップだ。

次の瞬間。

僅かに空間が歪み、ほんの一瞬だけ眩い薄紫の光が視界を満たした。



そして───。



光が収まり、再び高層ビルの屋上が露わになった時には。

既に、そこには人っ子一人残ってはいなかった。






          ◇◆◇◆◇◆





(まぶた)を持ち上げると、そこはまばらに低い雑草の生えた荒野のような場所だった。

野球のスタジアム程の開けた土地に、視線を奥へ向ければ瑞々しい緑が生い茂る森が見える。

背後は10m程度進むと地面が途切れており、いつもよりも遥かに近い位置で雲が流れていた。

かなり(ふち)の方に転移したようだ。

全員の転移が上手く行ったことを、"千里眼"で確認するラプラスの後ろでは、糸目優イケメンことテンパライが、遠くに見える小さな街並みに感嘆の声を漏らす。

標高はどのくらいなのだろうか?

そんなくだらない疑問が脳裏に浮かんだものの、呑気な反応はここまで。

手のひらで太陽光を遮りながら辺りを見渡していたテンパライは、薄っすらと胡散臭い笑みを浮かべてラプラスの隣に並ぶ。



「これまた随分と早いお出迎えやなぁ」



二人の視線の先では、ピシッと姿勢を正して腹部の前で手を重ねた、実に礼儀正しい姿勢で侵入者を待ち構えていた金髪のメイドさんが居た。

ゆるふわな雰囲気を感じさせる包容力のある微笑みに、満点を付けざるを得ないクラシックなメイド姿。

以前、ボスが誘拐された際にミューラの背後に控えていたメイドと同じだが、ラプラス達はそれを知らない。



「お初にお目にかかります。(わたくし)、エヴァントラスのメイド長を務めております、"ラミリス"と申しますわ」



スカートの端をちょんと摘み、ラミリスと名乗った女性は優雅にお辞儀をした。



「ラプラスはんラプラスはん、どうやら勘付かれてたみたいやね」

「そのようですね……」



敵を引き付けられた時点で、こちらの作戦はほぼ成功だ。

むしろ相手が単独ならば大成功と言っても過言では無い。



「ようこそいらっしゃいました。私共一同、皆様のご来()を心よりお待ちしておりました」



頭を下げたラミリスがニコリと微笑む。

棒立ちではあるものの、ラプラスとテンパライは警戒心を緩めず、いつでも戦えるように神経を研ぎ澄ましていた。

しかしラミリスが懐から取り出した謎の物体を目にして、二人は反射的に動きを止めてしまった。



「うふふ、大変恐縮なのですが……。このままでは少々こちらが不利となってしまいますので、ちょっとしたズル、使わせていただきますね♡」



ラミリスが手のひらに乗っけた、紫色の小さな球体。

それが突如として眩い光を放ち、花火のように上空へと飛び上がった。

大空で一つの彗星のように瞬く紫色の光は、驚くべきことに数秒のうちに七つまでその数を増やした。



「アーティファクト、"無想の賜物(シャルフ・ゾーラ)



ラミリスの口からそう紡がれた途端。

ラプラスとテンパライの視界がぐにゃりと歪み、後方へと引き伸ばされた。

目の前の現象に対して、脳が理解を拒んだかのような鋭い頭痛が二人を襲う。



「ぐっ……!今のは……!?」



思わず薄く開眼したテンパライは、つい先程まで隣に居たはずの上司の姿が見当たらず、少なくない衝撃を受けた。

分断された……!?

正面でニコニコとゆるふわな笑顔を浮かべたラミリスの存在は健在。

自分一人でこの人の相手するん……?と、絶妙に頬を引き攣らせるテンパライ。



「……うふふ、どうやらお揃いのようですね。それでは、改めてよろしくお願いしますわ」



ラミリスの発言を受けて、ハッとしたテンパライが後ろを振り返ると、そこには。



「ってぇ〜……!?何なんだ今の………」

「あっぶねぇ〜!セーフ!」

「情けない男共でありんすねぇ」



上から、頭を抱えて尻餅をついたガルバン。

謎のポーズで無事をアピールするゼロ。

そんな二人を見て呆れている幻狐。

である。

相手の目的が掴めない何とも謎に満ちた人選だ。



「………え、このメンバーで戦うん?」



テンパライの独り言は、虚しく風に攫われて消えてしまった。







ヴィランとヒーロー、正悪の垣根を超えた共闘が始まります。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

感想等々、何かしらのリアクションをいただけると、作者は大変喜びます。狂喜乱舞です。ぜひともお願いいたします!( ^ω^ )









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