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悪の秘密結社は今日も平和です!  作者: ぽんすけ
六章

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ヤ〇チャしやがって……




今日も今日とて、ヒーローとの熱い戦いを繰り広げた秘密結社Xのボスとエックス戦闘員達。

激闘の末に見事に正義の味方を打ち破り、勝ち星を上げた。

そのちょっとしたお祝いとしてスーパーでスイーツを買い、仲良く帰路に着いた。



「いや〜。意外と強かったですね、あのヒーロー」

「ね。本人はランキングのこと気にしてたけど、そこまで卑屈にならなくて良いと思うなぁ」



スーパーのビニール袋を片手に、一号君とボスは先程戦ったヒーローに関する感想戦を行っていた。

今日出くわしたヒーロー君、何やらヒーローとしての自分の順位にコンプレックスを持っているそうで。

言動の節々からマイナスオーラが漂っていた。

しかし戦ってみると自己評価とは裏腹に、かなり良い動きと汎用性の高い能力を兼ね備えていたのだ。

彼の努力次第では、充分にランキング上位に駆け上がれるポテンシャルがある。

ぜひともこのまま腐らずに頑張って欲しいものだ。



「ヒーロー協会も結構シビアなんですかねー……」

「どうだろねー。まぁ、三英傑の地盤が硬いのも原因なんじゃないかな。イナズマとか」

「あぁ……。あの人、滅多なことない限りは負けませんもんね……」



全員の脳裏に、冷静沈着な迅雷ヒーロー・イナズマの横顔が浮かび上がる。

お世辞にも愛想が良いとは言えないものの、彼女のヒーローとしての活躍は本物である。

おそらく現ヒーロー協会で最も貢献度が高いのが彼女だろう。



「ま、俺たちからすれば────」



のほほんとした表情で何かを言おうとしたボス。

しかし言葉が出てくるよりも前に、凄まじい衝撃が彼の腹部を襲った。

それはあまりに一瞬の出来事で、あのボスですら意識的なガードが間に合わなかったくらいだ。



「こっちなのだ!ほら、早く───あっ」

「ぐっはぁっ!!?」



さながら、ダンプカーに撥ねられたかの如く。

恐ろしい衝撃がボスの腹部を突き抜け、そのまま激しく弾き飛ばされた。

閑静な住宅街にドゴォンッ!!と場違いな轟音が響き渡り、勢いよく砂煙が巻き上げられる。



「ぼ、ボス!?」



驚きのあまり放心していたエックス戦闘員達が、我に返り慌ててボスの安否を確認する。

砂煙が晴れると、そこには……。

ヒビ割れたコンクリートのクレーターに横たわる、ボロボロになったボスの姿が。

完全にヤ〇チャである。

ヤ〇チャしやがって……状態のボスである。

ロングコートのボロボロ具合がまた良い味を出していた。



「「「ボスーーーっ!」」」



大慌てで駆け寄るエックス戦闘員達。

一号君から「ヤ〇チャしやがって……」とお決まりのセリフが放たれ、その向かい側にしゃがんだ二号君からは「脆弱すぎません……?」とボスの体幹を疑う言葉が零れた。

その視線はボスだけでなく、ボスがこうなるに至った原因にも向いていた。



「わわっ、すまんのだ!」



こちらもまた慌てた様子でオロオロしているのは、白髪赤眼の可愛らしい幼女だ。

黒と赤で統一されたクラシックなフリル付きワンピースに、薔薇の意匠がなされたオシャレなマントを羽織っている。

顔立ちは幼く、モチモチした頬が実に可愛らしい。

幼女故の丸みを帯びた肩に、わたわたと慌てた様子で振り回している腕はこちらが心配になるくらい細い。

ボスの腹部に強烈なダメージを与えたのが、この幼女なのだ。

すれ違いざまに幼女とぶつかり、撥ね飛ばされたのは何故かボス。

そりゃあ二号君も「脆弱すぎません……?」と言いたくなる。

普通あるとしても逆だろう。



「申し訳ございません。私が目を離してしまったばっかりに……」

「いえいえ。こちらこそなんかすみません……」



頭を下げるのは、遅れて幼女の後ろからやって来た執事風の男だ。

彫りの深い日本人離れした顔面をしていて、ガタイも非常に良く比率的に180近い身長があると思われる。

倒れて動けないボスに代わって、三号君もぺこりと頭を下げる。

相手は幼女なのだ。

むしろちゃんと前を見ていなかったこちら側に非がある。



「申し遅れました。私、ガルハラと申します。この度は大変失礼致しました」






          ◇◆◇◆◇◆






住宅街で騒いでいてもあれなので、場所を公園に移動した。



「おおっ、やるではないかファントム!我輩も負けてられないのだ!」

「へへーんっ!果たしてブランコマスターの俺に勝てるかな!?」



ブランコでどちらが高いところまで行けるか勝負している、ボスと幼女。

見ているこっちがちょっと不安になってくるくらいブランコの金具を軋ませながら、楽しそうに競い合っている。

乗っている本人達よりも、傍で見守っている三号君の方が心配でハラハラしてるようだ。

一方、ベンチに座った二号君と三号君の隣では、ガルハラと名乗った執事風の男性が事の経緯を二人に話していた。



「あ、お二人とも海外ご出身なんですね」

「へ〜。どうりで顔面整ってる訳ですよ」

「恐縮です」



にこりとガルハラが微笑む。

やだ、イケオジ……。

ピシッと整えられた灰髪とモノクルがとても似合っており、まさに理想の執事像をそのまま体現したかのような素晴らしいビジュアルだ。

出身は海外との事だが、日本語での会話もネイティブ並。

完璧執事とはまさに彼のためにある言葉だろう。



「お嬢様がどうしてもこの町に行きたいと仰っていまして……皆様にはご迷惑をおかけ致します」

「いえいえ、ちょうど僕らも暇でしたし」



あの幼女───名を"ミューラ"というそうだが、ご覧の通り、専属の執事が付くような立派なお姫様なのだそうだ。

そんな彼女が、この何の変哲もない町にどうして来たいと思ったのかは知らない。

しかし、こうして出会えたのも何かの縁だろう。

ちょっとした道案内と遊び相手になる事なんてお易い御用だ。



「とうっ!」



最高地点までたどり着いたボスが、華麗にブランコから飛び降りて体操選手並の見事な着地を披露する。

バチクソにキマった……と誇らしげな表情のボス。

振り返ると、ミューラはキラキラと目を輝かせていた。



「かっこいいのだ!よしっ、我輩も……!」

「ちょちょ、ミューラちゃん!?」



三号君が慌てるが、時すでに遅し。

思いっきり助走をつけたミューラが、最も高い位置にたどり着くと共にブランコから飛び降りた。

ボスとは違い身軽な動作は、まるで本当に空を飛んでいるかのように錯覚させる。

そこで見た景色は飛んだ者にしか分からない。

深紅の瞳をキラキラと輝かせたミューラが顔を向けると、着地地点ではしっかりとボスが手を差し出し、受け止める準備をしていた。

交差した瞳は以心伝心。

何も言わずとも、ミューラはそのままボスの胸の中に飛び込んだ。

ボスは上手い具合に衝撃を受け流し、ダンスでも踊るかのようにクルクルとターンして力を相殺する。



「わはは!これ楽しいのだ!」

「だしょ〜?」

「ファントム、もっかいやるのだ!」



グイグイとボスの手を引いて、ミューラは再びブランコに腰掛ける。

無邪気な笑顔はまさに純粋無垢な幼女そのものだ。

これにはガルハラだけでなく一号君と二号君もニッコリである。








「うまーーっ!これ美味いのだ!いくらでも食べれるのだ!」

「すみません、私まで……」



どうせなので、ミューラとガルハラも含めて、全員でスーパーで買ったスイーツを食べることにした。

二個入りのチーズケーキを両手のプラスチックフォークに一つずつ刺し、交互に食べるという典型的な絵面のミューラちゃん。

頬が餌を溜め込んだリスのように膨らんでいて実に可愛らしい。

モッチモチ。

そりゃあもうモッチモチだ。



「へぇ。ミューラちゃんって吸血鬼なんだ」

「んむっ!偉大なる吸血鬼の王なのだ!」



両手にフォークを握ったまま、薄い胸を張ってドヤ顔のミューラちゃん。

あかん、可愛すぎる。

こう……とにかくいっぱい食べさせたくなる部類の可愛さだ。

うちの小雪ちゃんとも良い勝負である。

まぁ小雪ちゃんの勝ちは揺るぎませんが。

ちなみに本人(いわ)く、ミューラは吸血鬼の能力を持っているそうで。

獣の能力に目覚めて獣人化する事例と似たようなものらしい。

吸血鬼の能力が覚醒した結果、身体構造も吸血鬼に近くなっているとのこと。



「ちょうど喉が乾いてきたのだ!ファントム、血を吸わせて欲しいのだ!」

「え?まぁいいけど……先に口拭こっか」

「むぎゅ」



お手拭きでミューラの口を拭うと、少し潰れた声が濡れた紙タオルの奥から聞こえてきた。

すっかり口元を綺麗にした上で、中途半端に欠けたチーズケーキが刺さったフォークをガルハラに預け、ミューラはボスのお膝にぺたりと座った。

お互いに向かい合う形だ。

小さく開いたミューラの唇から、二本の鋭い犬歯がギラリと垣間見える。

ボスを抱き寄せ、ミューラはその頼りない首筋に吸血鬼の牙を食い込ませた。



「っ……」



ちょっと痛かったらしい。

ボスの肩がビクリと震える。

あれだ、注射の針を刺す時の痛み。

あの一瞬かつ絶妙に鋭い痛みが、首筋を突き刺した。

「懐かしいなこの痛み……」とボスは謎の感慨に(ふけ)る。

吸血が終わるまで、そのまま動かずにしばらく待った。

そして。



「ぷはっ……」



ゆっくりと離れたミューラの唇とボスの首筋の間で、銀色の糸が繋がっている。

存分に血を味わったのだろう。

向かい合ったミューラの瞳は濡れっ気を含んでいて、ぺろりと唇を舐める仕草はどこか艶めかしい。

幼女にあるまじき妖艶さだ。



「……ガルハラ、ついに見つけたのだ………」

「なんと……!」



ミューラがぽつりとそう呟くと、吸血を見守っていたガルハラが僅かに驚愕を滲ませた。

何が何だか分からない秘密結社Xの面々を置き去りにして、ミューラは感極まったガルハラに対してコクリと頷く。

そして、改めてボスに向き直ると。



「ファントム!」

「あ、はい。どうしたの?」

「お前、我輩の物になるのだ!!」

「………はい?」





親の顔より見た俺TUEEEE系の導入かな?



・ヤムチャ………『ドラゴンボール』より



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

感想等々、何かしらのリアクションをいただけると、作者は大変喜びます。狂喜乱舞です。ぜひともお願いいたします!( ^ω^ )









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