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悪の秘密結社は今日も平和です!  作者: ぽんすけ
五章

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魔王様の秘密




ヴィラン連合に所属する組織の一つ、魔王軍。

トップである魔王を軸に少数精鋭で組まれたこの組織の拠点は、郊外のちょっとした森林地帯に佇んでいた。

魔王様が開発した高性能な光学迷彩によって外部から視認することは出来ず、かつ土地の所有権を魔王軍のメンバーが所持しているため、滅多なことが無い限り侵入者が現れることはない。

まさにヴィランの拠点としてふさわしい設備と場所だ。

外見はRPGなどでよくお目にかかる魔王城そのもので、城主の趣味嗜好を顕著に表している。

もちろん内装もこだわり満載。

専用のツアーを用意しても、果たして紹介しきれるか不安な程の設備が備えられていた。

一つ一つそれらの説明をしたい気持ちは山々なのだが、今回はやむなく割愛させてもらう。

本命はこっちだ。

城内にある、食事スペースにて。

黒髪の青年───我らが魔王様は、額に青筋を立て小刻みに頬をヒクつかせていた。

室内のためかマントは着用しておらず、ベストにネクタイというシンプルなお姿で仁王立ち。

細めた鋭い眼光が、眼下で正座させられている二人の人物に向けられる。

驚くべきことにその正座した二人の太ももには、重そうなレンガが胸が隠れる高さまで積み上げられており、足元には大根おろしのようにギザギザしたプレートが敷かれていた。

一体どんな大罪を犯したら、こんなにえげつない処罰をされるのだろう。

ところが魔王様は、あたかも「これくらいむしろ生ぬるいわ!」とでも言いたげな表情で、口元を歪める。



「お前らな……いい加減にしろ」



魔王様が睨み付ける。

視線で反省を促すが、むしろ正座した二人は憤慨した様子で魔王様に抗議した。



「魔王様が全然相手してくれないのが悪いんですよぅ!そろそろ私達とも一夜を共にするべきです〜!」

「そうだそうだ!余を惚れさせておいて飼い殺しとは、感心せぬぞ!」



前者は、赤を基調としたチャイナ服に身を包んだ茶髪ロングヘアの元気少女。

ヒーロー協会との一件でもちょろっと前線に出てきていた、コミカルな動きと立派な尻が自慢の拳法家、綾桜(ようりん)ちゃんだ。

一方、後者は完全な新キャラである。

夜空に輝く黄金の月を彷彿とさせる金色のロングヘアに、血に濡れた深紅の瞳。

フォーマルなドレスを身に纏っており、どこか気品を感じさせるエレガントな雰囲気を醸し出している。

名をセレスティア。

"紅月姫"の異名を持つ、英国の麗しき吸血姫だ。

そんな二人から寄せられた文句に、魔王様は湧き上がる頭痛を堪えるように眉間を指で抑える。



「あのな……だからと言って、人の私物を盗むのはやめろ!」



怒り心頭なご様子の魔王様だが、当の犯人達はあくまでも自分は無罪だと訴えるつもりなようで。

目をぱちくりとさせて、さも無関係であるかのように振舞っている。

正気か?

一周回って怒りよりも呆れを感じてきた魔王様。



「一回鏡見てこい。どこからどう見てもお前らしか居ないだろ、犯人は」

「「?」」



一体どこに、私生活の中でトランクスを頭に被る女が居ると言うのか。

お前のことを言ってるんだぞ、綾桜(ようりん)

魔王様から軽蔑の視線を向けられた綾桜(ようりん)は、男物の下着(トランクス)を頭に被ったまま首を傾げる。

続いて視線はセレスの方へ。

綾桜(ようりん)ほどあからさまではないものの、彼女もまた盗んだ物品が隠しきれていなかった。

零れ落ちんばかりのダイナマイトおっぱいの谷間から、ジャケットらしき黒色の裾がお目見えしている。

今日はいつにも増して膨らみが大きいかと思えば、そんな場所に隠していたなんて……。

呆れて言葉も出ない。

しかし本人はきちんと隠せていると本気で思っているらしく、何が不満なのかと尊大な態度を崩さない。

こ、こいつら……。



「ええい、何でもいいからさっさと返せ!」

「あっ、ちょっと何するんですか!せっかくの戦利品が!」

「やかましいわ、このむっつりスケベが!人の下着を盗むんじゃあない!」

「いいじゃないですか一枚くらい!こちとら相手にもされず、溜まりに溜まって大変なんですよ!文句言うなら抱いてください!」

「俺はシルヴィ一筋だっ!」

「ムキーッ!!今の聞きました?セレスさん!目の前にこんな爆美女が二人も居るのに!」

「うむ!このような屈辱、他にあるまい……!魔王ならば夜も魔王らしく振る舞わんか!」

「夜の魔王様ってか?本当にやかましいわっ!」

「嫁の数は男の甲斐性!美少女ハーレムとか魔王っぽいじゃないですか!」

「余の胸を……このたわわな果実を好きに揉みしだいて構わんのだぞ!その権利を放棄すると言うのか!?」



それは………それはッ、そうだけれどもッ!!

魔王様、心の中で強く叫ぶ。

彼も一人の男である。

色気満載の魅惑なダイナマイトボディには無意識に視線が引き寄せられてしまう。

これはもう男の(さが)だ。

けれど、愛するシルヴィアへの想いはずっと一筋。

そう心に決めたのだ。

爆美女なことは認めるが、決して誘惑に負ける訳にはいかない。



「───とにかく!これは没収だ!もうするんじゃないぞ!」



素早くトランクスとジャケットを回収。

魔王様はさっさと別室に行ってしまった。

しばらくして、魔王の気配が遠ざかったのを確認してから、取り残された綾桜(ようりん)とセレスは残念そうにため息をついた。



「上手く行ったと思ったんですけどね〜……」

「いや明らかにお主、隠し場所ミスってたろう。何故に被った」



正座を続けながら、セレスさんから至極(もっと)もなご指摘が入った。

もはや隠す気すら無かったのでは?

そう思われても仕方がない雑な誤魔化し方だった。



「それを言うならセレスさんもですよ。なんで胸に詰めたんですか……。元からぱっつんぱっつんだったのに」



セレスのダイナマイトボディにさらなる詰め物をしたせいで、胸元の生地が僅かに伸びてしまっていた。

いつもより肌色を多く露出しつつ、セレスは何でもないように笑みを浮かべる。



「……まぁ良い。何にせよ、作戦の第一段階は成功だ」

「ですねぇ」



綾桜(ようりん)もまた、実に悪どい笑みで答えた。

そう、あくまで魔王の私物を盗んだのは、バレるところまで含めて作戦の第一段階に過ぎないのだ。

本番はここからである。

音を立てぬようにして、魔王の"闇"が付与されたレンガを持ち上げて隣に置く。

お仕置から抜け出して二人が向かったのは、なんと魔王様の自室だった。

正確に言うと"魔王様とシルヴィアさんが住む愛の巣"だが。



「セレスさん……」

「うむ、任せておけ」



セレスの指先の傷からドロリと溢れ出した血が、鍵穴に入り込み奥へと浸透していく。

しばらく待っていると、カチッ……と鍵が開いた音がした。

凝固した血の合鍵を引き抜き、二人は素早く中に滑り込む。



「いつ戻ってくるか分からん。手早く済ませるぞ」

「あいあいさ〜……!」



シュピッと敬礼した綾桜(ようりん)が手当たり次第に手を付け始めた。

セレスも値踏みするような視線を巡らせながら、ズンズンと奥に足を踏み入れる。

魔王様とシルヴィアの部屋は、入るとまず正面に大きなデスクが見え、机の上には三つの液晶とデスクトップパソコン、VRゴーグルなど主にゲーム機器が置いてある。

その背後には巨大な本棚があり、マンガやライトノベルを始めとした様々な書籍が所狭しと並び、その左右には大量のグッズが飾られたコレクション棚が鎮座していた。

またシルヴィア用と思われる簡素なデザインの鏡台や、共通のクローゼットもあったが……。

やはり一番目を引くのは、二人が寝ても圧倒的に余裕のあるキングサイズのベッドだろう。

ここが愛の巣ならば、あのベッドの上はまさに"愛"が育まれる現場に他ならない。

綾桜(ようりん)から「ケッ」と珍しい悪態が零れた。



「ふむ……やはりそう簡単には見つからんか」



適当に引き出しやらクローゼットを開けてみたが、それらしき物品は中々出てこない。

綾桜(ようりん)とセレスの目的………それは、魔王かシルヴィアの弱みを見つけることだった。

前半でご覧いただいた通り、魔王はシルヴィアに一途であり、決して他のメンバーには手を出そうとしない。

古参でありながら未だに関係が進まぬことに痺れを切らした二人は考えた。

どうすれば魔王は手を出してくれるのかと。

力技は不可能に近い。

二人がかりでも魔王を抑えるのはかなり厳しい。

シルヴィアはもっと無理だ。

ならばどうするべきか……。

そこで思い至ったのが、どちらかの弱みを握るという手段だ。

仮に魔王の弱みを握れればそのまま襲うことも出来るだろうし、シルヴィアの弱みを握ったのなら邪魔が入る機会を減らせるかつ、彼女からの口利きも期待出来るお得セット。

計画から実行はとても早かった。

シルヴィアが外出中な今日は絶好のチャンス。

何としてでも成果を持ち帰りたい。



「う〜ん、さすがハルトさん……警戒心が凄いなぁ。これ、そう簡単には見つかりませんよ」



最悪の場合はこの侵入を何回か繰り返していれば、いずれ何かしら成果を上げる日は来るだろう。

しかしこれを繰り返せば繰り返すほど、同時に見つかるリスクも上がっていく。

そう簡単にバカスカ侵入する訳にもいかないのが難しいところだ。

周囲の気配を注意しつつ室内を探し回っていると、不意にセレスが何かに気付いたようで、机の前で立ち止まった。



「……綾桜(ようりん)、ちょいと来い」

「どうかしました?」



液晶を覗き込んだセレスに呼ばれて、綾桜(ようりん)もデスクに向かう。



「これ、電源切れておらんよな」

「……あ、そうですね。スリープ中なのかな」



綾桜(ようりん)が試しにキーボードを押してみると、予想通りスリープ中だったらしくホーム画面が表示された。

パスワードを求められている。



「むぅ……検索履歴とか地味に気になりますね。どうします?えっちなこととか検索してたら」

「それはシルヴィが許さなそうだが……まぁ、見てみる価値はありそうか」



イタズラっぽい笑顔を浮かべた二人。

セレスはマウスに手を添えた。

想い人の検索履歴という、禁忌とも言えるものを調べるために。

……だがしかし、そこで問題となってくるのがパスワードだ。

画面ではずっとパスワードを求められている。

これが分からない限りはどうしようもない。



「どうせシルヴィさんの誕生日とかじゃないですか?」

「有り得るな……」



試しにシルヴィアの誕生日を入力、エンター。

爆速でログインに成功した。

二人分の呆れを帯びた視線が画面に注がれる。

もうちょっとこう……セキュリティ的に無難なパスワードにするべきでは?

そんな考えが二人の脳裏を過ぎった。



「え〜っと、検索タグは………って、ああっ!?セ、セレスさん!」

「こ、これはッ……!!」



綾桜(ようりん)とほぼ同時にセレスも()()を発見し、驚愕の声を上げた。



『マル秘ファイル』



タイトルからして、いかにも怪しいファイルを見つけた。

ゴクリと生唾を飲み込む音がする。

頷き合い、セレスはカーソルをその『マル秘ファイル』に重ねてダブルクリック。

すると────。





「な、なん………だと…………!?」





セレスが(うめ)き声を漏らした。

心なしか慄いているようにさえ見える。

二人が目にした、『マル秘ファイル』の真相。

それは。



「いや、え、小さすぎません?マイクロですよ、これ……ほぼ紐でしょうこんなの」

「む、むぅ……ナースとな。確かに王道ではあるのだろうが……なんと言うか、その………」

「アラビアン!めっちゃアラビアンですよ!えっちすぎます!」

「兎にしては視線が肉食獣すぎんか?ちょっと怖いんだが……」



数百……いや、数千枚に渡る写真の群れだった。

しかもその全てがシルヴィアさんを写している。

おまけにただのシルヴィアさんではない。

夜にピッタリなコスプレをした、エロティックでファンタスティックなシルヴィアさんだ。

全体的に色気がすんごい。

魔王様の隠れた趣味を知った綾桜(ようりん)とセレスは、僅かに頬を赤らめていた。

なんだかイケないものを垣間見てしまった気がして、セレスはそっとファイルを閉じた。



「……ん、よし、検索履歴を見よう」

「そ、そうですね!」



顔の熱を少しでも覚まそうと、綾桜(ようりん)はパタパタと手で扇ぐ。

セレスはタブを開き、直近で多く検索されている通販サイトに移動。

購入履歴を覗いてみる。

これまた二人はびっくり仰天した。



「いや買いすぎでしょう!どんだけ飢えてんですか!」

「こ、これはまた………」



うがーっ!と叫ぶ綾桜(ようりん)に対して、セレスは言葉に困っている様子だ。

どっさりと大量に羅列した18禁アイテムの購入履歴を前にしたら、きっと誰しもがこのような反応をしてしまうだろう。

決済者が知り合いならば尚更のこと。

アカウント的に注文したのがシルヴィア側と思われるのが、さらに二人の好奇心を駆り立てた。



「ちょ、これはもっと詳しく調べませんと!」

「う、うむ、そうだな!……いやしかし、まさかシルヴィがここまでドスケベな女だったとは……」

「誰がドスケベ淫乱女か」

「ぬ?いやいや、そこまでは言っておら……ん………」



異変を察知したセレスがビシッと石のように固まった。

僅かに遅れて、綾桜(ようりん)も笑顔のまま動きを止める。

二人して油を差し忘れた機械のようにぎこちない動きで、ギギッ……と顔を上げた。

そこには、デフォルトの冷たい無表情で絶対零度のオーラを纏った、我らが最強正妻シルヴィアさんのお姿が。

海のように深い蒼の瞳は極寒の冷気を孕み、綾桜(ようりん)とセレスを心の底から震え上がらせる。

冷や汗ダラダラながらも笑顔を取り繕い、「許してちょ♡」と懇願する二人。

さて、正妻様の判決は……。



「ん、ギルティ」



ダメだった。

青ざめる綾桜(ようりん)とセレス。

直後、二人だけを狙った凄まじい精度の氷結によって、一瞬で氷漬けにされてしまった。






────オマケ────



パソコンの中身を盗み見した罰として、強制的にバニーガールを着用させられた綾桜(ようりん)とセレス。

もちろん考案者は我らがシルヴィアさんである。

感謝感激雨あられ。



「うぅ……せめてハルトさんに望まれたのなら喜んで着ますけど……。こんなのただの羞恥プレイじゃないですかぁ!」

「うむ……。これはちと恥ずかしいな」

「何を言うか。こんなの序の口。ハルトの好みはもっとハードプレイ」

「シルヴィさんシルヴィさん、サラッと人の性癖捻じ曲げるのやめてね?」



薄い胸を張って自慢げに語るシルヴィアさんに、魔王様はツッコまずには居られなかった。





奥さんにエロいコスプレさせる趣味の魔王様……色んな意味で恐ろしいですね。

※なお、最近は奥さん側もノリノリな模様。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

感想等々、何かしらのリアクションをいただけると、作者は大変喜びます。狂喜乱舞です。ぜひともお願いいたします!( ^ω^ )









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