今日も悪の秘密結社は平常運転②
適当に乗っけられたアイテムをガサゴソ漁り、まずソアレが取り出したのは一見普通に見えるサングラスだ。
「サングラスですね」
「ただのサングラスじゃないよ。その名も"全て見抜くぜサングラス"………かけているだけで、相手の弱点を見抜ける優れものさ」
エックス戦闘員達から「おおっ!」と期待の声が上がる。
なるほど、確かに装備するだけで敵の弱点を見抜けるとは、素晴らしいアイテムだ。
ただ、ボスの表情は微妙なままだ。
何故かと言うと。
「………いや、ソアレの発明品って、絶対に何かしらのデメリットあるじゃん?ここまで強いアイテムだと反動も強そうでちょっと……」
「「「ああ………」」」
エックス戦闘員達も納得の表情である。
おそらく過去のあれこれを思い出したのだろう。
しかし、ソアレは心外だと肩をすくめる。
「これに関しては特にデメリットなんて無いよ。強いて言えば、室内でもサングラスをかける痛い人にはなってしまうがね」
「な、なん………だと……………!?」
ボス、衝撃のあまり愕然と呟く。
「う、うちのソアレが、マッドでない普通の発明品を……!?さては偽物だな、貴様!」
「………君とは一度、認識の齟齬を擦り合わせる必要がありそうだ」
非常にマッドな表情でニコリと微笑んだソアレ氏。
慌ててボスは「冗談ですや〜ん」とはぐらかそうとするが、残念ながら逃がしてくれはしないようで、無慈悲にも深夜のお勉強会(意味深)が決定した。
完全に自業自得なため、打ちひしがれるボスは放置したまま新たな発明品の披露会は続く。
「ソアレ様、これは?」
「見ての通りピコピコハンマーさ。どんな馬鹿力で振るっても、威力が九割削減される。これでウルフガールでも楽しくモグラ叩きが出来るよ」
要するに手加減用のアイテムだった。
あと、たぶんウルフちゃんが装備してもモグラの頭は凹む。
「ちなみに色違いのこっちは、何かを叩いた瞬間にごく小規模ではあるが爆発が起こる。まぁ宴会芸で使うようなおもちゃだね」
「それ普通に危なくありません?」
小規模とはいえ爆発が起こる物を、手加減用のアイテムの色違いで出すところに謎の悪意を感じた一号君。
とても微妙な表情だ。
あと宴会芸でそんな危ないもん使うな。
「……ああそれと、小雪ちゃんにプレゼントだ。ボス考案の制御用ネックレスさ」
「はわわっ、ありがとうございますぅ〜!」
氷の結晶を形取ったネックレスを受け取り、小雪ちゃんはキラキラと目を輝かせる。
こちらはボスがさりげなくソアレに発注していた専用装備で、首にかけているだけで吹雪の制御が格段に楽になる。
もちろん本人の鍛錬ありきとは言え、格段に能力の使い勝手が上がるだろう。
何より間接的なボスからのプレゼントなのだ。
大喜びした小雪ちゃんは端っこで現実逃避しているボスの元に走って行き、抱きつくことで感謝を表現する。
当然ながらソアレへの感謝の言葉も忘れない。
なんて良い子なのだろう。
「それと、こっちは───」
まだまだ沢山ある発明品の解説は止まらない。
そこで不意に、積み上げられたそれらのアイテムの一角から、ポロッ……と肌色の球体がこぼれ落ちた。
ボールのように弾力があるのか、数回跳ねたその球体はコロコロと転がり、座り込んだボスの足に当たって止まった。
「………ん?何だこれ」
ボスが肌色の球体を拾う。
手に収まる野球ボール程のサイズだ。
首を傾げていると、ソアレもそれに気付いたらしくちょうど良いと手を叩いた。
「それは緊急時に使うクッション材さ。とてつもないクッション性を持つから、仮に十階建てのビルの屋上から落下しても無傷で助かる。ロックを外してボタンを押せば簡単に膨張するよ」
「ほ〜ん……」
ソアレの提案でこれも試してみることにした。
結構な勢いで膨張するとの事なので、ボス以外はある程度の距離を取った位置で見守ることに。
「……なんか、遠くない?」
「安全のためだよ。何かあってからでは遅いからね」
それはそうなのだが………にしても遠くないか?とボス。
何せ嫌がるミケですら説得して下がらせるくらいだ。
嫌な匂いがプンプンする。
………まぁとは言え、今から試すのは所詮クッションだ。
巨大ロボの自爆のような、洒落にならない被害は心配しなくて良いだろう。
「ええと。ロックを外して、ボタンを押して………投げる!」
動作としては投げると言うよりも"落とす"の方が近かった。
この違いが命取りとなる。
ボスの手から離れ、地面をバウンドした肌色の球体。
衝撃が内部の装置に伝わり、凄まじい速度で膨張した。
「ぐっはぁ!?」
体の前面に強烈な衝撃を喰らったかと思えば、次の瞬間にはボスはお空へとかっ飛んでいた。
ソアレ開発のこのクッション材。
独自製法により他に類を見ない速度での膨張が可能であり、肝心の膨張率も約2500倍と驚異の値。
野球ボール程の大きさの物体が、瞬時に25mプール規模の大きさになるのだ。
その際の速度は半端でなく、もし直撃しようものなら……。
美しい放物線を描いたボスが、そのまま顔面から地面に落下。
ドゴォオオンッ!!と轟音を奏でる。
「ぼっ、ボス様ぁ〜〜!?」
小雪ちゃんの悲鳴じみた叫びがトレーニングルームに響き渡った。
それからしばらくして───。
再びパシュッ……と無機質な音がしてトレーニングルームの扉が開く。
「………どういう状況ですか、これは」
イリスの視線は呆れに満ちていた。
わんわんと泣きじゃくる小雪ちゃんに、頑張って慰めようとする一号君と二号君。
ソアレは軽快な笑みを浮かべており、チェリーちゃんと三号君はその光景を見てドン引き。
ミケに関しては動きからして何やらよからぬ事を企んでいる。
そして彼女らの中央には、無様に床に突き刺さったボスの姿があった。
コンクリートに犬〇家である。
この世界がギャグ作品的なアレでなかったら確実に死んでいる。
……いや、これは果たして生きているのだろうか。
気のせいでなければ、ビクンビクンッと小刻みに痙攣しているような……。
「まったく……」
ロングコートの裾を翻して無様に晒されたボスのケツに、イリスの冷たい視線が突き刺さる。
しかし有事なので、ボスを構うよりも先にやる事があると判断したようだ
カツカツ………と歩み寄ってくるイリスの脇には、新聞が挟まれていた。
不思議そうにソアレは片眉を上げる。
当然ながら秘密結社Xは新聞など取っていない。
理由は単純、金がかかるためである。
秘密結社Xに少しでも無駄にして良い金など無いのだ。
なので、イリスの持つ新聞はどこかでわざわざ買ってきた物ということになる。
「どうしたんだい、いきなり新聞だなんて。珍しいじゃないか」
「……これを見れば、分かるかと」
「?」
頭の上に疑問符を浮かべていたソアレだが、受け取った新聞の大見出しを読んだ途端、全てを理解した。
マッドな微笑みを薄っすらと浮かべ、やれやれと肩をすくめる。
「随分と舐められたものだねぇ」
「少し気になる情報もあります。ソアレ、残りの団員の招集をお願いします」
「はいはい」
普段ならば乗り気にはならないだろうが、今は違った。
少しご機嫌にさえ見える横顔が返って恐ろしい。
ソアレが丸めて持って行った新聞の見出しには、こう書かれていた。
『ヒーロー協会、秘密結社Xに宣戦布告!?』
いやぁ、キナ臭くなってきたんですけどね……。いかんせんボスがギャグ過ぎて。
・「なん……だと………!?」……『BLEACH』より
・犬神家……『犬神家の一族』より
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