壁ドォンッ!!
「……またお前らか」
「今回だけは褒めてくれても良くない!?」
開口一番、苦虫を百匹噛み潰したような顰めっ面でそう言い放ったイナズマに、ボスは涙目で待遇の改善を要求する。
いやまぁ、ヴィランに対するヒーローの物言いなので、何も間違ってはいないのだが。
「………事態を無事に終息させたことに対しては、礼を言おう。だがお前達……どうして雁首揃えてここに居た?」
「いや普通にライブ見に来ただけっすよ。三人で」
「嘘をつけ」
「嘘じゃないですが!?」
何を言っても信じてもらえないボス………なんて哀れなのだろう。
まぁ確かに、別働隊の対処のために影に潜んでいたミケに色々と暗躍してもらったり、アジトから増援を呼んでもらったりした。
だから現状、秘密結社Xの戦力がそれなりにここに揃っていることは事実だ。
しかし、武装集団のように何か良からぬ事を企てていた、という疑いは事実無根である。
まぁそれを疑われても仕方がない、というのがヴィランなのだが。
「……まぁ、今日のところは見逃してやる。本部隊が突入してくる前に退散しろ。ユウキも同行しているからな」
「有益な情報ありがとう今すぐ撤退だ!ハリーアップ!」
イナズマとは違い融通の効かないヒーローが今にも迫っていることを知らされ、ボスは凄まじい手のひら返しで即座の撤退を宣言した。
増援で呼んだメンバー達は既に安全な場所まで退避済だ。
あとは自分達だけである。
「あ、あの……待って……!」
「ん?」
去ろうとしたボスのコートを弱々しい力で掴んだのは、二号君から応急措置をされて何とか動けるようになったルーシィちゃんだった。
ちなみに応急措置に使ったアイテムはソアレさん開発なため、医者がギョッとする速度での現場復帰が可能であろう。
体を引きずるようにしてボスの元に歩み寄ったルーシィちゃん。
首を傾げるボスに対して、何か言おうとしたもののすぐに頬を淡く染めて視線を逸らしてしまう。
………おやぁ?
二号君とイナズマさんは全く同じ嫌な予感が過ぎったらしい。
「あの……その………れ、連絡先……教えて欲しい、な……って………」
「ほえ?」
「えっと、ほら、助けてくれたお礼とか、したいし………」
「いやいや、気にしなくて良いよ。むしろ様子見が長引いたせいで────ぐえっ」
女の子に詰め寄られて困ったなぁ〜、程度しか考えていないであろうお気楽なボスの首を、グイッと引っ張り連行するイナズマさん。
ステージの端っこで放り投げたボスに、足ドン………否、足ドォンッ!!をかまして問い詰める。
「……隠さなくて良い。何をしたか、吐け」
「ええ……」
完全に昭和の取り調べだ。
睨め付ける鋭い視線にすっかり縮こまってしまったボスは、落とされる影と迸る稲妻に怯えつつ、必死に思考を巡らせる。
「な、何をでしょうか……」
「………先程、ルーシィを助け出したのはお前だと言っていたな。吐け、どのような状況だった」
「えっ」
急かされるまま、ボスはありのままを話した。
イナズマは頭を抱えた。
これ、確実に惚れちゃったパターンやん………と。
もちろんイナズマとて男女の仲を妨害したい訳じゃない。
問題は、その男女がヴィラン連合にも所属する大型組織のボスと、世間的に大きな話題性を持つアイドルヒーローだということだ。
もし仮に恋仲に発達し、週刊誌にすっぱ抜かれようものなら………世の中に大きな激震が走るのは決定事項である。
その時のことを考えると胃が痛くなるイナズマさん。
だが同時に閃いた。
むしろ一周回ってくっ付けるべきなのでは?と。
言い方は悪いが、スパイ的な感じをイメージしてもらえれば分かりやすい。
これまで多くの謎に包まれていた秘密結社X及び、運が良ければヴィラン連合の秘密さえ明らかになるかもしれない。
同僚としてルーシィの性格をよく理解していたイナズマは、やると決めた時の彼女の凄まじい行動力を前にそんな現実逃避をする。
果たしてどうなるかは………ルーシィに向き合うボスのあり方次第だ。
「……このままユウキを待つのも、吝かでは無くなってきたな」
「なんで!?」
突然遠い目をし始めたイナズマに、ボスは戸惑いを隠せない。
しかし数ヶ月後、ボスは否応なくイナズマが遠い目をしていた理由を思い知らされることになる。
この話については、また別の機会に。
何だか分からないが、ユウキを始めヒーロー達と鉢合わせるのだけはごめんなので、ボスはすぐさま二号君とテンパライを呼び寄せ、すたこらさっさとその場から退散した。
そんなボスの背中をじっと見つめるルーシィの視線は、確かに恋する乙女のそれだった。
何を言っても信じてもらえないボス、可哀想ですね。
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