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悪の秘密結社は今日も平和です!  作者: ぽんすけ
二章

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ヴィラン連合




───ヴィラン連合。




正義の味方を組織する"ヒーロー協会"なるものがあるように、ヴィラン側にも似たような悪者(ヴィラン)達の集まりがあった。

本来ならば決して相容れないヴィラン達だが、さすがにヒーロー協会という巨大組織を相手に、悪役同士が衝突していては仕方がない。

不可侵という盟約の元、ヒーローVSヴィランという形を保つために、五つの巨大ヴィラン組織が集まったコミュニティ。

それが俗に言う"ヴィラン連合"である。


主に情報交換等を目的とした定例会議が都度行われており、今日もまた秘密裏に設定された会場に、ヴィランの親玉達が集まっていた。

真っ黒の円卓にそろった五つの影。

それなりにお高いと思われる黒塗りの椅子に腰掛けると、ギィ……と優しい感触の背もたれが男の体重を支える。



「──さて。それでは今日も、ヴィラン連合定例会議を始めましょうか」



何枚か束になったプリントを片手に、微笑みながらそう告げた人物。

背もたれに挟まれてうねった薄紫の長髪は絹のように滑らかで、視線を書類に移した黄金の瞳は、まるで100カラットの宝石を砕いて散りばめたかのような、幻想的な煌めきを宿している。

服装はフォーマルなジャケットにパンツ、それとおまけのネックレスが首からぶら下がっており、シンプルながらオシャレな見た目となっていた。

非常に中性的な容姿をしているが、これでもれっきとした男性である。





───"ラプラスの家"筆頭、ラプラス・ラングニル





それが彼の肩書きと名前だ。

ヴィラン連合に所属する五つの組織のうち、最も巨大な勢力を誇る最古参のヴィラン。

そんな彼が主催し、ついにヴィラン連合の定例会議が始まった。



「では早速ですが、情報交換を始めましょう。最初は私から……。この前の一件で世間から大きな注目を浴びた"乱獄會(らんごくかい)"ですが、どうやら無事にヒーロー協会が逮捕。現在は事情聴取に追われているそうです」

「あいつら、数だけは多かったからな……ヒーローさんも大変だねぇ」



ラプラスの右隣で、ヒーローへの同情と共に肩をすくめた男。

彼の言う通り、乱獄會は武器の密輸等で相当儲けていたらしく、組織に属する兵隊の()()()()一丁前だった。

それは彼が率いる最大手の"ヴィラン互助会"に及ばずとも、一般的なヴィラン組織の中ではかなり多い部類に入る。





────"ヴィラン互助会"リーダー、ゼロ





白髪に赤眼という、いかにもな見た目の彼は服装にもしっかりと力を入れており、ファンタジー風の多機能半袖ロングコートからは何の意味があるのか分からないベルトが何本か垂れ下がり、丈部分は何故か左半分だけカット。

指が出るタイプの手袋を装着し、左側の手の甲にはしっかりと魔法陣らしきものが刻まれている。

加えてズボンには、機能性をギリギリ損なわない位置に革製のポケットがベルトで二つ括り付けられていた。

ちなみに中には何も入っていない。

無駄に長い前髪で隠した右目に触れてくつくつと笑うその姿は、なんと言うか、その…………完全に厨二病だった。

彼の頼りになる側近───剛鬼ちゃんは、もはや慣れたものなのか、素知らぬ振りで他組織のボスに湯気の立ち昇る玉露を配っている。



「まぁ、あいつらは僕のテリトリーにも入ろうとしてたみたいだし……改めて、ぶっ飛ばしてくれた九尾には感謝しないとね」



足を組んで全体重を背もたれに預けた傲慢とも思える姿勢で、ゼロは正面に座る存在に不敵な笑みの感謝を伝える。

すかさず「うちの厨二病がすみません」と背後で頭を下げる剛鬼ちゃん。



「……………んぁ?」



一方、唐突にお礼を言われた着物姿の女性は、特徴的な狐耳をピコピコ動かしつつ、頭の上に疑問符を浮かべた。

思い当たる節がない、と言った様子である。

慌てて控えていたライオンの怪人───ライオネル親分が耳打ちする。

それでやっと思い出したのか、女性は退屈そうに左右に揺れながら足を組み替えた。

深いスリットから覗く生脚が実に艶かしい。



「お〜お〜、忘れておった。実につまらん連中じゃったのぅ」



もはや会議そのものにも興味が欠けらも無いらしく、心底つまらなそうな、暇そうな表情で不満を零す。

金糸で模様が描かれた美しい着物に身を包むのは、とてつもない美貌の女性。

絶世の美女、傾国の美女とはまさに彼女のための言葉である。

全開の胸元は豊満な果実に押し退けられ生地が悲鳴を上げており、深いスリットから覗く魅惑の生脚はムッチムチ。

モデルですら素足で逃げ出すような凄まじいプロポーションだ。

若干のクセがある狐色の髪は腰辺りまで伸びていて、同色の狐耳と共に人々を驚かせるのが腰から生えた九つの尻尾だ。

先が白く染まった狐尻尾はとてつもなくモフモフで、一度触れば間違いなく虜になってしまうだろう。

……まぁそもそも、大抵の人は一度すら触らせてもらえないのだが。





───"百鬼夜行"頭領、九尾





最も古く、最も恐ろしい、"妖怪"に分類される正しく()()である。

九尾は尻尾の毛先を弄りながら欠伸混じりに



(わらわ)からの報告はない」



と端的に告げた。

普通なら、協力的とは言えないその姿勢に文句の一つでも出そうなところだが、円卓を囲む面々からは特にそう言った部類の言葉は飛び出なかった。

慣れは偉大だ。

ふんぞり返って玉露を口元に運び、「……ほう、美味いのぅ」「恐縮です」と剛鬼ちゃんと会話を交わしている九尾はさておき。



「じゃあ次はファントム君。お願いします」

「はいよ」



ついに我らが秘密結社Xのボスの番が来た。

意気揚々と用意した書類を読み上げるボス。

前日までにしっかりとイリスと共に準備してきたので、内容だけで言えば比較的まともな物になっていた。



「C地区のヒーローが───」

「ヒーロー協会内部で───」



……が、何の面白味もないのでここでは割愛とする。

さてさて、うちのへっぽこボスは置いておいて、最後に紹介するのはボスの右隣に座った黒髪の男だ。

黒を基調にした、どこぞの貴族を彷彿(ほうふつ)とさせる燕尾服(えんびふく)のようなものは、決して飾っている感じは見せないようシンプルなデザインになっているものの、最低限のアクセサリーや右肩の細いチェーンが彼の男らしさを引き上げている。

加えて羽織った裏地が真紅のマントは高級な素材が使われているようで、王の装備たるにふさわしい格式を見せる。

手袋に刻まれた紋様は、彼が率いる組織を象徴するトレードマークだった。





───"魔王軍"トップ、黒衣の魔王





念のため言っておくが、彼は厨二病ではない。

…………………現在は。



「───俺達からの報告は以上だ。そして、これは完全に余談なんだが……」



魔王が居住まいを正し、いわゆるゲ〇ドウポーズで皆の注目を集める。

僅かな溜めを経て彼の口から紡がれた言葉は、この場に居た約二名の感性を大いに震撼させた。




「ついに巨大ロボが完成した」



「「………な、なん…………だと………!?」」




目を見開いて愕然と反応したのは、うちのボスとゼロであった。

ボスはまるで信じられないと言った様子で恐れ(おのの)き、ゼロは思わずスタンディングオベーションして驚きの深さを示す。

以前、ボス発案でソアレが巨大ロボを開発したのを覚えているだろうか。

あの時は現代化学の限界で存分な稼働時間が見込めず、結局は爆破オチとなってしまった。

しかし魔王様が作り上げたのは、実践でも安定して使えるレベルの巨大ロボだと言うのだ。

興奮収まらぬボスとゼロが魔王様の元に詰め寄り、必死にお願いする。

どうか俺達にもそのロマンを見せてくれと。

魔王様が同志に向ける眼差しは実に力強い。

皆まで言わすな、友よ……と。



「「「………!!」」」



三人は無言で握手を交わした。

男のロマンに言葉は不要。

数日後に巨大ロボの試乗運転会を開催することが決まった。



「……それでは、今日はこれでお開きにしましょうか。九尾さん、お疲れ様です」



男達が熱いロマンを語る中、やるべき事は終わったので主催のラプラスは早々に帰ることにした。

残っていた玉露を飲み干し、わざわざ湯呑みを回収しに来てくれた剛鬼ちゃんに一言お礼を言ってから、部下の女の子を連れて出入口から退散した。


しばらく男達のロマン語りをぼーっと聞いていた九尾であるが、ついに我慢出来なくなったようで不満気な表情で集団の元に歩み寄る。

どうやら詳しくもない話を聞いているだけじゃつまらなかったらしい。

嬉々として己の発想を語るボスの背中に撓垂(しなだ)れ掛かる。



「のぅ、ファントムよ……妾は心底暇じゃ。退屈で死にそうじゃよ。構ってたも〜〜」



ボス、突如として背中に押し付けられた凶悪な柔らかい感触と、人を狂わせる甘ったるい女の匂い。

そして思考とは裏腹に、無性に従いたくなるような魅惑の声を耳元で囁かれるという、即死三コンボを瞬時に叩き込まれ、瞬く間に理性が瀕死の重体に追いやられた。

童貞にはあまりにも刺激が強すぎたのだ。

いつまで経っても慣れることの出来ない九尾の色気に、ボスの仮面の下は沸騰寸前だった。

近くでライオネル親分と世間話をしていたイリスの精神に、ズガァンッ!!と巨大な雷が落ちた。

デフォルトのジト目が無機質な殺意を帯びて九尾とボスに注がれる。



「あ、あのな……構えっつたって、俺は今ロマンの探求で忙しいんだ。やっぱ巨大ロボと言えば可動式ギミックによる変形だろ」



普段ならば多少の葛藤が挟まっただろうが、今は巨大ロボについての議論の熱の方が熱く、かろうじて精神的な話題の修正に成功した。

ところが。



「むぅ。…………ならばお主の言う"ろまん"とやら、妾の()()試してはみぬか?例えば、この絶対領域の先はどうなっておる?乳房を揉んだ感触は?ほぅれ、気になるじゃろう?」

「それは興味があると言わざるを得ない」



なんて己の欲望に忠実なのだろう。

あれだけ男のロマンだ友情だと言っておきながら、即行で色仕掛けに堕ちてしまったボスへ、同胞からブーイングが送られる。



「やかましゃい!夢は掴める時に掴まないと意味ないでしょうが!……まぁ俺が今から掴むのはおっぱぶろすっ!?」



色々とアウトになる前に、雷を帯びた平手打ちで強制的にボスは黙らされた。

凄まじい勢いで空中錐揉(きりも)みするボス。

そのまま壁にめり込んで芸術的な壁画と化した。

焦げた頭部からぷすんぷすん……とくすんだ色の煙が立ち込める。



「あまり誘惑しないでください……()()ボスを」

「……ほう?」



"私の"を極端なまでに強調したイリスの言葉に、九尾は面白そうに口角を上げる。

この小娘、言うようになったのぅ……とでも思っているに違いない。



「………ちっ。恋愛戦争ですか、そうですか。こちとら、言い寄ってくれる女の子の一人すら居ないってのに。ちっ。───で、お前は何なんだよ魔王様よぉ!」



一人やさぐれていたゼロが、キッ!と今度は魔王様に怨嗟の瞳を向ける。

魔王様、きょとんとした様子で膝に座った銀髪蒼眼の女の子の頭をなでなで。

気持ち良さそうに目を細める女の子を見て、ゼロの醜い嫉妬心に火がついた。



「ちくしょう、当て付けか!?モテない僕への当て付けなのか!?」

「シルヴィが可愛すぎてつい。すまんな」

「……イツキが魅力的すぎるのがいけないと思う」



ダメだ、この二人に反省する気が微塵も見られない。

どうやら九尾が甘えているのを見て自分も甘えたくなったらしく、とてとてやって来て魔王様の懐に収まったこの少女。

何を隠そう、"青薔薇姫"と呼ばれる魔王軍のNo.2にして、魔王様を支える最強の正妻……その名も"シルヴィア"さんだ。

もはや似た者夫婦のコントじみた返答に、リア充撲滅委員会会長(自称)は。



「なんだァ?てめェ……」



ゼロ、キレた!!

……しかし当人に現状を覆すような能力は備わっていないため、見せつけるような魔王様と青薔薇姫のイチャイチャを、ただ血涙を流しながら見守ることしか出来ない。

ある意味地獄以上の苦しみである。



「イチャコラしやがってクソが。僕だって女の子とあれやこれやしたいんじゃボケェ……!!」



男の怨嗟は止まらない。

なでなでだけでは飽き足らず、なんか居心地の悪い桃色空間を生成しながら熱い瞳で見つめ合う魔王様と青薔薇姫。

平然とイチャコラちゅっちゅするので、ゼロは唇を噛み切らん勢いの険しい形相で「ころちゅ♡」と殺意を剥き出しにすることしか出来ない。

なんて悲しい生き物なのだろう。



「くそったれめぇ……!剛鬼ちゃん、慰めて!よしよしして!」



現実に絶望し、ゼロが最後に頼ったのは親愛なる側近、剛鬼ちゃんであった。

「うちのリーダーが本当にすみません」と方々に謝罪して回っていた剛鬼ちゃん、やっと一段落着いたという時に無茶振りされ思わず頬が引き攣る。



「自分でやってはどうだろうか?」

「神は俺を見放したっ!」



ゼロは泣いた。

決して大袈裟な表現ではなく、彼にとって唯一にして最後の希望が霧散した瞬間なのだ。

気分は世界の終わりである。

ちなみに剛鬼ちゃんが断った理由として、悪すぎるタイミングの他に、皆の前だと恥ずかしいという乙女の羞恥心が混じっていたことを、彼はまだ知らない。





「ころちゅ♡」はポプテピピックをイメージしていただければと……。



・ゲンドウポーズ……『新世紀エヴァンゲリオン』より、碇ゲンドウのポーズ

・「なんだァ?てめェ……」……『刃牙道』より、愚地独歩のセリフ

・〇〇、キレた!!……『刃牙道』煽り文より




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

誤字脱字報告、感想等やブクマ、評価など、ぜひともよろしくお願いします!!(*^^*)









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