僕の活躍ってまだですかね
テレビ画面に流れていた映像が停止し、しばらくしてザザーッ!と砂嵐に呑まれる。
「───と、こんな感じです」
画面が切り替わり、デフォルメされた顔のパーツがスライドして登場。
画面に映し出された口の動きに合わせて側面から音声が出る。
見た目は少し小さいサイズの家庭用テレビだ。
ところが下部から生えているのは人間の首であり、そこからなだらかな肩に繋がって、しっかりと二足歩行の足まである。
顔面がテレビのヘンテコ怪人。
一言で言えばそんな感じだった。
安っぽいテレビ画面の割に服装はタキシードなので、ビジュアル的な落差が凄まじい。
一瞬だけ某映画前に流れる泥棒のCMを思い出したのは、きっと自分だけでは無いはず。
ちなみに彼の名はビジョン君。
互助会所属のエリートヴィランである。
「なるほどね……。まったく、毎度やる事が回りくどいんだよなぁ、アイツ」
ウンザリしたような顔で口をへの字に曲げる、見るからに厨二病っぽい青年、ゼロ。
傍らで腕を組んで待機していた和服姿の女性も、その凛々しい瞳を細めて主の言葉に首肯する。
「今のを見るに、相当壮大な作戦を立てているようだな。わざわざ安い挑発をしてきたのもそのためだろうか……」
「ま、だろうね。半分はあん時の憂さ晴らしも含まれてそうだけど」
そんな軽率な行動を取るだろうか?
一瞬疑問に思った和服姿の女性───剛鬼であるが、ゼロは確信に近い思いで断言した。
「いや、アイツならするね。大物ぶってるけど案外器は小さいんだよ。……俺も人の事言えないけど……」
高らかに相手を馬鹿にしつつ、ふと己の醜態を思い出して一気に気分が沈んだゼロ。
正直、今回の襲撃イベントでも目立った活躍を出来なかったのだ。
大半を剛鬼ちゃんのフィジカルと数に物を言わせた物量によるゴリ押しで片付けた。
ゼロがやったことと言えば、せいぜい総司令官的な役割くらいか。
悲しい。
本当は魔王みたいな大立ち回りがしたいのに……。
「ま、まぁ、そう落ち込むことはない。我々には我々にしか出来ないことがあるだろう?」
気を遣った剛鬼が慌てたようにフォローを入れる。
それはそう。
それはそうなのだが……。
「三日後……三日後ねぇ……。剛鬼ちゃんは何だと思う?戦力がそろってるならわざわざ日にち跨ぐ必要無くない?」
「……意図的だと?」
「多分ね。まだ確証は無いけど」
余裕ぶってるとか、ラスボス節をかましてるとか。
きっとそういうのじゃない。
どうしても"三日"必要なのだ。
「でもそうなると、じゃあなんで宣戦布告なんかしたんだよって話なんだよなぁ〜……」
そう。
何らかの理由で三日必要ならば、わざわざこんな自ら喧嘩を売るような真似をせず、大人しく身を隠したまま三日間待てば良いだけの話だ。
まさか居ても立ってもいられない小学生男児ではあるまい。
それくらいの忍耐、しようと思えば簡単に出来たはずだ。
それをしなかったのは、わざわざそうせざるを得ない理由があったからだろう。
その"理由"を探らなければならない。
それこそ、先程見た壮大な"作戦"に関与するものなのだから。
「……となると、急いだ方が良さそうだ」
「だね。こいつらいつ始末されるか分からないし」
死屍累々と横たわる覚醒個体達。
役に立たなくなった駒をどう廃棄するか……奴の人道に反したその手口を、ゼロと剛鬼は嫌というほど理解していた。
特にゼロは。
なので、始末される前に早急に情報を抜き取る必要がある。
「じゃ、もうちょっと頼むよ。くれぐれも気を付けてね」
「了解です!」
声をかけられたビジョン君はピシッと敬礼して答えた。
その後、しばらく時間をかけて、倒した覚醒個体から可能な限りの情報を抜き取った。
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