エピローグ
「まさか貴方が命令通り帰ってくるとは……意外ですね」
「おい、喧嘩売ってんのか?」
憮然とした表情で反論するブレン。
体中に残る傷はまだ生々しく、漆黒の外套に隠された体の左側は不自然になだらかだった。
「冗談ですよ。それで、どうでしたか?」
「おう、そりゃあもう最高だったぜ!ありゃ確かにとんでもねぇな……勝てるイメージが湧かねぇよ」
「おや……。貴方にしては随分と弱気な発言ですね」
「"今は"の話だ。俺には強くなれる手段が山のようにあるからな。勝負はこっからだろ」
くつくつとブレンは愉快そうな笑みを浮かべる。
ボスにボコられたというのに、微塵も懲りていないらしい。
むしろ再戦に向けての意気込みも加味すれば、ボスと戦う前よりもさらにテンションが上がっているとも言えよう。
度を過ぎた戦闘狂を萎えさせるのは容易な事ではないようだ。
「それは結構。お貸しした覚醒個体の方はどうでした?」
「あん?まぁ……悪かねぇんじゃないか?少なくとも足止めには使えるレベルだったぜ」
「そうですか……。ま、その程度でしょう。初めから彼らには期待していませんから」
オールバックの男は落胆を隠そうともせずため息をつく。
やはり現状の覚醒個体ではこれが限界のようだ。
仕方ないと言ってしまえばそれまでなのだが、どうしても失望せずには居られない。
「あとよ、撤退の時にあのゴリマッチョの奴……何号だっけかあれ」
「ゴリマッチョ……915号のことでしょうか。彼が何か?」
「そうそう、915号。あいつだけ撤退の時に見当たらなくてな。なんか別に狙いがあったのかと思ってよ」
「……?いえ、特にそのような命令はしていませんが……」
謎の沈黙が二人の間で流れる。
「覚醒個体が勝手な行動を……?まさか、彼らには独立した思考など出来るはずがありません」
オールバックの男はしばらく考えた後、配下の者に調べさせることにした。
彼らは夢にも思わないだろう。
その915号が、狼耳のフィジカルモンスターによってお空の彼方にぶっ飛ばされただなんて……。
「さて……残りの感想戦はアジトに戻ってからにしましょうか。このような場所に長居は無用です」
「おう、そうだな」
オールバックの男は漆黒のマントを翻し、光を拒むかのような濃密な闇に片足を踏み込む。
そこでふと思い出した。
「その片腕……どうするおつもりですか?必要であれば腕の良い技師を紹介しますが……」
「いや、要らねぇよ。しばらくはこれで充分だ」
黒霧を圧縮し、簡易的な義手を作り上げたブレン。
長袖で隠せば少なくとも見た目は元通りだ。
「……それでは、行きましょうか」
二人の男は深い闇に足を踏み入れ、姿を消した。
その場に残るのは怖いくらいの静寂のみだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
感想等々、何かしらのリアクションをいただけると、作者は大変喜びます。狂喜乱舞です。ぜひともお願いいたします!( ^ω^ )




