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悪の秘密結社は今日も平和です!  作者: ぽんすけ
七章

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ウルティマは止まらない



「ぐああああっ……!!」




圧倒的な一撃を受けた漆黒のアニマが地面を転がり、コンクリートの壁に叩き付けられた。

頑丈なはずのコンクリートが粉々に砕け散ると同時に、変身解除されたアニマが膝から崩れ落ちる。

ドサッ……と乾いた余韻を残して、地面に倒れ伏した。

全身ボロボロ。

もはや極限まで傷付いた肉体は言うことを聞かないようで、僅かに体を起こすことすら叶わず浅い息を繰り返している。

そんな彼の元に仲間達が駆けつけた。

神妙な面持ちでアニマに肩を貸し、起き上がらせる。

何やら頬を引っぱたく勢いで熱烈な説教がなされているようだが……。

その光景を、憮然とした表情で眺める男が居た。



「……ふっ、もう驚かないぞ」



黒色のロングコートに仮面を被り、腕を組む怪しい男。

そう、我らが秘密結社Xのボスである。

ここ最近何度も某特撮番組を彷彿とさせる状況に遭遇した影響で、もはや完全に慣れきった反応だった。

コピペ能力で、横長の折りたたみ式テーブルとパイプ椅子を二つ構築。

邪魔にならない場所に設置して腰を下ろした。



「───さて。ここからは"解説"の私、ファントムと」

「"実況"のウルフガールがお送りするですぅ!」



居住まいを正しゲン〇ウポーズでそう口にしたボスに続いて、いつの間にか隣の椅子に座っていたウルフちゃんも、ケモ耳と尻尾を荒ぶらせて参戦する。

ちゃっかりと二人分のマイクまで持ち込んで準備は万端だった。



「それにしてもボスさん、あのアニマを一撃で変身解除に追い込むなんて……相手も中々侮れませんね!」

「ええ。あの鎧武者はおそらく、敵組織の幹部級怪人なのでしょう。闇堕ちフォームすら上回るとなると、対抗する手段は相当限られてきますよ」



うむむ……!と感心したように顎に手を当てるウルフちゃん。

彼女の言う通り、本気を出した鎧武者怪人の力は凄まじかった。

目を向けると、ちょうど白煙の奥からゆっくりとやって来た鎧武者怪人の姿が露わになった。

以前とは違い真っ赤な鎧には禍々しい紋様が浮かび上がっており、兜のねじ曲がった角も心なしか形を歪に変えている気がする。

また例の妖しい錆びた刀に加えて、新たな刀を左手に携えていた。

デザインは鎧に似ていて、鬼のような禍々しい鍔が特徴的だ。



「……お前の力はそんなものか。お前が信じたものとは、そんなにも脆く儚いものなのか?」



鎧武者が渋い声で問う。

敵対心は感じられず、あるのは武人としての確固たる自己のみ。

敵組織幹部としては珍しい立ち位置に居るタイプの怪人らしい。

鎧武者怪人の問いに答えられず項垂れるアニマに、寄り添った三人の仲間達が………特に肩を支える青年が、熱い叱咤の言葉を投げかけている。

ボスは彼に見覚えがあった。

以前、イリスと共にアニマの敗北を見届けた際に助けに来た青年だ。



「二号枠かな?」

「解説のボスさん、"二号枠"って何ですか?」

「説明しよう!二号枠とは、メインヒーローの相棒・ライバルとして活躍する、二人目のヒーローを指す言葉だ!大抵の場合、説明不足などが原因で序盤は主人公と相容れないが、中盤頃には何だかんだ一緒に戦う機会が多くなるぞ!※ちなみに例外もあるよ!」



キメ顔で解説するボス。

特撮オタクの偏った知識を披露する機会がこうして訪れようとは……毎週リアタイしてた当時は思いもしなかった。



「……」



さて、勝手に盛り上がる実況解説席の二人はさておき。

何やら二号枠の青年を含む仲間達からの叱咤を受けたアニマは、しばらく黙って俯いていた。

垂れた前髪が邪魔して表情は伺えない。

けれど、不意に頬が僅かに緩んだように見えた。

ずっと張り詰めていた彼の雰囲気が、すっ……と解けたように感じたのだ。



「───ああ、そうだな」



顔を上げて露わになったアニマの瞳。

そこには光が舞い戻っていた。

危うく失いかけていた希望の光が。



「俺は諦めない。()()()が残したほんの少しの希望を、未来への願いを……絶対に壊させやしない」



決意を胸に、再び鎧武者に向かい合ったアニマ。

砂埃や血にまみれてボロボロな彼のジャケットの下で、何かが暖かな光を帯びた。

徐々に輝きを強めた()()は独りでにアニマの懐から抜け出し、ふわふわと上空へ。

太陽と被る位置で静止して、さらなる強烈な煌めきを放つ。



「これは……」



呆然と見上げる仲間達の懐からも、共鳴するように一筋の光が漏れた。

反応する間もなく、三つの光が宙に浮かぶ輝きの元に集う。

瞬いた光が重なり合うと同時に、一際強く発光。

アニマが差し出した手のひらの上にゆっくりと降りていった。

呆然と手のひらに収まった物体を見つめた後、アニマは悲しみと喜びが入り交じったかのような、言語化の難しい絶妙な表情で笑った。

そして、()()()()()の得意げな顔で決め台詞を吐いた。



「これ以上、お前の好きにはさせない。───さあ、始めようか」



握り締めた虹色のクリスタルを一押し。

今まで見たこともないような美しい光がクリスタルから放たれる。



『"ウルティマ"!!』



随分とまたテンションの高い機械音が聞こえたかと思えば、ブレスレット型の変身アイテムにクリスタルを挿入すると、さらに賑やかな七色の光がアニマの周囲を眩く照らした。

さながら、全てのスポットライトが彼の下に集結しているかのようだ。



「………変身ッ!!」



特徴的な変身ポーズを経て、七色の輝きが渦を巻いてアニマの体を包み込み、その周囲をクリスタルの外郭が覆う。

眩いド派手なエフェクトを撒き散らしてクリスタルが砕ければ、変身完了。

ヒーロー仮面・アニマの新たな姿が白日の元に晒された。



『"ウルティマ・クリスタル"!!』



お祭りのように賑やかな機械音に祝福されたアニマの新形態。

全身を虹色に輝くクリアパーツに覆われており、角度によって様々な色を見せる。

腰マントはラメが散りばめられた銀色と派手な配色をしているが、全身がギラッギラに輝いているせいかそこまで派手には思えない。

肩や頭部から数本の尖ったパーツが飛び出していて、全体的に硬質感のある角張ったパーツが多かった。



「来たーーっ!!これは最終フォーム!?最終フォームの"ウルティマ・クリスタル"だーー!!」

「ほほう、これは……。ちょっと私も手合わせ願いたいですぅ!」



大盛り上がりでマイクを握り叫ぶボスに対して、何故かウルフちゃんは好戦的な笑みで拳を打ち合わせている。

どうやらアニマの醸し出す圧倒的オーラに当てられ、戦闘狂の素質が刺激されたらしい。

ステイ、ステイ。



「なるほど……。それがお前の答えか」



鎧武者怪人はそう呟き、無言で二本の刀を構えた。

仁王立ちするアニマと鎧武者怪人の間で緊迫した空気が流れる。

最初に仕掛けたのは鎧武者怪人の方だった。

猛烈な踏み込みで一気にアニマとの間合いを詰めて刀を振るう。



───ギィイイイインッ!!



甲高い金属音。

激しく火花が散る中、鎧武者怪人は思わず息を呑んだ。

きっと顔があったのなら、あまりの衝撃に目を見開いていただろう。



「馬鹿な……!!」



信じられぬといった様子で、鎧武者怪人はもう片方の刀も振り下ろす。

再度、ギィイインッ!!と甲高い金属音が響いた。



「無駄だ」



きっぱりと断言するアニマ。

彼は仁王立ちしたままだった。

その代わりに、アニマの体から少し離れた位置に虹色の宝石が構築されていた。

それは的確に刀の攻撃を防いでおり、表面には傷一つ付いていなかった。

鎧武者怪人がとてつもない速度で次々と攻撃を繰り出すが、その全てをアニマはピンポイントに宝石を構築し防御する。

一度たりとて、鎧武者怪人は虹色の宝石を砕くことが出来なかった。



「はあっ!」



アニマが繰り出したシンプルな打撃が鎧武者怪人の胸を打ち、大いに後退させる。

よく見ると突き出した拳に虹色の宝石を纏っており、あれが威力の上昇に貢献したようだ。

胸を貫いた凄まじい衝撃に、鎧武者怪人は思わず悶絶。

危うく刀を取りこぼしそうになった。



「ぐっ……!これがお前の真の力か……!」



鎧武者怪人が両手の刀を振り払うと、全身から凄まじいオーラが湯水のように溢れ出した。

禍々しくうねったオーラは二本の刀に集束し、ビリビリと大気を揺るがす壮絶な圧迫感を撒き散らす。



「───いざ、勝負ッ!!」



腰を低く下ろし構えた鎧武者怪人が、一歩踏み込んだ。

同時にアニマも駆け出す。



「はああっ!!」

「ぬぅん!!」



助走を付けて繰り出した拳と刀が衝突。

パワーは互角だった。

巧みに拳を受け流した鎧武者怪人が反対の手に握った刀を振るうが、アニマは虹色の宝石を構築しそれを防御。

再度、拳を突き出す。

鎧武者怪人は体を捻ることで回避。

しかし首を狙った斬撃はまたしても虹色の宝石に防がれ、甲高い金属音を奏でるだけに終わった。

直後、鎧武者怪人の腹部をとてつもない衝撃が穿つ。



「がはぁっ……!?」



その威力は、殴り飛ばされた鎧武者怪人が片膝を付く程だ。

顔を上げた鎧武者怪人が目撃したのは、アニマの拳を覆うようにして燃え上がった紅蓮の炎だった。

脳がそれを認識すると同時に、アニマの姿が掻き消える。

鎧武者怪人に体勢を立て直す余裕すら与えず、背後からまたあの重々しい打撃が襲いかかってきた。



「むっ……!」



千鳥足で前方に数歩進むと、今度は一瞬だけ目の前に現れたアニマの蹴りが顔面にヒット。

よろけた先でまたパンチの繰り返しで、アニマは次々と目にも止まらぬ超スピードの打撃を叩き込む。

その速度は鎧武者怪人ではほとんど捉えきれないレベルだった。



「はっ!!」



振り払った刀が空振ったタイミングで懐に潜り込み、手のひらを鎧に密着させる。

放たれたのはエメラルドグリーンの衝撃波だ。

発勁のようなイメージが一番しっくりくるだろうか。

体を貫通した重い衝撃波に鎧武者怪人の体はくの字に折れ曲がり、勢いよく弾き飛ばされた。



「ぬおおぅっ……!?」



コンクリートの壁をいくつもぶち破り、鎧武者怪人は膝から崩れ落ちる。

先刻とは真反対の構図だ。

しかしピンチであるにも関わらず、鎧武者怪人は心なしか笑っているように見えた。



「むむっ、あの姿のアニマは色んな力を使いますね……。解説のボスさん、あれは一体?」

「はい。おそらくアニマのウルティマ・クリスタルはいわゆる、"てんこ盛りフォーム"と呼ばれるものだと思われます。今まで手に入れた能力を全乗せしたってことですね」

「なるほど!だからあんなに色んな力を……ますます腕がなるですぅ!」



鎧武者怪人は刀を杖代わりにして立ち上がると、二本の刀を天に掲げた。

そしてゆっくりと……しかし流麗な動きでそれぞれ半月を描きつつ、エネルギーを凝縮させて構える。

今までよりもさらに圧迫感のある構え。

おそらく次の一撃に全てをかけるつもりなのだろう。

相対するアニマもまた、変身アイテムを何度もタップし右足に虹色のエネルギーを集束させる。

構えた二人の間を風が吹き抜け、緊迫した空気が重々しくのしかかる。



「お前とこうして戦えたこと……我が生涯の誇りとなろう。……せめてもの報いとして、この一撃で完膚なきまでに砕いてみせよう」

「そうはさせない。この世界は、俺が守る」



空気が変わった。

………来るッ。

外野の全員がそう思った瞬間、アニマが駆け出し勢いよく跳躍した。

天高くまで舞い上がり、抱え込んだ右脚を蹴り出して飛び蹴りのポーズに。

渦巻いた虹色のエネルギーが、ド派手なエフェクトを伴って四方八方に撒き散らされる。



「はあああっ……!!」



一方、渾身の力で刀を握り締めた鎧武者怪人。

禍々しい真っ赤なエネルギーを喰らい歪に変化した二本の刀を、完璧なタイミングで同時に振り払う。



「ぬおおおおっ……!!」



虹色と赤のエネルギーを伴って繰り出された蹴りと斬撃が、激しく衝突した。

凄まじい火花と余波を撒き散らしながら、双方一歩も譲らずせめぎ合う。



「あああああッ!!」

「おおおおおッ!!」



空間が軋み、大地が悲鳴を上げる。

想像を絶する力のぶつかり合い。

制したのは、アニマであった。



「ッ、はあっ!!」



刀が折れた。

同時にズンッ!!と重い衝撃が鎧武者怪人の胸を穿つ。

両者はすれ違い、ガリガリと地面を削ってアニマが着地。

片膝をついた状態で荒い息を繰り返し肩を揺らす。



「……見事、なり……」



最後にそう言い残し、鎧武者怪人がゆっくりと倒れる。

その最中にド派手に爆散。

猛烈な業火がアニマの勝利を祝福するかのように立ち昇った。





ちなみにウルティマ・クリスタルの能力である"虹色の宝石"は、「変身者の心が折れない限り砕けない」という特性を持っています。最強フォームらしく破格の性能ですね。



・ゲンドウポーズ………『新世紀エヴァンゲリオン』より




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

感想等々、何かしらのリアクションをいただけると、作者は大変喜びます。狂喜乱舞です。ぜひともお願いいたします!( ^ω^ )









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