15話 おねしょ
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まだ薄暗い早朝の時間帯、目が覚めました。
なんだか悪い夢を見ていた気がしますが、内容は思い出せません。悪夢あるあるです。そう、よくあること。
動悸がします。動悸というのは、胸がドキドキするというのが語源ですと言えば右隣で寝ている美紅あたりは信じてくれそうですが、彼女はそもそも動悸という言葉の意味を知らないかもしれません。
「――ふぅっ、ふぅ……」
意識して深く呼吸をします。
「ふぅ、ふぅ……お母さん……っ……」
お母さんのことを思い浮かべて気持ちを落ち着かせようとしていると、不意に左手が誰かに握られました。誰かというか、左隣で寝ている椛以外にはあり得ないのですが。
「怖い夢でも見たか?」
小六にもなって悪夢を見てお母さーん!となっている自分を見られたことに羞恥心が込み上げてきますが、椛にからかう素振りはなく、本気で心配してくれているようでした。
「はい、思わずおねしょしてしまうほどに」
「はぁ!?」
私の言葉に美紅が飛び起きました。
起きてたんかい、ワレ。
美紅は大慌てで布団を剥ぎ取って、私の股下が濡れてないことを確認すると、安堵とも呆れとも取れるため息を吐きました。
「冗談ですやん。寒いから布団戻してくださいよ」
「あんたのおねしょには説得力があるのよ! 去年までしてたんだから!」
「いや去年はもうしてませんよ! 一昨年までですよ!」
「してたわよ! あんた、あたしらの去年の誕生日におねしょしたじゃない!」
「ふぁぁ……もう、そんなのどうでもいいよ。てか、まだ四時だよ。寝直すぞー」
私と美紅のおねしょ論争は椛のあくびによって中断されました。
美紅はぷんぷんしながら布団を戻して、再び横になりました。
「ふん、また怖い夢見ておねしょされたら困るから、あたしも手繋いでてあげるわ」
右手が美紅の左手と繋がれます。
「そりゃ名案だ」
先ほどから私の手を握ったままの椛も同調します。
これではまるで、二人に捕まった宇宙人のようです。
不服ですが、二人の手はあったかくて、すぐに心地いい眠気がやってきました。
ああ、これならきっと、良い夢が見れそうです。




