3 -罪と決意-
元々あった3話以降を一話ずらし、この話を差し込んでいます。
大きく飛ばしたカノンの少年編です。
森での惨劇から、カノンは夢を見る。
黒い玉座、無数の死体、焼けたような空、剣を握りしめる父。
そして、玉座に座る自分。
『もっとだ。』
笑い声の混じった声で、誰かが呼びかける。
★ ★ ★
あれから数日。
カノンは外に出れずにいた。
思い出す、ミオの最後。
その夜見た、両親の深刻そうな顔。
勇者の子だから、ミオとこっそり遊ばなければ。
そう思わずにはいられなかった。
「俺に、ミオを守る力があったら・・・」
思わずつぶやいた時、部屋の扉が開いた。
「カノン。」
エルドが立っていた。
「お前は優しい子だ。守れなかったって考えてるんじゃないかと思ってな。」
エルドは続ける。
「後悔しても、ミオは帰ってこない。お前たちを襲った魔獣も、今後襲われたときも。
だから、強くなれ。皆を守れるように、いつか俺と同じように魔王を倒せるように。」
その言葉を聞いて、カノンは顔を上げた。
そうだ、戦う力をつければいい。
一番つよい勇者が、目の前にいるじゃないか。
「うん、俺、頑張るよ・・・ミオの分も、これから先のためにも!」
その日から、剣と魔法両方の訓練が始まった。
訓練になると、父は厳しかった。
エルドの見本を見せてもらい真似をする。
基礎の素振り、振るときの角度、足の運び・・・
剣を振り下ろした時、エルドは唐突に聞いてきた。
「剣を振るとき、カノンは何を見て振っている?」
「森でみた黒狼だよ、向かってきたときを思い出してた・・・」
その言葉に、エルドは納得したように言う。
「お前の剣筋は斬るより叩くに近い。剣を力いっぱい振り下ろしてるようにしか見えないんだ。
確かに、魔獣が襲い掛かってきたときは力任せに叩くこともあるが、剣は棒じゃない。」
そういって、エルドは水球を浮かべた。
「この球を黒狼だと思って切ってみろ。」
水球はそのまま弧を描くようにカノンに飛んできた。
それはまるで、黒狼がとびかかってくるときと同じように。
バシャッ!
斬った水球は音を立てて弾けた。
「うわっ!」
弾けた水が体中にかかる。
びしょびしょになったカノンに、エルドは言う。
「叩くイメージで剣を振るとそうなる。そんな振り方だとすぐ刃が折れてしまうぞ。
斬るときは刃を滑らせるように、そこにあるものの重さを利用して斬るんだ。こんな風にな。」
そういって、エルドは自分に向かって水球を移動させる。
同じように弧を描いてエルドに向かっていった水球は、エルドの刃に触れた後真っ二つに割れた。
割れた水球はエルドの左右に分かれて地面に落ちる。
「武器を扱うときは自分の腕の延長だと思え。手刀で斬るように、当たる瞬間をしっかり見極めろ。」
剣の鍛錬を終え、魔法の練習に取り掛かる。
魔法は体内の魔力をイメージした属性の物に変えて放つ。
色々な属性の魔法を飛ばしたが、一番よく出来たのは火だった。
火属性の初歩、ファイアボールを放つと他の属性ではこぶし大の大きさだったのに対し火だけは顔より大きいのが撃てた。
もっと大きく、もっと強く。そう思って火の魔法に魔力を込める。
一回り大きくなったところで、魔力が大きく膨れるのを感じた。
「まて、それ以上は撃たなくていい!」
「え?」
エルドはファイアボールを大きくしようとしたカノンを止めた。
そして、水球をぶつけて火を消した。
水蒸気と軽い衝撃に、思わず倒れ込む。
「全属性扱えるのは、勇者の血を引いているお前ならできるんじゃないかと薄々感じていた。
得意なのは火だな、ただそれ以上魔力を込めようとするな。」
そういって、カノンに手を貸して立ち上げる。
「お前はたぶん魔力が多い。ただ魔力が多すぎてコントロールできなければ爆発する。」
爆発。
その言葉を聞いて、思い出す。
焼け焦げた木々、真っ黒のミオ。
「あ、あぁ、おれ、もしかして、ミオを・・・」
動揺したカノンを、エルドは抱きとめる。
「落ち着け。確かに森の木は燃えていた。だがお前の魔力じゃなかった。別の魔力残留があった。
お前のせいじゃない、大丈夫だ、落ち着け。」
震えるカノンに言い聞かせるように、優しい父親の声で語りかけながら背中を撫でた。
震えが収まったとき、体の力がフッと抜けた気がした。
「魔力を急に使いすぎたな。今日はこの辺で終わりにしようか。」
「はい・・・」
返事をした時、眠気に襲われて目を閉じた。
父に持ち上げられる感覚とともに、父の声が遠ざかりながらも耳に入ってきた。
「やはり、封印がよわい・・・」
★ ★ ★
季節は巡り、15歳になったある日の事。
大分剣筋も整ってきた。
魔法をある程度出しても魔力切れを起こさないようにコントロールできるようになり、火魔法は複数展開できるまでに成長した。
順調に成長していっているカノンの元に、教会から魔王復活の凶兆があると発表があった。
各地で村が消え、魔獣が増加し、空が暗くなる日が増え始めた。
王国から勇者である父に要請があったようだが、教会は息子であるカノンを呼び寄せた。
王都へ向かう日、父エルドはカノンに剣を渡した。
白銀の剣だ。かつて魔王を討ち取った勇者の剣。
「いってこい。お前が次の勇者になるんだ。」
エルドはそういった。
受け取ろうとした時、エルドは剣を離そうとしなかった。
神妙な顔で父は言う。
「俺は、母さんはお前を信じてる。」
どんな思いが込められているのか、読み取ることはできなかったが俺は頷いた。
しかし、父の目の奥には覚悟がしっかりとあったように見えた。
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