22 -ぼっち勇者と不思議な宿-
「ぶっ、あっはははは!お前そんなことも知らないのかよ!いや、いひひひ、やっぱおもれぇ!」
レオハルトがものすごい勢いで笑い出した。
いや、そこまで笑わなくてもいいんじゃないか?
カノンがそう思っていると、セインとクラリスが肩を震わせているのが目に入った。
貴族の家の二人だ、もしかしたら怒っているのかもしれない。
そう思っていると、国王が話し出した。
「ふふ、フハハハ!やはり勇者は面白いのう!先代にも同じようなことを言われたわ。国王なのに名乗らないのか!とな。」
そういって、国王は続ける。
「代々、国王に付きし時に名前を神に献上するのがしきたりでな。つまり我は国王であって名前はない。」
そんな説明に、やっと顔を上げたセインがにこやかに笑いながら補足する。
「その昔、名前を知った対象を殺す呪術があってね。その対策としての名残が今でも王に引き継がれているんだよ。もちろん、昔の話だから今は研究されてすぐに解呪されるから問題はないんだけれども。」
聞いたことも無かった。
名前がトリガーになる魔法?確かに、そんなものがあったらまず名前を隠すのが第一になるだろう。
それが現在でも慣例になっていると・・・
「じゃあ、国王は国王と呼べばいいのか?」
「そう呼んでくれて構わぬよ。」
カノンの問いに、国王はしっかりと頷いた。
★ ★ ★
国王への報告はその後何事もなく終わった。
例の黒衣の男たちについては今後国でも調査を行う形で決まり、その後何か分かれば報告の時に改めて教えてくれるという。
城を後にした一行は一旦解散となった。
セインやクラリスは家への報告があるといい、フィナは教会へ行くという。
レオハルトは魔法団へ顔を出してくるというので、カノンは一人行く当てもなく王都に取り残されたのだった。
「って、俺今日泊まる宿もねぇじゃん。どうしよう・・・」
一応、今回の討伐依頼に瘴気魔獣の討伐込みで報酬はもらっている。
財政管理はフィナがやってくれるというので、いったんそのまま出てきてしまったがそもそも肝心のお金は何ももらっていなかった。
一応、王都ルクスフィールに来るときにエルドから渡された金があるため何とかなると思うが一人王都で何かしようにも何も知らなければ何もできない。
「う~ん、とりあえず腹減ったし何か食いながら宿を探すか・・・」
そういって城下町を歩き出した。
大通りは人が多く、慣れないカノンは人に酔いそうだったため少しわき道に入ってみることにした。
家や店の隙間、路地のようになっている場所をのんびり歩いていると一つの看板が目についた。
<路地宿・カマンベール>
わざわざ路地に看板を出している不思議な宿に、思わず好奇心がうずいてしまいそのまま入ってみることにした。
扉を開けると、チリンチリンとベルが鳴る。
「あらいらっしゃい~!こんな場所にわざわざ来るなんて、あんたも物好きねぇ。」
話しかけてきたのはきれいな顔立ちの人だった。
綺麗なブロンドヘアーをカールさせ、真っ赤な口紅を塗り直したハスキー声の女性がこちらに気づいて話しかけてきた。
「そんなところで突っ立ってないの。ほらほら、こちらにいらっしゃい~。」
言われるがままに受付カウンターであろう場所に立つその女性のもとへカノンは向かった。
目の前に立ったその女性を見て、カノンは驚いた。
カノンは一般男性ほどの身長に対し、この女性は背が高かった。
180センチはあろうその背の高さと、鍛えられているであろうしっかりした体格。
そして響くハスキーな声。
「驚いたわね、勇者様じゃないの!まぁ素敵!」
・・・明らかに男だった。
遠目に見れば高貴な女性に見えるのに、近づくと分かる男性の体。
もしかしてやばい店に入ったんじゃなかろうか。
そう思いカノンは宿を出ようとする。
「あ、すみません。来るところを間違えました。失礼しま・・・」
「ちょちょ、ちょっと待ちなさいよ!いかがわしいお店じゃないの!宿よ宿!泊まりたいんじゃなくって!?」
がっちりした腕につかまれ、カノンは全く動けなかった。
勇者であるカノンは人より強くなるために父エルドにかなりしごかれたため、力に自信はあったがそれでも全く動かないのだ。
カノンはある程度抵抗したが力でかなわず、どうしようか悩んでいると奥から新しく人が出てきた。
「まぁまぁその辺にしといてあげなよ。せっかく来てくれたんだから。うんうん。」
奥から出てきたのは黒髪の少年だった。
カノンは15歳だが、同じぐらいの年齢だろうその少年の声に女性は手を離した。
「うちの受付嬢が悪いことをしたね。僕はポップ。ここの宿を経営してるんだ。彼女は受付嬢のネオン。」
ポップさんに紹介されて、着ているスカートの裾をゆったりと持ち上げて挨拶する。
「受付のネオンと申します。この度は宿カマンベールへお越しいただき有難うございます。」
先ほどとは打って変わり、とても洗礼された美しい動きでのあいさつにカノンは思わず立ち尽くしたのだった。
オカマキャラっていいですよね。好物です。
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