20 -帰還-
ミナの無事を確認し、追撃や増援がの気配もないことを確認したカノン達は一度トーマ達を村へ帰すことにした。
トーマもユウトも、勇者パーティの戦闘を間近で見れて嬉しそうだった。
だが何よりも、ミナが無事で助かったことが一番嬉しかったらしい。
村へ戻ると、トーマやユウトの両親を呼んでもらった。
元気そうな二人を見て、各々の両親は大変喜ぶのと同時にものすごく怒った。
「ミナちゃんが居なくなって、あなた達までどこか行ったって聞いて本当に心配したんだぞ!本当に!ほんとうに・・・無事でよかった・・・」
「勇者様、この度はうちのバカな息子を守ってくださり本当に有難うございます・・・!」
涙ながらにお礼を言うトーマ達の両親に、カノンはエルドやセレナを見た気がした。
きっと、ミオと二人で森に言ったあの日。
あの時、きっとあの二人も同じ思いだったのかもしれない。
子どもを想い、無事を祈り、帰ってきた時。
逆に、戻ってこなかったミオの父親の怒り。
心に刺さっていたトゲの痛みが、蝕んでいた思い出がキュッと心臓を締め付けた。
素直に喜びたいが、あの時ミオを助けられたらと思う気持ちは無くならない。
そんな風に思い悩んでいると、カノンの代わりにセインが口を開いた。
「この国の民を救うのは勇者パーティとして、騎士として当然の事。みんなが無事で何よりです。」
そういって、セインはカノンを一度見てもう一度トーマ達の両親へ向き直る。
「我々が助けたのと同じように、トーマくんたちがミナちゃんを助けようとしたのもまた同じ。
きっと、勇気をもって探してくれたんだと思います。だからあまり責めてあげないようにしてあげてください。きっと、その勇気が彼らを強くしてくれるはずだから。なぁ?カノン。」
セインはカノンへ話を振った。
そうだ、ミオを助けられなったあの日。ミオは勇気を出してカノンを逃がした。
勇気があるから、トーマ達はミナを助けに探しに出たのだ。
勇気があるものが、きっと誰かを助けれる。
皆の勇気、希望。そんな感情がカノンの中に流れ込む。
温かなその感情はまた一歩、カノンを勇者にしていく。
「あぁ。二人も、ミナもリサも。そして村の皆も勇気をもって立ち向かえるからこそ強くなれる。
だから、その勇気を今は称えて褒めてあげてください。皆無事帰ってこれたんだから。」
「勇者様、この度は本当に・・・」
「我々への感謝は十分受け取りましたよ。さぁ、子供たちのところへ行ってあげてください。」
そういって、トーマ達の方へ視線を向けるセイン。
セインの目線の先には、無事戻ってきたと聞いて、リサも駆け付けたらしいリサが泣きながらユウトの胸を叩き、それを見て笑うトーマが居た。
こちらに改めて頭を下げた後、無事帰ってきた子供を抱きしめる二人の両親。
そんな光景に、あの時無言で抱きしめてくれたエルドを思い出すのだった。
★ ★ ★
勇者たちが村へ送り届けている時、瘴気魔獣との戦闘場所に一人の男が居た。
「計画通り、しっかりとその身を捧げたのですね。その勇気に、きっと神もお喜びになりますよ。」
裂けるのではないかと思うほど、口角を上げてニヤりと笑うその男は瘴気魔獣の遺体へ手を入れた。
ぐじゅり。と肉に手が埋まり汚れるのを気にせず男は肉体をまさぐる。
そして、血で赤く汚れた玉を引き抜いた。
「中身が空に成るほど吸い込まれているとは、僥倖僥倖・・・」
男は血をふき取った後、懐にその玉をしまい込みその場を後にする。
「また、近いうちにしっかりと育ってもらいますよ。楽しみですねぇ・・・」
森の中へ消えていく男の一人事は、誰の耳にも聞こえることはなかった。
★ ★ ★
夜が明け、調査団たちと改めて報告会が行われた。
メンバーは先日同様テリー達と勇者たち、そして村長と若い男だった。
「この度はこの村を助けていただき有難うございます。改めて、お礼申し上げます。」
深く頭を下げる村長たちに、テリーはしっかりと受け答えをする。
「いえいえ、森からくる魔獣は数も少なかったですし我々はたまたま調査に来ていただけです。
それより、新たな瘴気魔獣の発生と大量の魔獣の侵入を防いだ勇者様に今は感謝を。」
そういって、テリーもこちらへ頭を下げる。
「なに、それはお互い様だよ。そっちが対応してくれなきゃ村に被害が出てたんだ。助かったよ。」
「しかし、我々では瘴気魔獣まで抑え込むのは不可能でしょう。やはり勇者様はあの勇者の息子というだけある、ということです。」
テリーの言葉に、カノンは少し誇りに思った。
エルドの息子として、勇者としてちゃんと強くなっていると思えた。
「ところで、不審な者が瘴気魔獣を操っていたという報告を受けたのですが詳細をお聞かせいただいても?」
「あぁ、それについても話そうと思っていたんだ。」
クラリスが戦闘での内容、状況を一通り説明する。
黒衣の男たち、ミナを体内に取り込んだ瘴気魔獣、そして多くの魔獣を率いていたこと。
その内容を話すうちに、テリーは表情を段々としかめていった。
「魔獣を操る、ですか。それに瘴気魔獣も・・・。聞いたことがありませんね・・・。」
「我々勇者パーティは、この内容を纏めて王国に報告しに戻る予定だ。引き続き、現地の調査はそちらに任せたいが問題ないか?」
クラリスがそういうと、テリーはしっかりと頷いた。
「お任せください。私も少々気になるところもありますので調査団をあげてしっかりと調査することにしましょう。」
そうして、その後の細かい調整をしたのちに報告会は解散となった。
そして次の日、勇者パーティは報告の為一度王国へ戻ることになったのだ。
「勇者さま、この度は本当にありがとうございました!またこの村へ来る時はぜひ歓迎させてください!」
「勇者さま~!また剣をおしえてよ~!セイン様もクラリス様も!」
村長やトーマ達に見送られ、勇者一行が出発しようとした時突然目の前に飛んでくる二つの影があった。
思わず剣を構えるカノン達を、レオハルトが静止させる。
目の前に現れたのは空を飛んできたリサと花を持ったミナだった。
「間に合ったわ!」
誇らしげに胸を張るリサ。
「間に合ったじゃねぇ!飛行魔術は危ないからちゃんと練習しろっていっただろ!」
「でも、できたわ!けがもなかったわよ!」
そんな自慢気なリサに、レオハルトは頭を抱えていた。
そんな中、ミナはフィナに向かい花を差し出した。
「こ、これ、助けてくださってありがとうございました。聖女さま・・・」
差し出されたのは小さな白い花をいくつも集めた小さな花束だった。
「これは・・・ありがとうございます。あなたの祈りに幸有らんことを。」
ミナから渡された花を大事に受け取り、祈りを捧げる。
聖女であるフィナの祈りを真似をして、ミナも祈る。
あわてて駆け付けた村長に二人は引き取られ、今度こそ勇者一行は出発した。
「魔法学校卒業したら、絶対会いに行くんだから!覚えてなさいよね!」
リサのそんな声を背中に受けて、レオハルトはひらひらと手を振りながら馬車は王国へ戻っていくのであった。
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