16 -小さな勇気と大きな悪意-
だいぶ経ってしまいましたが、更新です。
「誰だ!」
セインが音のした方へ振り向き、呼びかける。
少しすると、バツの悪そうな顔のトーマとユウトが出てきた。
「ごめんなさい・・・」
「でも、ミナが!ミナがいないんだよ!帰ってこないんだ!!!」
トーマが必死に訴えかけてきた。
「ミナがいない?どういうことだ・・・まさかっ!」
セインが黒衣の男たちの方へ振り向く。
黒衣の男たちは動いていなかった。まるでこの状況をしっかりと観察しているかのように。
しかし、隣の瘴気魔獣には違和感があった。
巨大化した蛇のようなその瘴気魔獣は、腹部が不自然に一部膨らんでいた。
まるで、何かを飲み込んだかのように。
まるで、人を・・・
「おぉ、お気づきになられましたか勇者よ!我らが捧げるこの供物を!」
やめろ、それ以上は聞きたくない。
カノンは耳をふさぎたかった。否定してほしかった。
しかし、残酷で卑劣な言葉はそんなカノンの思いをいとも簡単に裏切った。
「こちらは村の子供を魔獣に食わせ、より絶望を増した一品!純粋な子供は染まるのが早く実によい捧げものになられたのです!!」
「我らより捧げし至高の供物、お気に召しましたでしょうか!」
「勇者様!どうぞお受け取り下さい!」
ぐじゅり、と胸の奥になにかがあふれてきた。
ドス黒く、気持ちの悪い何かが。
視界がだんだん赤くなっていく。しかし、その分力が妙に溢れてくる。
さっき戦闘で感じた、あの高揚感。湧き出る力。
怒りなのか、憎しみなのかわからない感情が膨れ上がると、その分大きくなる力。
黒い瘴気魔獣、赤い視界。
混ざる、過去の記憶。
「....にげ、ろ...カノ..」
また、繰り返す。
目の前で起こる、逃れられない現実が深く突き刺さる。
意識が、どす黒い感情に飲み込まれていく・・・
「カノンさん!ミナちゃんはまだ生きています!」
フィナの言葉に、沈みかけた意識が晴れた。
「ミナちゃんの祈りが聞こえます!きっとまだ救えます!」
その顔は、しっかりとした目でこちらを見ていた。
「・・・本当なんだな、ミナはまだ生きてるんだな・・?」
「はい!ミナちゃんの祈りがしっかり聞こえます!カノンさんなら、必ず・・・!」
カノンの問いにフィナはしっかりと頷いた。
「なら話は早ぇ、あいつらぶっ倒してミナを救い出せばいいんだろ!」
「あぁ、絶対に助けるぞ!」
レオハルト、セインが続く。
「勇者さま・・・」
ユウトは不安そうにこちらを見る。
あぁ、そうだ。勇者がこんなところで挫けちゃだめだ。
俺は勇者だ。そして、先代勇者のエルドの息子だ。
守れなかったミオの分まで、この子たちを守るんだ。
「大丈夫だ。」
そういって、カノンはユウトの頭を撫でた。
「言っただろ、勇者は仲間たちとどんどん強くなるって。だからお前たちは安心していろ。」
「・・・うん!」
ユウトは頷き、不安そうだった顔は期待の顔へと変わっていった。
その状況を見て、クラリスが続ける。
「村へ帰そうにも、この状況じゃ危ない。もし他に魔獣が居て回り込まれる可能性もある。
だから私が二人を護衛する、あの瘴気魔獣は任せたぞ!」
そういって、クラリスにユウトとトーマの護衛を任せ俺たちは瘴気魔獣へ向かい合った。
「おぉ、なんと感動的だ!それでこそ器の子!それでこそ勇者!希望の中にこそ絶望が映える!」
「きっとこの供物も喜んで下さる!さぁ!お受け取り下さい!」
「ゆけ!勇者様へその身を捧げるのだ!」
黒衣の男たちは瘴気魔獣をこちらに差し向ける。
瘴気魔獣は甲高い声を上げ、こちらに突進してきた。
ユウトたちに近づけないためにも、カノン達は瘴気魔獣へと走り出した。
次回、戦闘です。
出来る限り毎日更新できるよう、頑張ります。
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