12 -レオハルトの過去-
レオハルト編、少し長めです。
レオハルトはリサに様々な魔法を見せていた。
「火の魔法ってのはただ火を出すだけじゃなくってな、こうやって水を出した後その熱を操作することで・・・ほらな!」
右手から水を出した後、その水が徐々に凍り付いていく過程を見てリサの顔はどんどん輝いていった。
「すごい!すごいわ!えぇっと、水をだして熱を奪う・・・」
見よう見まねでリサは水を出した。
しかし、水は凍らずそのまま流れるだけだった。
「なかなか難しいだろ~?氷ってのは最初から氷を出すのに皆苦労するんだ。だって氷を出す魔術ってのは存在しないからな。そこで開発されたのが出した水を瞬時に凍らせて氷魔法にする方法なんだ。」
「でも水を凍らせるのも難しいわ!」
「そうなんだよなぁ、そこで火属性の魔法使いたちは考えた。火を出せるなら熱を止めることもできるんじゃないかってな!」
そういいながら、レオハルトは掌に火を灯した。
その上にに水魔法で水球を作りだすと、水はだんだんと沸騰していった。
「こうやって、熱があるものの近くにあると水は温かくなる。じゃあこの火を消したら?」
「水は冷めるわ!」
「そう!火がなくなると周りの空気の方が冷たいから冷えていくよな~。つまり、水にたいして熱がない魔力で冷やしてやると・・・」
「あ!だんだん凍っていったわ!」
「これが氷魔法のやり方だ。これを覚えるのに皆苦労するんだぜ~、俺は13歳でやっと・・・・」
自慢げに話しているレオハルトは、言い終わる前に目の前の光景に絶句した。
リサが手から水を出したと思ったらそのまま水を氷漬けにしたのだ。
「できたわ!やり方がわかれば簡単なのね!」
「・・・」
レオハルトが氷魔法を覚えたのは13歳。たしかにやり方を覚えたらすぐにできたがある程度練習して初めて使えるようになったのだ。
魔法団の試験は魔力や魔法操作等いろいろな項目があり、12歳で試験を突破したレオハルトですら2日かかったのだ。それをこの子は見た瞬間に理解して会得した。
「す、すげぇ!リサ!魔法の才能が半端じゃねぇ!じゃあこれはどうだ?火魔法の中に土魔法で鉱石を出すとこうやって色が・・・」
レオハルトが実践し、魔法のやり方を教える。
最初こそ失敗する者の、覚えたらそのまま再現してしまうリサに思わず感激した。
「天才だよ!リサ!」
「ふふん!私ね!王都の魔法学校に行きたいからずっと魔法を覚えたかったの!」
「入学どころかそのまま魔法団まで行けるぜ!やっべぇ、こりゃ今のうちにいろいろ教えなきゃな!」
「じゃあ、じゃあ!さっきの火花をバチバチするのも教え・・・」
言いかけた時、急にリサの体がよろけた。
「おっと、あぶねぇ。魔力不足だ。」
「でも、もっと魔法を覚えたいわ・・・」
「大丈夫だ。魔法は使った分だけうまくなる。逃げやしねぇよ。回復したらまた練習すればいい。」
「じゃあ、また魔法を教えてくれるのね!」
その笑顔をみて、レオハルトは妹を思い出した。
★ ★ ★
レオハルトは魔法の才能があった。
9歳で簡単な魔法が使え、11歳で器用に操るようになっていた。
「レオン兄ちゃん、わたし魔法が見たい!」
妹のテンリはいつも魔法を見たがった。
「しょーがないなぁ、じゃあほら!」
ならない指パッチンでかっこつけながら火花を散らす。
テンリはレオハルトの出す火が好きだった。
バチバチ鳴る火花をみて、火花もびっくりなぐらいキラキラとした笑顔になる。
「きれい~!もっともっと!」
喜ぶ妹の顔をみてレオハルトも嬉しくなりついつい見せてあげる。
テンリは体が生まれつき弱く、普段は寝たきりの生活だった。
いつも同じ部屋で変わらない風景を見るだけの生活に、レオハルトの魔法は彩を与えていた。
レオハルトは普段忙しい両親の代わりに家事を行い、妹の面倒をよく見ていた。
ある日、買い出しに行ったときとある服装が目に入った。
白地に青の線の入ったローブに身を包み、友達と仲良く話している自分と同じぐらいの子供たち。
レオハルトは思わず「いいなぁ、魔法学校」とつぶやいていた。
両親は帰り際にたまたま見つけたレオハルトのそんな光景をみて、レオハルトを魔法学校に入れようと決めた。
レオハルトの家であるムラビ家は決して裕福ではなかったが、両親は子供の才能を潰すまい、普段頑張っているレオハルトが学校でみんなと楽しんでほしい、と一生懸命働いた。
レオハルト12歳の誕生日、両親がケーキを買ってきた。
家の中で行われるささやかな誕生日パーティ。
「ハル、あけてごらん。」
やさしい父に言われ、ケーキの箱を開ける。
そこには「お誕生日おめでとう」と書かれたプレートに「魔法学校入学おめでとう」と書かれていた。
「え?魔法学校?」
驚いた顔をしていると、テンリがレオハルトに服を渡してきた。
それは町で見かける、魔法学校の生徒が着ているローブだった。
「お誕生日おめでとう!おにいちゃん!パパとママがね、これをお兄ちゃんにって!」
魔法学校は入学費用は高いがそれさえ払えばだれでも入学ができる。
両親はレオハルトに内緒で入学手続きをし、最高のプレゼントを用意してくれていた。
「これ!魔法学校のローブだ!なんで?すごいすごい!」
「ハルは魔法が得意だろう?それを着て、魔法学校でいっぱい学んできなさい。」
「レオン兄ちゃん、学校いったら私にもまた魔法を教えてね!」
レオハルトはうれしかった。
まさか自分もこのローブを着ることができるなんて。
いっぱい学んで、テンリに魔法を教えて、たくさん稼いで両親に恩返ししよう。
そう心に決めた。
しかし、幸せは長く続かなかった。
王都の外れにあるムラビ家の近くの森で、瘴気魔獣の暴走があった。
ちょうどその時、レオハルトはいつものように買い出しに行っていた。
騒ぎを聞いて、急いで家に戻った。
家の近くについたレオハルトは絶句した。
家がぐちゃぐちゃだった。
ところどころ破壊され、黒いシミが付着した家はもはや住めるような状態ではなかった。
「父さん!母さん!テンリ!」
がれきをどけながら必死に探した。
「そこの子供!この家の子か!」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げると、そこには王国魔法団の制服に身を包んだ女の人がいた。
「ここは危険だ!避難するんだ!」
「でも、父さんたちが!」
そういって探そうとした時、がれきの角から何かが飛び出してきた。
「危ない!」
しかし、レオハルトはとっさに火の魔法を放った。
向かってきた魔獣は悲鳴を上げながら消し炭になった。
「けがはないか!!」
「・・・だいじょうぶ、です。」
「こわかったな、俺が送り届けるから避難所に行こう。そこに家族も避難しているだろうからな。」
そういって、避難所に連れられた。
避難所はひどい有様だった。
けがをして治療を受けている人、泣いている子供、寝て動かない人・・・
「あとは頼みました。では私はこれで。」
そういって、魔法団の女の人は立ち去って行った。
「あなたは・・・レオハルト君ね。」
避難所で引き受けてくれた人は近所のお姉さんだった。
知った顔があり、レオハルトはほっとした。
もしかしたら、両親やテンリの居場所を知っているかもしれない。
「父さんたちがどこにいるか知ってる?ここにきてると思うんだけど・・・」
そういってた時、お姉さんはぐっと顔をゆがめた。
「・・・いるわよ。こっち。」
案内されたとこは、変だった。
皆ねていて、布団を頭までかぶっている。
「・・・ここよ。」
ついた場所で、三人が寝ていた。
「父さん、母さん、テンリ。僕だよ、逃げてこれたんだ。」
返事はなかった。
なんとなくわかっていた、この人たちは寝ているわけじゃない。
だって、布団は薄くて赤い模様がいっぱいあったから。
布をめくると、血の気の引いた三人の顔があった。
父は腕や腹がえぐれており、母は傷だらけで引き裂かれた跡があった。
そして、妹はローブに身を包みあるはずのお腹から下がなかった。
「とうさん、かあさん、てんり、にげて、これたんだよ。魔法団がきて、たすけてくれたんだよ・・」
レオハルトは三人の遺体のそばで泣いた。
後日、避難所で埋葬が行われた。
両親と妹の埋葬の時、妹のローブは血でくっついて剥がせなかったためそのまま燃やした。
火魔法が使えるレオハルトは無理を言って自分の魔法で燃やし、埋葬した。
「君が、レオハルト君だね。」
「あ、あのときの・・・」
埋葬を終え、お墓に手を合わせるレオハルトに声をかけてきたのは助けてくれた魔法団のお姉さんだった。
「私は王国第一魔法団団長のモモ・サクリィ。君が使った魔法は見事だった。」
「助けてくれて、ありがとうございました・・・」
レオハルトは頭を下げた。
「ご家族の事は聞いた。守り切れなかったこと、すまなかった。」
「いえ、魔獣を全部倒してくれて、みんなを救ってくれて、またへいわになりました。ありがとう、ござい・・うっ、くぅ・・・」
言いきれずに、レオハルトは涙を流した。
そんなレオハルトの涙をそっとハンカチで拭いて、優しい声でモモは語りかける。
「帰るところはあるか?」
「家も、家族も、もういないです。知り合いの人に、声をかけてみようと思っています。」
そんな言葉を聞いて、モモは手を差し伸べる。
「もしよければ、王国魔法団に来ないか?入団できれば寮もある。君は魔法の才能があるし、私が推薦する。もう君の家族のような人を出さないためにも、一緒に魔獣と戦わないか?」
差し出された手をみて、レオハルトは決意した。
これ以上、自分と同じ思いをさせないためにも、両親の願ったように魔法を覚え、悲劇を繰り返さないためにも。
「僕、頑張ります。一生懸命覚えて、たくさんの人を救います!」
もう涙は流さない。
そう決めたレオハルトの目を見て、モモは頷いた。
「よし、ならばついてこい。」
★ ★ ★
「じゃあ、また魔法を教えてくれるのね!」
その言葉が、妹の最後の言葉と重なった。
「レオン兄ちゃん、学校いったら私にもまた魔法を教えてね!」
懐かしい記憶だ。
妹に教えられなかった分を、この子に教えてあげるのも悪くない。
「もちろん!でも俺の教えはきびしいぞぉ~?頑張れるのか?」
「あたりまえよ!だって、魔法ってすっごく綺麗なんだもの!皆を笑顔にできるなら頑張れるわ!」
まぶしい笑顔とどこか妹に似た言葉に、思わずレオハルトも笑顔になった。
「そうと決まれば、明日からじっくり教えてやるさ!覚悟しろよぉ~!」
こうして、レオハルトの小さな弟子が生まれたのだった。
レオハルトの過去を書いてみました。
悲しい過去は人を強くする・・・
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