11 -騎士の約束-
すこし短めです。
皆が各々で楽しんでいる中、ユウトは輪に入れずにいた。
あこがれの勇者パーティを前に、緊張で動けなかったのだ。
「やぁ、君がユウトくんだったかな?」
セインが声をかけてきた。
「は、はい!ユウトです!」
「そんなに緊張しなくていいさ。遊んでるところに押しかけたのは僕たちだからね。」
「来ていただいて、光栄でひゅ!」
「フフッ、新人の騎士みたいだね。」
恥ずかしい、思わず噛んでしまった。
そんなふうに思っていると、嚙んだことを馬鹿にせずにセインが話を続けた。
「ユウト君は勇者になりたいんだってね。カノンから聞いたよ。」
「は、はい!みんなを守りたくて!でも、剣はまだ使ったことなくて・・・」
「じゃあ、俺の剣を振ってみるか?」
「え?いいんですか!」
セインは鞘ごと剣を渡す。
「危ないから、鞘からは抜かないように。しっかり握って振ってみてごらん。」
言われた通り、ぐっと握って一振りする。
子どもの体には重たい剣を一振りすると、剣の重さに体が引っ張られ盛大に転んだ。
「いてて・・・」
「剣は武器だが、振り回すものじゃない。ゆっくりでいいから剣の重さに身を任せて。地面につかないうちに止める。それだけやってごらん。」
「はい!」
上に持ち上げ、振り下ろす。
不格好だが、こんどは何とか転ばずに剣を止めた。
「できたじゃないか。その調子だ。」
「でも、勇者さまはもっとかっこよくて、速く振ってました。僕は木の棒を振るときもよく転んじゃって・・・」
「誰もがすぐに剣を振れるようになるわけじゃないさ。」
自分を卑下しそうになったユウトに、セインは言う。
「俺も、昔は勇者になりたかった。でも、勇者は最初から決まってるから成れないんだって教わったよ。」
「え?じゃあ、ぼくは勇者になれない・・・?」
驚き、泣きそうになるユウトにセインは続ける。
「そもそも、勇者って何だと思う?」
「それは、強くて、魔王をたおして、皆を守る、誰にも負けない人・・・?」
「確かに、勇者は強いし魔王も倒す。みんなを守る。でも誰にも負けないわけじゃない。」
「え?勇者さまは負けちゃうの?」
そんな疑問に、セインは微笑みながら答える。
「勇者は負けることもある。でも、勇気をもって立ち上がるんだ。仲間のため、皆のため。
【勇気のある者】それが勇者なんだよ。」
「勇気のあるもの・・・。僕もなれるかな・・・」
「なれるさ。諦めなければ、それが勇者だ。俺も勇者にはなれなかったけど諦めずに頑張って勇者パーティに選ばれた。剣だけならカノンにも負けないさ。」
「セインさんの方がつよいの?」
「あぁ、強いとも。勇者を目指して毎日剣を振ってきたからな。だから、こんな風にっ!」
セインが剣を振った。
ビュンッと音を立てて剣が振り下ろされると、川の方の水がしぶきを上げた。
「す、すごい!勇者じゃなくても強くなれるんだ!」
「あぁ。だからユウトも頑張っていけばきっと俺みたいに強くなって、もしかしたら勇者パーティにも入れるかもしれない。」
「ほんとに!」
キラキラと輝いた顔に、セインは頷く。
「もちろん。だから、自信をもっていい。何なら明日からでもたまに村の訓練に来てもいいぞ。俺がしっかり教えてやる。」
「やった!約束だよ!じゃ、じゃあ、強くなったらセインさんやカノンさんと一緒に冒険したい!」
「あぁ。諦めずに頑張ったら一緒に冒険しよう。」
「あぁ、騎士セインとしてしっかり守ろう。約束だ。」
そういって、ユウトとセインはしっかりと握手を交わした。
きっとそのころには魔王を倒して勇者パーティは解散しているかもしれない。
でも、冒険はいつになっても出来る。
少年の純粋な希望と夢に、セインは昔の自分を思い出し約束した。
次回はレオハルト編の予定です。
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