第十五話 相対
「えー!! 街長様とカワセミちゃんからの手紙があったの?」
夜。夕食後に緊急で話し合いをすることになる。
「そう。これなんだけど、刺繍糸で引き出せるように扉に挟んであったんだ」
刺繍糸が付いた封筒ごと皆に順番に回す。街長が味方だと確定して、皆疲れてはいるものの、表情は明るかった。
「よし、明日も訓練頑張ろう!」
「私も明日早く起きたいからもう寝るね」
こうして、今日は皆一様に早く寝た。
六日目は話し合わず、朝から晩まで皆訓練に励んだ。夜にカナリアに聞いたのによると、だいぶ皆上手くなったらしい。僕は見ていないからわからないが、特にシロマルとノスリが上手いらしいが、ノスリはまだ幼いので当日は銃を渡さない予定らしい。その代わり、巻き込まれた人がもしいたりしたら、避難させる予定のようだ。
僕もかなり手慣れてきた。ウトウはそばについていないが、着々とアマモと共に野生動物たちを倒していった。
ついに迎えた七日目の朝は、緊張に包まれていたのに、どこかわくわくした雰囲気もある、不思議な空気だった。まるで滅多にないステージに立つ機会のような。
僕は相変わらず野生動物の巣窟に出かけ、順調に倒して死体を運んで埋めていく。
僕にしか出来ない仕事があると思うと、すごく心が躍った。それが、脅威を倒す役目だというのだから、なおさらだ。
夕方。古代の人たちはこの時間を逢魔が時と呼んだらしい。魔物と人の活動時間が被る時。まさに今のことだ。僕たちは、少し活動時間を延長して、強大な魔物を討つのだ。
僕たち七人は、一週間前まで存在すら知らなかった扉の前に立った。程なくして扉が静かに開き、僕たちもなるべく音を立てないように息を殺して滑り込んだ。
「おかえり。君たちをずっと心配していた。……あれ、何か増えてる」
街長様が小声で歓迎の言葉を述べ、目を丸くした。しかし気にするそぶりは見せなかった。
「時間がない。今日を指定したのは外壁の点検と贄の提供が被った日だからなんだよ。だからこの扉も開けられるし、神の元へ近づける」
街長様は、予想外のことを口にした。
「——この中で、贄として神の懐に潜り込む勇気のある子は、何人いる?」
しん、と静まり返った。アマモは僕の肩を離れ、浮上する。怒っているようだったが、それは僕とて同じだ。僕は手を挙げて、声を潜めて言い放った。
「その役は僕だけで十分です。僕が、贄になってクマを駆除します。クマは何頭いますか」
僕の顔を見て、街長様は顔をこわばらせて頷いた。僕はどんな顔をしていたのだろうか。
「だーいぶ、怖い顔してる。今から百人殺しますって顔だな」
アマモが冗談めかして言ったが、内容も状況も笑えるものではなかった。
僕が押し切ったことで、僕にだけスマスクが返還された。手首に馴染みすぎたくらい馴染んだそれを装着する。なんだか少し、懐かしかった。
「カワセミちゃんは? 手伝ってくれたんですよね」
「あの子にはこれ以上手伝ってもらうのは危ないから、街長室で待機してもらっているよ。神を始末すれば会えるから」
言い方に違和感があった。これは死亡フラグではないのか?
だが、時間がないと言われていたのもあり、急いで準備をした。僕はウトウに借りた拳銃をポケットに忍ばせて縄で縛られた。神殿という名の処刑場に着いたら縄で引きずられることになるらしい。引き受けるんじゃなかった。
クマは五頭いるという。ボスのクマがまず獲物に致命傷を与え、そこから他のクマと共に引き裂いて肉を分けるそうだ。
しかし、縄で縛られた状態でどう攻撃するのか。僕には考えがあった。だから、心配せず縄で縛ってほしいと言ったらしっかりと縛られた上で、縄を解く小刀をもらった。これもポケットに忍ばせる。




