第十三話 協力者
彼らが街を出て、三日目。
「むむぅ……。生きているのか死んでいるのか、それすらもわからないなんて……。何でだろう……」
彼女は悩んでいた。原因は、目の前の机に置かれた写真——に写る、彼女の友達。そしてその向こうに座る、街長様だ。
昨日、ヤイロたちと遊ぶため、ヤイロの十六歳の寮を彼女—-カワセミは訪ねた。街では、十五歳以上は親と離れて暮らすため、寮に自分の部屋が設けられる。カワセミは十五歳で、シロマルの部屋の方が近かったのだが、同性ということもあり、話しかけやすいヤイロをまず誘おうと思った。もちろん、ヤイロの体調次第ではあった。
しかし、寮にヤイロはいなかった。他の近い部屋の人に聞くと、街長様に呼び出されてから見ていないらしい。何か大事な仕事を任されているのだろうと考える人と、何らかの罪で裁かれたのではないかと言う人が多かった。どちらも可能性はありそうな気がしたが、一番気になったのは、そこにオオルリさんも入っているという話だ。オオルリさんは街長様の医者としての助手で、さらに精霊使いの力も与えられている。彼女が、何らかの罪を持つわけがない。よって、街長様に何か任務を課されたのだとカワセミは考えた。
その考えに至ってから、街長様のいる役場へ向かった。仕事が少なかったのかわざわざ時間を取ってくれたのか、今日、街長様と話すことができた。そして今に至るのだ。
最初は街長様に何を聞いても「あの子たちは特別な任務に出ているから、今詳細を話すことは出来ないよ」と言われてしまっていた。しかし粘り強く質問を続け、「いつ会えるかだけでも教えてくれないと帰りません」と言うと、街長様は反論をやめた。気付けばそこに来るまでに二時間は経っていた。
街長様は、口外したら即処刑だと脅して、本当のことを話し始めた。
街長様の話は、十五年間この街で生きてきた自分には予想もつかなかったほど、大きなスケールの話だった。
街はクマに支配されていて、街長様もクマに従うことでようやくこの街と自分の命を守っているのだと。聞いてはっきりわかった。これは自分が少し努力しただけでどうにかなる話ではない。シュムツ菌が脅威でなかったとはいえ、外の世界は街中より過酷で、クマに悟られないようにスマスクを取り上げたことで、外に出した五人の安否は不明なのだ。それなのに街長様はどこか余裕のある様子だった。
「大丈夫、あの子たちならちゃんと帰ってくる。もしかしたら、何らかの形で真相を知って助けに来てくれるかもしれない。今の私たちがしないといけないのは、帰ってくる彼らの手助けをする準備だよ」
そう言って、街長様は私を落ち着かせるようにそっと頭を撫でた。本当に、戻ってくるのだろうか。もしかしたらもう、死んでしまっているかもしれないというのに。
それでも、準備をしないわけにはいかなかった。街長様は三日に一回、街の外壁の点検のために、外に出るらしい。ヤイロたちを外に出した時に一回使っているので、次に出るのは三日後である明日だ。その時に五人の安否を確かめる、またはなんらかの方法で作戦の内容を交換する必要がある。
ただ、街長の話だと、クマの犠牲になった人の骨は、クマたちが捨てに行っているらしい。その時に街長以外の人物、それと何か伝えるような物が見つかってはならないのだ。
「……それなら、その扉の下に手紙を挟めば、ばれないんじゃないかな……手紙に紐を繋いで、それだけが見えるようにしておくとか……」
街長様は悩んでいた。クマが侮れる相手じゃないというのはすでに再三街長様に言われたことだ。私は意を決して、スマスクを外して机に置いた。
「じゃあ、今から糸くずだけ置いて、慣らしておけば良いじゃないですか。なんだろうね、街長様はクマに怯えすぎじゃありませんか? 私たちがそんな無力だなんて、思わないでください」
街長様は勢いに飲まれたという風に、ふらりと立ち上がった。




