第十二話 初めての武器
「街長、子ども四人、大人一人くらいが最近いなくなったり、病気になったりしていないか? ……ここ数日、五人だけ行動が鈍い。理由を説明しろ」
「は……はい。その、シュムツ菌が……」
自らが神と敬う相手の目前で、街長は平伏していた。咄嗟に口をついて出たのがシュムツ菌だったのは幸か不幸か。
しかしそれを聞いて上がった胡乱げな声に、びくりと肩を震わせる。神に共有される位置情報の搭載されたスマートスクリーンを定期的に移動して、彼らがまだ街にいるように見せかけていた。これがばれてしまえば、私どころかこの街の存続すら危うい。
「シュムツ菌……? あの菌は、治療薬が出来たはずだが?」
「そ……それが、新しい株があったようで……。子どもたちを診ていた私の助手も、感染してしまいました」
「早く治せ。大幅に人口を減らせば、……わかっているな?」
「もちろん承知しております。一日でも早く解決するよう、尽力いたします」
街長はほとんど頭を地にこすりつけ、神にこの事態の解決を約束した。
海まで来た。ただし、今日は少し歩き、岩場が多い入り組んだ場所を選んだ。
岩といっても、貝の張り付いたコンクリートだったりする。それも大きく割れ、原型が何だったかわからない程度のものが多かった。ひしゃげた街灯が数個、残っており、ここが何かの施設であったことを物語っている。ウトウとカナリアはここは港だったと言っていた。他の場所から来た船を受け入れて、人や荷物を載せたり降ろしたりする場所らしい。ただ、港は他にもあるので、ここは『かもめりあ』と呼んでいるとも聞かされた。彼らも全盛期を知らないみたいだが、この国の三大夜景のひとつを名乗るほど綺麗で、観光客も多く、海の上にあるようなホテルや観覧車、クルーズ船が海を彩り、人気の場所だったようだ。今は跡形もないので、想像することさえも難しい。
「ここで、狙った瓦礫を撃つ練習だ! 危ないから、最初は一人ずつ見ようか」
ウトウが腰に手を当てて、元気よく言った。ここでもやはり、姉さんからの年齢順だ。
その前にまず、ウトウとカナリアの見本を見せてもらう。二人とも容易く示した目標に弾を当てており、見ているこちらはいとも簡単そうな気がしてしまう。
しかし、当然だが結果は散々だった。
オオルリ姉さんは反動で空高く弾を撃ちあげ、僕は地面にめり込ませた。ヤイロはなぜか本体が飛んでいき、シロマルは姉さんと同じでノスリはかなり左に当たった。
BB弾であったにも関わらず、誰一人として才能のありそうな人はいなかった。
そして、ウトウもカナリアも、これを見て笑わなかった。
「まだ出来る? 上手くなるまでやろう!」
姉さん、僕、ヤイロはウトウに、シロマルとノスリはカナリアに教えてもらい、練習をした。
日が暮れそうになり、帰り始めた頃には皆へとへとで、ここまでやりがいを感じたこともないような気がした。ただ、上達したかどうかは謎だった。
夜。久しぶりにしっかり寝られそうだったのに、アマモがなかなか寝かせてくれなかった。
「なあ、昨日の夜何かあったか? おれに話してもウトウにはばれないから、話してくれ」
(明日でもいい? あんまり眠れてなくて、今眠いから……)
僕も話したかったが、それよりも正直寝たかった。だから質問を躱していたら、余計に寝るまでに時間がかかってしまったのだ。最終的に僕が寝落ちして、アマモが揺さぶっても起きなくなって強制終了だったようだ。翌朝、「死んだかと思って怖かったー!」と怒られてしまったが、寝る時に訊いてくるほうが悪い。それに、早朝に起こされて話す羽目になったから、何も寝る時じゃなくてよかったじゃないかと思う。
「むーう」
僕の話を聞いたアマモは眉間に皺を寄せた。
「ウトウがハリーって名乗ったのは本当だったとして、ウトウがおれたちをどうにかしようとしているわけではなさそうな……」
アマモはウトウの今までの行動を踏まえ、ただ情報を集めたいだけではないかと言う。僕たちが暮らしていた、街の中の。
(それなら、僕たちが目的を達成するまでは少なくとも協力してくれるのかな……?)
「大方はそうだと思っていいんじゃないか」
(じゃあ、今のところは保留だね、この問題は。アマモが他の人にぺらぺら喋ることもないと思うけど、この話は内緒にしておこう)
「そんなこと言って、喋るのは薫の方だろー。現に今、おれに喋ってるじゃないか」
(確かに……そうだけど……っ、それは、アマモが他の人に言わないだろうから話しただけで! というかアマモが聞いていたんだよね?)
「あれ、キバシリ早いね。おはよう」
「あっ、オオルリ姉さんおはよう」




