35. 後日談
その後。
ルチルは予告通り、レジーナにみっちり叱られた。
薬師のおばあさんに言いつけるからね、と言われてそれだけはとすがって勘弁してもらったぐらいだ。
レジーナはオニキスにも説教していた。
いわく、あなたがストッパーなんだから責任を果たせと。
オニキスは、もしもの時の手段はあったんだ、と一言返したが、それ以外のほとんどは素直に正座で聞いていた。
落ち着いて考えると、雪竜にも忖度なく説教するレジーナが最強なのかもしれない。
という感想はさておき。
お説教が終わると、次に待っていたのはギルドの聴取だった。
サラマンダーを倒したときにもされた、あれである。
とはいえ、ルチルたちもたいしたことを知っているわけではない。
主な聞き取りは、オニキスがなぜあの場所で竜になったのか、日頃はなれないのか、どういった能力があるのか、といった項目になった。
「つっ……疲れたあ……」
「お疲れ様でした」
ギルドの酒場エリアで伸びていると、冷たい水を入れた木のコップが差し出された。
「あ、ありがとうございます」
「恩に着るぜ」
二人で一つずつ受け取って喉に流し込む。
立っていたのは、最初に入会受付をしてくれた、あのお姉さんだった。
「お二人とも、今回はお手柄でしたね」
「あ、はい……ありがとうございます?」
お手柄、と言われるのもぴんとこなくて、語尾を疑問形に上げてしまう。
お姉さんはにっこり微笑んだ。
「誇っていいと思いますよ。お二人のおかげで被害が出なかったことは、ギルドも理解していますし」
「そうなんだ……?」
そこはあまり触れられずにオニキスの能力の話に終始していたので、実感がない。
「そうですよ。……あの人たちはその、今回の一件のために中央から来た研究者肌の人たちで、『ドラゴンと直接話せるだって!?』『しかも、オコジョの姿!?』ってノリノリだったんで……」
「ああ……」
「道理でなんか、においが似てたんだよなあ、アイザックとかその手のやつらと……」
懐かしい名前が飛び出してきた。
まあ、確かにルチルも初めて会う職員たちばかりだった。お偉いさんなのかとは思っていたが、まさか中央の人間とは。
「我々に結構込み入った事情まで赤裸々に教えてくださってましたが、よかったんですか?」
ルチルはオニキスと話し合って、今回の討伐で使った能力や、ルチルの生い立ちについてはギルドに打ち明けてしまうことにしていた。
「ああ。気遣い感謝するぜ。……ま、言ってねえこともきちんとあるからな。俺がそもそもどこの出か、とか」
「それはそうですが」
「うん。私が教わったけど、うまく使えてない技のことはいいかなと思って言ってないし」
「だな。あとは、俺が結構なイケメンに化けられることとか」
「なんですかそれ見たい!?」
めっちゃ食いつかれた。
「イケメンっていうか、イケオジ?」
「ルチルさんまで!?」
「私ももうだいぶ見てないんですけどねー」
ルチルも、自分に大人の保護者が必要だったとき、たとえばオニキスが貯め込んでいた宝石を換金するときとかしか見ていない。
ちょっと懐かしいくらいだ。
「……あ、そうだ」
「ん?」
「今回報酬結構もらったでしょ。オニキス、ちょっと宝石とか買う?」
「あ? ……あー」
ドラゴンは宝石を貯め込む習性がある、ルチルは出会ったときにそれを本竜の口から聞いていた。
「……遠慮しとくわ。しばらくは、もう持ってる宝の手入れで忙しいからな」
「もう持ってるもん? なにそれ? なんか持ってたっけ」
ぴんとこなかったが、お姉さんは横でにやにや笑っていた。




