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これってお金になりますか?~雪竜とルチルの駆け出し冒険者生活  作者: 紫嶋桜花


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34/38

34. 雪竜

「なんだあれ……?」


 あえぐような声はエドからだった。

 見ていればわかる。ルチルは、敢えて説明をしなかった。


 最初に翼が広がった。次に尾が飛び出して、黒い爪の生えた手足が伸びる。

 最後に、黒い角をそなえた頭がぶるりと振られた。


 うん、やっぱりワイバーンじゃ比較にならない。角ひとつとってみても、立派だしつややかにきらめいている。


 スノードラゴンは瞼を上げると、黒い瞳でワイバーンを見据えた。


「新手か!?」


 『歌う樽(シンギングバレル)』から上がった声に、さっと冒険者たちに緊張が走る。それぞれの装備を構え直した。

 が。


「いや、見ろ……!」

「ガッ……!?」


 異様な気配を感じてワイバーンが振り返る。対峙した雪竜は、カッと口から冷気の息吹を吐いた。

 それは大きな氷の塊になって、ワイバーンの翼に次々と突き刺さる。


「ギャオオオン……!」


 飛行する力を失ったワイバーンは、どうっと地面に墜落した。

 その余波で、ルチルたちの立っている場所も揺れる。

 雪竜は簡潔に、一言。


「……頭(ず)が高(たけ)え」


 その声に、真っ先にエドが我に返った。


「今だ!」

「今なら、攻撃が通ります!!」


 ルチルも続いた。

 その言葉を信じて、魔法や矢が浴びせかけられる。

 ワイバーンはダメージをことごとく受けてのたうち回った。

 じゅうぶん弱らせたとみて、エドが剣を抜く。他のパーティーの近接職もそれにならった。

 だっと駆け寄り、真っ先にたどり着いたエドが角を叩き折った。


「これで……!」


 やがて、人間たちの攻撃に、ワイバーンはぴくりとも動かなくなった。

 巨大なスノードラゴンの姿は、最初からなかったかのように消えていた。



     *



「やあ。一時はどうなることかと思ったけど、誰一人欠けずに勝利を収めることができた。よかったよ」


 大岩の一つにもたれて座り込んでいたルチルのもとに、『歌う樽』のリーダーのおじさんがやってきた。


「君たちには、お礼を言わないといけないのかもしれないね」


 彼のまなざしは、ルチルの肩にいるオコジョを見ている。

 オニキスがルチルに代わって口を開いた。


「やめてくれ。あんたらの作戦をかき乱したのも事実だしな。すまんかった」

「……そう言われてしまうと、こちらも何も言えなくなってしまうのだが……」


 リーダーは苦笑した。


「まあ、そのうちゆっくり酒でも。君はかなりいける口だと聞いたけど」


 これは間違いなく、ルチルではなくオニキスのことを言っている。


「ああ、おごりなら付き合うぜ」


 オコジョがにやりと笑うと、リーダーはひらりと手を振って仲間たちのところに戻っていった。

 あとには『銀の天秤(シルバースケイルズ)』の面々が残っている。


「……まあその、なんだ……」


 皆歯切れ悪そうな顔をしている。その気持ちはルチルにもよくわかる。

 そのうち、代表してエドが口火を切った。


「……そりゃ、喋るよなあ。納得したわ……」

「そこかよ!?」

「いやそこ、大事ですよ」


 反射的に突っ込んだオニキスにサイが被せた。やはりここ、息が合うのかもしれない。

 レジーナも苦笑してルチルの横にしゃがみこんだ。


「言ってくれればよかったのに。信じたかどうかはともかくとして」

「正直ですね……」

「うん。美徳でしょ?」


 しれっと言うのでルチルも笑ってしまった。そして、気が抜ける。


 向こうの方では、報告を受けて山を登ってきたギルドの職員たちがワイバーンの検分と解体に立ち会っていた。

 日が高く、昇っていた。

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