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これってお金になりますか?~雪竜とルチルの駆け出し冒険者生活  作者: 紫嶋桜花


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33/38

33. 竜脈

「見ろ。あの裂け目だ」


 オニキスに言われ、ルチルは目を凝らす。

 ワイバーンの下には、岩だらけの地面を裂け目が横に走っていた。

 同じものを見つけたらしいサイが声を上げる。


「ありますね。あれが竜脈ですか?」

「ああ、ひらたく言や、竜のなりした魔物に力を与える。あいつはあれのおかげで肉体を維持してるし、おそらく多少はパワーアップしてやがる」

「そういうことか……」


 隣では『歌う樽(シンギングバレル)』のリーダーが回復魔法を受け、戦線に復帰するところだった。

 エドが声を張った。


「ワイバーンの下に地面の裂け目がある! あれから引きはがしてくれ!」

「……! そうだ、そうすりゃ勝ち目はある!」


 オニキスも唱和した。真っ先に『歌う樽』が応じた。


「わかった! おいみんな、少しずつ下がるんだ!」


 冒険者たちは隊列を維持したまま、じりじりと下がる。その間にもワイバーンは飛び上がっては人間に攻撃を加えていたが、ある程度の距離が開いたところで、警戒したようにこちらをにらむだけになった。


「勘づかれたか……?」

「かもしれねえな」

「俺がもう一丁歌おうか」


 『歌う樽』のリーダーが申し出るが、それは危険すぎる。

 そこであっ、とサイが声を上げた。


「『鏑矢』を持っています。低級の魔物が引きつけられる魔法がかかっています。通常は知能の高い魔物には効きませんが、もし『音』を警戒しているとしたら……」

「やってみてくれ!」

「……ええ!」


 サイは矢筒から先に装飾のついた矢を取り出すと、後ろを向いて弓を引き絞り、力強く放った。

 ひょうっと、高い音を立てて矢は消えていく。パーティーの背の方へと。


「ギャオン!」


 ワイバーンはそれまでとは違う叫び声を上げると、高く飛び上がった。

 脚が完全に地面から離れる。


 ──いまだ、と教えられなくてもわかった。


「身体強化《フィジカル・エンハンス》っ!!」


 ルチルは教えてもらったうち、一番難しい技を叫んだ。塔にいた頃は一度も成功したことがなかった。

 自分の身体能力が劇的に上がる。

 火事場の馬鹿力だ、二重の意味で、と思った。


 肩からオニキスをすくい上げる。

 振りかぶって、思いっきり──投げた。


 がら空きの竜脈へ向かって。


「ルチル!?」

「ええっ!!」

「何を!?」


 周囲から驚いたような声がいくつも上がる。そのうちの一つは、放物線を描いて飛んでいった。


「おまっ!?」


 じっと見つめるルチルの視線の先で、オコジョは悟りを開いたように飛びながら肩をすくめた。ように見えた。


 次の瞬間。

 小さなオコジョから、二枚の大きな翼が──生(・)え(・)た(・)。

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