表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これってお金になりますか?~雪竜とルチルの駆け出し冒険者生活  作者: 紫嶋桜花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/7

3. 仕事

 さしあたっては、今日の仕事が待っている。

 ルチルはおかみさんと連れ立って洗濯屋まで行き、とりあえずいつもと同じ仕事をこなすことになった。

 洗い上がった洗濯物をきれいに畳んだり、受付に立ってお客さんと品物をやりとりしたり。


 てきぱきと手は動きながらも、やっぱり考えるのは立ち退きの件である。


「やっぱり、引っ越しは必要だよね……」

「そうなるよな」


 オコジョはひげをゆらゆらさせながら神妙に頷く。


「今の条件で同じくらいの住み家を探すのは難しい、って話だったな?」

「……うん」


 あの長屋に、大家の好意によって格安で住まわせてもらっていたのは本当だ。

 息子という人が、それで採算がとれないと判断したのなら、仕方ない。


 ……やっぱり、お金は大事か。

 ルチル個人としても、お金はなるべくあったほうがいいという考えだ。

 そのために仕事を掛け持ちまでしているのだから。


 そうだ、仕事。

 つまり、新しい住居の家賃を払えるぐらいの仕事を探さなければいけない、ということだ。

 だがそもそも、今の洗濯屋の仕事だって……。




「ここのお店も立ち退きかい?」


 おかみさんが店に立っているときに来た客は、皆心配そうに尋ねていく。そのたびに、おかみさんは残念そうに答えていた。


「そうなっちまうだろうねえ」


 客がはけたあと、オニキスが聞く。


「おやっさんとおかみさんはどうするんだ?」

「ああ、あたしたちは同業者組合があるからね。伝手をたどって、なんとかよそに店を出せないか、掛け合ってみるつもりだよ」

「なるほど……そういう便利なもんがあんのか」

「だいぶ厳しい決まり事もあるから、便利一辺倒じゃあないんだけどね」


 そう言ってから、おかみさんはルチルに謝った。


「すまないねえ、ルチルちゃんも一緒に、と言いたいのは山々なんだけど……」

「えっ! いえ、今までじゅうぶんにお世話になったので!」


 過分に気遣われて、こちらこそ申し訳なくなってしまう。


「そうだぜ、俺らは俺らで何とかやるから、あんたらは店のことだけ考えてりゃあいい」

「そうですよ。私たちは身軽ですからね。何とかなりますって」

「そうかい?」


 おかみさんは苦笑いすると、そういえば、と続けた。


「薬屋とも掛け持ちしてるんだろ? 帰りにそっちの様子も見てったほうがいいんじゃないかい」

「はい、そうしてみます」



     *



 薬屋も洗濯屋と同じ並びの、少し離れた場所にある。

 仕事を終えたルチルが、再びオニキスを頭に乗せて薬屋の店構えを覗くと、店主の老婆が奥で何かを整理しているところのようだった。


「おや、ルチルちゃん。オニキスちゃんも。上がっていくかい、お茶を出そうかねえ」

「いや、お構いなくだぜ。帰るところだからな」

「はい」

「そうかい。……立ち退きの件は、──その顔じゃ、もう聞いとるみたいだね」


 ルチルは頷いた。


「うちの長屋もなんです」

「ああ、そうだったか」

「ばあさんはどうするんだ?」


 店主は今まで整理していた荷物を振り返る。


「わたしゃ、前々から娘夫婦が一緒に暮らさないかと言ってきていてね。あっちの家に気を遣うから、体が動くうちはと断っていたんだが、そろそろ潮時なのかもしれないと思ってねえ」

「何言ってんだばあさん、あんたまだまだだろ」


 オニキスがぶすっと言えば、店主はそうかい、あははと笑った。ルチルも続ける。


「そうですよ。でも、娘さんのところに行かれるんでしたら、安心ですね」

「そうだねえ。それよりも、あんたたちこそどうするんだい。長屋を出て、行き先は決まってるのかね?」

「それが、まだ決めてなくて」


 ふむ、と店主はルチルの目をじっと見て言い含めた。


「そうかい、わたしでなにか力になれることがあれば、何でも言うんだよ」

「はい」

「ああ、そうさせてもらうよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ