24. 訓練
さて、では、具体的にどう訓練を進めようか。
ルチルとオニキスは翌日、改めてギルドの掲示板を確かめに来た。
長石級の依頼のうち、カテゴリが『討伐』となっているものを探す。
「……結構あるね」
「んにゃ、思ったよりな。やっぱ冒険者のメインの仕事なんだろうなあ」
「あ、これ」
ルチルが見つけたのは、ゴブリン退治の依頼だ。
「畑を荒らされてる、と」
「『まずゴブリンから始めろ』……か。いいかもしれんな」
「でしょ? 報酬は、百銀貨。これを頭数で割るんだね。場所は……」
張り紙の地名を地図で確かめる。ここから一日ほどの小さな村だ。
「よーし、じゃあ受付に行ってみよう」
窓口では職員に、いつもの薬草の採取依頼と同じように、何人かの冒険者と一緒に受けることを勧められる。
「ルチルさんはどういった戦闘スタイルでしたっけ?」
「えっと、力場の盾を出したり、ものを凍らせる冷気を呼んだりですね」
「それでしたら支援職ですね。前衛職の冒険者さんとご一緒されるといいと思いますよ」
「そうなんですね」
などと話していると、ちょうど鎧を着た女性や槍を持った男性が掲示板に近付いてきた。
「ああ、あのお二人はちょうど冒険を始めたばかりですから、ぴったりかもしれません」
「じゃ、声掛けてみます!」
職員の見立て通り、二人は簡単な依頼を探している駆け出しの冒険者だった。
女性はアン、槍の男性はバートで、二人とも戦士職らしい。
とんとん拍子にゴブリン討伐の依頼を同道することが決まり、改めて職員から話を聞く。
「ルチルさんは、討伐は初めてですね。お二人は二回目と、三回目ですか」
「はい、です」
「それじゃ、こちらがギルドで仕事を受けた証明です。依頼人に渡してお話を聞いてくださいね」
「わかりました」
アンとバートが受注する手順を、ふむふむと見ておく。このあたりは、おつかいの依頼と変わらない。
「何か買い物はある?」
アンに聞かれ、正直に必要なものがわからないと答えた。
「薬草とポーションは? ある? じゃあ、特には大丈夫かなあ」
「俺はちょっと食糧買い足しておくわ、何があるかわからんし」
「あ、じゃあ私も」
ギルドで売られている保存食は、干し肉や乾パンなどがセットになっているという。
念のためとそれを二食ほど買って、荷物に加えた。
さて、出発だ。
*
いつものパン屋で昼食を手に入れ、門を出る。
ここからの景色にもずいぶん慣れた。
今日の目的地は、まず半日以上街道を行ってから、脇道にそれた場所にある。
途中、旅人のために整備されている泉のほとりで昼休憩を挟んで、ひたすら歩いた。
地図の通りに脇道へと入り、村に着いたときには太陽が地平線に隠れようとしていた。
「まずは、依頼を出した村長さんを探そうか」
「おう、その辺の人に声掛けてみるわ」
戦士の二人がてきぱきと段取りを立ててくれ、ルチルとオニキスはそれに乗っかっている。
ほどなく、声をかけた村人から村長の家を聞き出し、そちらに向かった。
「あなたがたが依頼を! こりゃ助かります」
「よろしくお願いします。さっそくですが、荒らされているという畑は、どのあたりに?」
「こちらです、ご案内しますわ」
村長は純朴そうな中年の男性だった。
案内された畑は、村の柵の外に広がっている。
「ゴブリンは夜分、あっちの森から出てきて、作物を荒らしていくんですわ。まだ家畜に被害は出とりませんが、時間の問題だろうと」
「なるほど。どのぐらいの数かはわかりますか?」
「一度に出てくるのは二、三体でしょうか」
「山に入った村人で、巣を見かけたなんて話は?」
「まだ、ありませんな。巣があるならそっちも始末してもらえると助かりますが……」
戦士たちは目を見交わして相談に入った。
「どうする? 先に巣を探してもいいが、こっちは夜目が利かないからな」
「それだよね。これからちょうど襲撃の時間だし、まずは見張りからかな」
「だな。来たやつを退治して、痕跡をたどるのではどうだ」
「賛成。君もそれでいい?」
水を向けられて、ルチルはうなずいた。
「はい。交代で見張りですか?」
「それがいいと思う。村長、あそこの小屋は使ってますか?」
「ああ、納屋ですが、見張りに使われるんならどうぞ。ちょっとした食べ物も運ばせましょう」
「助かります」
納屋に毛布を敷いて、交代で休息をとる。
アンたちは最初、三交代を主張したが、オニキスが俺も見てられると主張したので四交代になった。
さっそく横になって仮眠を取っていると、バートにとんとんと肩を叩いて起こされた。
「……来ましたか?」
「ああ」
ひそひそ声を交わす。隣では、女戦士が既に支度を終えて扉の隙間から外をにらんでいる。
ルチルは起き上がってうなずいた。オニキスがちょろちょろと頭まで駆け上がる。
「いけます」
「俺も大丈夫だ」
「おう。……行くぞ!!」




