22. 防具屋
方針は決まった。
その晩、ルチルはすっきりした気持ちでベッドについた。
ぐっすり眠って目が覚めると、既に日は高く昇っていた。
「おはよ……」
「おはよう。よく眠ってたからな、起こさない方がいいと思ったんだ」
「うん、ありがと」
汲みおきの水で顔を洗って着替える。
肩にオニキスが飛び乗った。
「今日は、装備や道具を見に行くぞ」
「うん? ……ああ、お金の使い道も考えなきゃね」
「おう。身を守るのに便利なものをあれこれ揃えたほうがいい」
「了解」
着替えをして、ギルドに行く。ここには、入会のときに品物を揃えた売店がある。
確か、あの時は手が届かなかった魔法のかかった品やらがあったはずだ。
*
「素早さの上がる指輪、だって」
「こっちは記憶力のよくなる眼鏡か……」
売店のショーケースの前で、二人で首をひねってしまう。
よいものだろうとはわかるのだが、自分たちに必要か、と言われると違う気がする。
考え込んでいたら、後ろから声をかけられた。
「ルチルちゃんに、オニキス? 買い物?」
今日は軽装のレジーナだ。
「あっ、昨日はありがとうございました」
「いえいえ。……何かほしいものあるのかな。お金入ったもんね」
「それが、どれがいいのかわからなくて……」
レジーナは、あー、と納得した顔をすると、それなら、と指を一本立てた。
「二人は今日は暇?」
「はい」
「昨日の今日だからな、仕事は休みだ」
「よしっ。じゃあ、お姉さんと一緒に買い物に行こうっ!」
「えっ」
「助かるが、いいのか?」
「あたしも今日は買い物の日にしようかなって思ってたんだよね。付き合ってよ!」
そう言われたら、ありがたく厚意を受けとるのがよさそうだ。
「よろしくお願いします」
「おっけー。んー、まずはどこからかな……ふむ」
レジーナはルチルの着ているものに目を留めた。
「ルチルちゃん、昨日と同じような装備だけど、防具は持ってない?」
「ぼうぐ?」
「ああ、今まで戦いを想定してなかったからな」
オニキスの答えに、ひとつうなずく。
「ふむそっか。じゃあまず、防具屋からだね」
*
さっそく、二人はレジーナ行きつけの防具屋へ案内してもらった。
通りに面したショーケースには、全身を覆う金属の鎧が立っている。
「これ見たことある」
「あー、じいさんの部屋に飾ってあったろ」
「それだ」
店の中にも、所狭しと鎧のパーツが並んでいた。
レジーナが勘定台に声をかける。
「おじさん、こんにちはー」
「お、いらっしゃい。調整かい?」
「ううん、今日はこの子にいい防具がないか見てあげてほしくて」
「ほう、新人さんかな」
店主はルチルに顔を向けた。
「はい、よろしくお願いします」
「戦い方は? 金属がだめとか、制限はあるか?」
店主は勘定台から出てくると、眼鏡をかけなおして矢継ぎ早に質問をした。
「ええと、このオニキスに力を借りる感じの……」
「ほう、調教師か」
「そんな感じだ。契約に付随する制約は特にないが」
「……あ、防具自体に慣れてないから、扱いやすいのがいいです」
オニキス本人が喋っても眉一つ動かさない店主だ。
すぐに棚の一つを案内した。
「なるほど。軽量で、動きを阻害しないやつがよさそうだな。このへんなんかどうだ?」
見れば、そこには革製の鎧が並んでいた。腕を覆うものや頭にかぶると思われるものなど、一つ一つのパーツに別れている。
「いくつか試着してみなさい。調整もできる」
とりあえず言葉に甘えて試してみることにした。
オニキスは別の棚の品物に興味を引かれたようだ。
「こいつは、腕輪か? 防御の魔法がかかってんな」
「おっ、わかるのか。そいつは逸品だよ。さっき言ったような、鎧に制限があるような職のやつに重宝されるんだ」
「ギルドに素早さの上がる指輪があったが」
「ああ、原理はそいつとかわらない。うちは防具を扱ってるから、防御のやつを置いてるがな」
「へえ。……こっちのひらひらはなんだ、防御力はあるのか」
「ないな! 職人の趣味だ」
「趣味かー」
そんな会話をよそに、ルチルはレジーナにも手伝ってもらって試着を終える。
いくつか試した中で気に入ったのが、白いなめし革の胴鎧とすね当てのセットで、縁が金属で補強されたものだ。
なかなかよさそうだ。店主による多少の調整を経て、購入することにした。
「毎度。しばらくそいつで軽い仕事をこなして、立ち回りに慣れるところからだな」
「ありがとうございます!」
しめて、三十銀貨。




