15. 成果
夕刻。
ルチルにオニキス、チャーリーたちの一行は、ほくほく顔でギルドに戻った。
「おかえりなさい。首尾はいかがでしたか?」
納品窓口には鑑定士と呼ばれる職員がいた。
チャーリーは意気揚々と薬草の入った袋を積み上げる。
「見てくれよ、すげえんだぜ!」
「おや、いつもよりたくさん収穫できたようですね」
鑑定士はチャーリーと顔なじみなのだろう、彼も心なしかうれしそうにしている。
「それだけじゃないぜ、まずはこいつを見てくれよ!」
チャーリーが袋の一つをばっと開く。
ひんやりとした空気がたちのぼった。
「おや、こちらは……?」
「ルチルたちが凍らせてくれたんだ」
「そ! すごいんだよ」
子供たちに押し出されてルチルも前に出た。
袋の中身は、冷凍した薬草でいっぱいだ。
拝見します、とそのうちのいくつかを手に取った鑑定士はうなった。
「これは……技量の高い凍結魔法ですね。運搬に時間がかかっているはずですが、溶ける様子もない」
「はい。とりあえず持ち帰ればこちらに保管庫のようなものがあるかなと思ったので、その場では質を留めて、今夜ぐらいまで保つように凍らせてみたんですけど」
「すばらしい判断です。ぜひ今後も、そのように」
鑑定士に満面の笑みを向けられた。よし。
「それじゃ、リストにあったとおりの金額をいただけるんですか?」
「もちろん。これだけの量があれば、五人で割っても結構な額になりますよ」
「やった!」
「わーい!!」
歓声を上げる子供たちが両手を挙げ、打ち合わせている。
「ルチルも! ハイタッチだよ!!」
「あ、こう……?」
「そそ!」
促されて見よう見まねでやってみた。ぱあん!
……おお、これはちょっと楽しい。
最終的に、報酬は一人あたり銀貨十八枚となった。
チャーリーたちは冷凍魔法を使ったルチルに多めにくれようとしたが、丁重に断った。彼らの知識と経験あってこその成果なので。
「それじゃまたね!」
「うん、また一緒に行こうね」
すみかに帰る彼らとギルドの店先で別れる。
さて、どうしようか。
とりあえず財布はかなり重たくなった。
「すごい、一か月ぶんの生活費をほとんど稼いじゃった」
「そうだな」
最低限の暮らしなら、銀貨二十枚でなんとかなる。
ほとんど食費で飛んでしまう計算ではあるが。
オニキスはあごをさすった。
「まあ、今日行ったところはたまたま、あいつらが珍しいやつを残していたとこだろうから、毎回こうとはいかねぇだろうがな」
「それは、うん」
「それに、ちゃんとした装備も揃えにゃなるめぇ。……山ん中、歩きにくかったんじゃねえか?」
「あ、ばれてた?」
よく見ているなあと感心する。
ここ数年、街の中を歩いたことしかないルチルは、いつもの靴で山まで行ってしまっていた。
「そりゃな。いい靴、あつらえに行こうぜ」
「いい靴……うん」
靴をあつらえるのは初めてだ。いつもは既製品の、それもかなり安物しか使っていなかったので。
大きな出費となるが、これが必要な投資というものなのだろう。
そんなことを考えていると、ちょうど何組かの冒険者たちがギルドに帰ってきた。とたんにがやがやと騒がしくなる。
「おっ、ルチル!」
声をかけられてそちらを見ると、『銀の天秤』の面々だった。
「あっ、こんばんは。おかえりなさい」
「よう」
「ただいまー。どう? あれから」
「今日が初仕事だったんです」
「!!!!」
レジーナに尋ねられ、素直に答えると、三人は互いに顔を見合わせ、それからルチルに向き直った。
「ほんと!? どうだった?」
「えっと、大成功でした」
「へぇ、やるじゃん」
「わー、おめでとう!! じゃあ、今日はお祝いにあたしたちがおごっちゃう!」
エドとサイにはよくやったと肩を叩かれて、レジーナはといえばルチルに抱きついてそう叫んだ。
ルチルは目を白黒させる。
「わっ、えっ、あのっ、いいんですか!?」
「後輩に気前よくするのも先輩のつとめ、ってな」
エドは歯を見せてにかっと笑った。




