13. 出発
窓口で、薬草について書かれたメモを受け取る。
納品用の袋というものも預かった。
それでは、出発だ。
「まずは、昼飯を調達するんだ。水はあるよな?」
「うん。ある」
先日ギルドで買った初心者冒険セットに、皮製の水袋が入っていた。
今朝、宿を出るときに水をたっぷり入れてもらっている。
「おーけー。門から一番近くのパン屋が、安くてうまいんだ」
チャーリーが先に立って歩くのに着いていく。彼の周りにいた三人の子供も一緒に行くようだ。
「この子たちも冒険者?」
「ああ、まだ半人前の琥珀級だけどな。おいお前ら、自己紹介」
「キティだよ!」
「メグです」
「オットー!」
元気そうな女の子、慎重そうな女の子、やんちゃそうな男の子だ。
「ありがと。よろしくね」
「こんな小さいのが、冒険仕事なんて大丈夫なのか?」
オニキスの心配に、チャーリーはまーな、とうなずいた。
「山の近くまでは街道があるから、魔物は出ないんだ。山の中に入ってからも、そんなに強いのはいないから、とにかく気をつけてりゃいい。冒険に絶対安全ってことはないけどな」
「それは、うん」
先日、案内係にも釘を刺されたことだ。
「俺たち、親がいないんだ。だから、こういう仕事が手っ取り早くてさ。年長のやつが、下の面倒を見るんだ」
「もっと大人になったら、本物の冒険者になるんだ!」
「そう! 兄ちゃん姉ちゃんみたいに」
なるほど、そういう子供たちの集団があるのか。
オニキスは頭を下げた。
「なるほどな。妙なことを言ってすまん。手っ取り早いっちゅうのはわかるぜ」
「だろ?」
気にしたふうもなく笑うチャーリーに、ルチルも言い添えた。
「私たちも、家と仕事が急になくなっちゃって」
「わあ」
「大変だ!」
「だから今日は、みんなにお世話になります」
「おうよ。何でも聞いてくれよな!」
城門すぐのパン屋には、これから仕事に出るような人や旅装の人が代わる代わる訪れては買い物をしていた。
チャーリーたちは慣れた様子で一番安いパンを手に取り、店主に声をかける。
「これこれ。おっちゃん、いつものやって」
「おっ、いらっしゃい。……ん、そっちの子は新人さんかい?」
店主は鮮やかな手つきでパンにナイフを入れると、薄いチーズを挟んでくれた。
「はい、そうです。今いろいろ教えてもらっているところです」
「そうかい、しっかり食べて頑張りなよ。今後ともごひいきにな」
「ありがとうございます」
銅貨を渡して受け取ったパンを荷物にしっかりしまう。
旅装の人、荷車を引く人などに交じって、城門をくぐる。
外に出た瞬間、ぱっと視界が広がった。
ずっと都市の中で建物に囲まれていたから、開けた場所の明るさは目に痛いぐらいだ。
心なしか、空気の味も違う。
「何年ぶりだろ……」
「さてなあ」
オニキスと二人で目を細めていると、チャーリーが不思議そうにした。
「ずっと街の外に出てなかったのか?」
「うん。キティたちと同じぐらいの年の頃にこの街に来て、それからずっと長屋にいたからね」
「ふうん……冒険者でもなきゃ、そんなもんか」
目の前には、黄みがかったレンガの道が長く延びている。
オットーが教えてくれた。
「ここずっと行くと、都に着くんだぜ!」
「そうなんだ」
道の左右には、緑の草原が広がっていた。オニキスが解説する。
「ありゃ牧草地ってやつだな。馬だの牛だのに食わす草だ」
「幻獣なのに、よく知ってんなあ」
感心したチャーリーは、道の先に見える林のほうを指差した。
「山はあっちのほうだ。二時間ぐらいで着くかな。行こうぜ」
「うん」




