11. 歓迎
「おう……」
「わあ……」
思わず感嘆詞だけで会話してしまう。
「……スノードラゴン、ですか……。……いえ、すみません」
ひとしきり呆然としてから、なんとか気を取り直したらしい案内係が、コホン、と咳払いする。
「あの、失礼ですが、オニキスさんにも鑑定を受けていただいても」
……あっ、そうなるのか。
「仕方ねえなぁ……」
やれやれ、と肩をすくめたオコジョがとてとてとルチルの腕を伝って水晶に触れる。
キン。
律儀にも、部屋にはもう一度雪が舞った。
さて、石板にはなんと出るか。
なんとなく全員で覗き込む。今度はシンプルだ。
『雪竜』。
「……本当にドラゴンだ。初めて見た……」
「言っとくが、これが本来のなりじゃねぇからな」
「ですよね……。こんなところにいていいんですか?」
「……いるんだからしょうがねえだろう」
うーん、と案内係は石板をためつすがめつしている。
「カルマ値が善に振り切れてますね……」
「よせやい、恥ずかしい」
オニキスは居心地悪げに尻尾を振った。
そんなとこまでわかるのか。
「……こちらは念のため、ギルドで控えさせていただいても? あ、ルチルさんの冒険者登録自体は問題ありません」
「まあ、必要なら構わんが」
「大丈夫なんですか?」
「さすがに新規入会者での前例はないと思いますが、高レベルの冒険者で、ドラゴンを使役している方もおられますので。竜調教師と呼ばれる方々ですね。ルチルさんの内部的な扱いも、それに準じたものになるかと」
自力でドラゴンを調教したということだろうか。世の中にはたいした人たちがいるものだ。
ルチルはふんわりドラゴン時のオニキスを思い浮かべたが、あれをどうにかできる気はまったくしない。
本竜からも訂正が入った。
「使役ってか、俺が保護してる感じなんだがな」
「ええ、そのようですね。そういった記録にさせていただきます」
「えっと……それじゃ、表向きの職業は……」
そうですね、と案内係が少し考えて、案を出してくれた。
「調教師でいかがでしょうか」
「それでお願いします」
前のめりで返事してしまった。
*
「出来上がりました。こちらが、冒険者登録証です」
少し待つと、案内係のお姉さんがトレイに乗せたカードを持ってきてくれた。
「おお」
「こりゃよくできてんな」
そこには、ルチルの精巧な似顔絵、名前、先ほど指定した調教師の文字に、今日の日付などが刻まれている。
一瞥したオニキスがひげをぴくぴくさせた。
「やべえくらい強力な魔法だなこりゃ」
「あら、おわかりになります? ギルドへの登録内容に応じて、記載内容も自動で書き換わる優れものなんですよ」
お姉さんはどことなく嬉しそうだ。ルチルは、等級と書かれた欄が気になった。
「この長石級っていうのは?」
「冒険者として、どのぐらいのお仕事をお任せしているかを表す等級です。冒険者として身を立てる際は長石級から始めていただくことになりますね」
「仕事をこなしてきゃ、また変わるってことか」
「はい。ギルドからの信頼の証でもありますので、等級が上がればより難しく、報酬の高いお仕事を回せるようになります。危険度も上がってしまうのは否めないのですが……」
申し訳なそうにした案内係に、オニキスは構わないと手を振った。
「だろうな。ま、その辺は慎重にやらしてもらうぜ」
「はい。随時ご相談も受け付けておりますので、必要な際はお声がけください」
「よろしくお願いします」
そのあたりの会話はひそひそ声まではいかなくても、それなりに落とした声でしていたのだが。
ルチルがカードを受け取ると、お姉さんは突然声を張った。
「それでは、ご入会おめでとうございます! 冒険者ギルドへようこそ!」
わあっ、とフロア中にいた冒険者たちが沸いた。
拍手や指笛を鳴らす者までいる。
「わっ、な、なに……?」
「歓迎されてるみたいだぜ。応えてやれよ」
オニキスに促され、ルチルは改めてフロアを振り返った。
思い思いにくつろいでいた冒険者たちが、みんなこちらを向いており、友好的な笑顔を浮かべていた。
壁際に『銀の天秤』の三人を見つける。ルチルと目が合うと、大きく手を振ってくれた。
「おめでとう!」
「ようこそ!!」
……うん。
ルチルは腹に力を入れて、大きな声で応えた。
「ありがとうございます! これから、よろしくお願いします!!」




