表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡る風  作者: Tachun
3/8

ep.3 金風

日曜日の昼。


駅前のファミレスは、

学生と家族連れで騒がしかった。


「だからそれ絶対お前だって!」


「違うって言ってんだろ」


「いや巡しかいないじゃんそんなアホなことするの」


向かい側で斎藤が腹を抱えて笑っている。


真田もドリンクバーのコップを片手に、

「でもちょっと想像できる」と頷いていた。


「お前ら失礼すぎるだろ」


巡が呆れながらポテトをつまむ。


その隣で、

怜が楽しそうに笑った。


「でも巡、

 たまに変なとこ抜けてるし」


「怜まで言う?」


「事実だもん」


にやにやしながら、

怜がストローを咥える。


窓際の席。


外では春の陽射しが道路を照らしていた。


どこにでもある休日。


どこにでもいる高校生四人。


---


「そういやさ」


真田が急に思い出したように言う。


「文化祭の出し物どうする?」


「あーそれあったな」


「来週決めんだっけ?」


斎藤が面倒そうに机へ突っ伏す。


「もう喫茶店でよくね」


「普通すぎ」


「お化け屋敷は?」


「お前絶対脅かす側やりたいだけだろ」


わいわいと話が続く。


巡はその空気をぼんやり眺めていた。


笑い声。


氷の溶ける音。


店内BGM。


全部が、

やけに心地いい。


「巡は?」


怜が覗き込んでくる。


「え?」


「何やりたい?」


「あー……」


少し考える。

考えてみたものの、全く思い浮かばない。


「普通に喫茶店でいいかも」


「つまんな」


「じゃあ怜案出せよ」


「やっぱり、メイド喫茶でしょ」


「お前がやりたいだけだろ」


真田たちが吹き出す。


「いや似合うだろ絶対」

「女子より可愛いしな」


「ちょ、うるさい!」


怜が顔を赤くする。


その反応がおかしくて、

また笑いが広がった。


巡もつられて笑う。


その瞬間だった。


怜が、

ほんの少しだけ目を細める。


嬉しそうに。


安心したみたいに。


その顔を見て、

巡の胸が妙にざわつく。


——あぁ。


こういう時間が、

続けばいいのに。


ふと、

そんなことを思った。


---


ドリンクバーへ向かう途中。


「巡」


後ろから怜が小さく呼ぶ。


振り返ると、

怜がすぐ近くまで来ていた。


「なに」


「今日、

 楽しい?」


「なんだよ、急だな」


「いいから」

巡は少し笑う。


「まぁ楽しいよ」


怜は一瞬、

息を止めたみたいな顔をした。


それから、

ふっと微笑む。


「そっか」


短い返事。


けれどその声は、

どこか安心したみたいだった。


だからなにさ、そう言おうとした。


その時。


店の自動ドアが開いて、

外の風が吹き込んできた。


冷たい風。


ほんの一瞬だけ、

怜の表情から笑顔が消える。


その目の奥に、

何か暗いものが揺れた気がした。


けれど。


「うわ寒っ」


真田の声で、

空気はすぐ元に戻る。


「誰だよ開けっぱなし!」


「店員さん困ってるって」


いつもの空気。


いつもの日常。


怜もまた、

何事もなかったように笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ