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史上最強のアイドル、異世界転生して、納豆令嬢と、王道アイドルをプロデュース  作者: 逢七


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56.ステージ前夜

こんばんは!

ヒイロ視点に戻ります

 そうこうしているうちに、建国祭はもうすぐそこまで迫っていた。

 準備は順調だ。


 ハルの練りに練ったプログラムは完璧で、建国祭の開幕からの流れ、ステージの配置と動き、ファン対応、問題が発生したときの備えに至るまで、俺らはしっかりと頭にたたき込んでいる。


 2日前には衣装合わせも終わった。

 歌毎に変わる5着の衣装はどれも華やかで最高に動きやすいし、一部の装飾類は振付けを見たユーディとユリアンさんが「悪い、もうちょっと手を入れさせてくれ!」そう言っていったん持ち帰っている。


 当日のナンバーは、シューが中心となって、俺がアルテミア時代に歌っていた曲が3曲と(っていってもシューがだいぶアレンジしちゃってるのもあるけどな)、あとはシューが「これはどうしても!」と持ってきたバラードが1曲と、完全オリジナルが1曲だ。

 どれも本当にいい感じに仕上がってて、ライブでしか届けられないのが残念なくらいだ。


 さらにそれらの曲に合わせる振付けは、俺の動きを覚えたイスが昇華させてよりクールに、しかも俺ら自身がとても気持ち良く動けるタイミングになるよう手直しがされており、そのおかげか、俺らは驚くほど短期間で完璧に踊れるようになっていた。


 そしてそれらの全てが、皇帝陛下を始めとした国の重鎮方と細かく調整を重ねてきたソウ様の力があってのものだというのは、言うまでもない。


 ―――だから、何も恐れる必要はないんだ。


 『アイドル』を見たことのない皆に説明をして、活動するのに必要なものをこの世界でどうやって揃えるかを考えて形にしていく。

 それが俺の役割で、最初こそ出番は多かったけれど、ここまできたら、俺がすべきことは実際はもう少ない。


「そうだよ、だから、あとは当日本番がうまく行くように・・・。」

 ・・・分かってる。だけど、どうしてもやる気が出ないんだ・・・。





 執務室横の控室に結愛が残していった道具たち。

 時々シューやイスがそれらを使っては、「えっ、なんだこれ? 面白いな。」ってはしゃいでいる。

 俺も最初は一緒になって遊んでたんだけど・・・最近はとてもそんな気分になれなかった。


 皇宮からの仕事帰り、街道沿いを歩くと営業を再開したカトレット店が見えてくる。

 結愛が帰ってきてるんじゃないか、ふとそう思って足が向く。

 ・・・でも彼女はいなくて、店長と世間話をしてまた帰る。


 そしていつものバーに寄ると、昨夜はまた、いつか俺に伴奏をしてくれたあの奏者の彼がいて、「やぁ、ヒイロ、今日はどうする?」って聞くからさ、俺は苦笑いをするんだ。

「じゃあ、またツクヨミを・・・、ありがとう、ガオさん。」

 すると彼は、帽子の奥の赤茶色の瞳を優しく垂れて、シューとはまた違う情感たっぷりのアレンジで弦を揺らしてくれた。


 結愛の涙に潤んだ丸く大きな黒糖色の瞳が脳裏に浮かんで、俺はぐっと両手を握りしめた。





 ・・・・・・・・・・・・


「・・・さっぶ。」

 控室を抜け出している俺は、真冬にも関わらず満面に水が張られた噴水を眺め、寒さに身体を震わせた。


 この数日の冷え込みのせいで、皇子宮の中庭は今日は人っ子一人いない。

 腰掛けたベンチが想像以上に冷えていて、そこに、すぅ~っと水面を渡った風が通り抜けたのだった。


「・・・はぁ、しょうがね。今日は戻るか。」

 そう独りごちる。


 控室の熱気が今の俺にはちょっと重いんだけどさ。


 膝上で握り込んだ両手をもう一度ぐっと握りしめると、また風が吹き抜けていった。


 寂しいんだ、俺、・・・ユメちゃん、君がいないとさ。




『・・・もしかして、ヒイロさまですか?』

 落ち込んでここに座っていた俺に、そう話しかけてくれたユメちゃんは天使みたいに可愛かったっけ。

 あのあと前世の話をして、それから、アイドル活動を一緒にプロデュースしよう、そんな話で盛り上がったんだったな。


 そういえばあのときは、彼女は俺の一番のファンで、俺は彼女の前でアイドルの顔で笑っていた。


「よし! がんばるか!」

 ―――思い出すとどこかやるせなくて・・・、

 でも心は少しだけあったかくなった気がしたから、そう言って立ち上がろうとした


 ―――ちょうどその時!


「ヒイロさま?」


「・・・・・!」


 気のせいだろうか? ・・・いや?

 聞き慣れたような、なつかしいような、その声――――――


 慌てて振り向いた俺の目の前には、黒糖を溶かしたような大きな瞳、きれいな白肌にかかる一房の茶色の巻き毛と、影をなすごどに窪んだえくぼ。

 ・・・そして上気してピンクに染まった頬!!


「ゆ、ユメちゃん・・・?」

「ただいま、ヒイロさま!」

 えくぼをぐっと沈ませて笑った彼女が、それはもう可愛くて、え、これは現実なのか?

 ―――俺はゆっくりと彼女に手を伸ばした。


「―――ユメちゃ・・」

 だけど、彼女は、ああっ、なんでっ!? 俺の手が空を切って落ちた。

 

 彼女はさっと身を沈ませて、地面に置かれた大きな箱を漁り始めている。そして、俺の顔の真ん中に何かをぐいと差し出した。

「みてください! ヒイロさま、これっ!」


 ぐいぐいと押しつけられるそれの、10センチ角くらいの立方体の上部には不自然に穴が開いていて、中にはうっすら紋様が刻まれた石が見える。

「・・・(はあ)、えっと、これは?」


「はい! これは、ですねぇ! 舞台装置、ですっ! えっと、それは三色光源でー、こっちは納豆砲を改良したシャボン生成機でしょ? そしてこれが、ガラスの割れる音から思いついた破音機でぇ・・・。」

 結愛はそう言いながら、同じ大きさの立方体を次々と取り出しては、俺の腕に積み重ねていく。


 ―――次第に腕が重たくなってきた。


「・・・ま、待ってっ、ユメちゃん! あの、俺は、これじゃなくて、君を―――・・・」

 きょとんと動きを止めた結愛に、俺はすかさず抱えていたそれらをベンチに置いてばっと両腕を開く。

 そしてそのまま彼女を捕まえて・・・・・

 すかっ! あれ~?


 俺の腕を再度躱した結愛はその場で屈み込んだその姿勢のままに俺を見上げた。

 ほんのちょっと頬を赤くして。


「えっと? そういうのは、もうちょっとだけ、待ってください、ヒイロさま! 私は、その前に、どうしても、どうしても、ヒイロさまの勇姿をもう一度、この目で見たいんです」

今回も読んでいただきありがとうございました!

しまった!毎週投稿は切れちゃいました(´。`)

でも続けてがんばりますぞよ^^

あと、もうちょっと!

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