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史上最強のアイドル、異世界転生して、納豆令嬢と、王道アイドルをプロデュース  作者: 逢七


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57.開幕式

「皆よ! 今年も安寧のうちにこの建国の日を迎えることができ、わがフェルメント帝国、ここに集ってくれた諸君に皇族一同感謝する! どうか今日この日を楽しみ、そしてまた国を盛り立てて欲しい!」

 そんな皇帝の言葉で、建国祭の式典は開幕した。


 温かな日差しの元、花が舞い、香る。


 皇宮正門広場には、この日のために赴いた国中の貴族が集い、それを囲むように皇都に居を構える大店の店主ら、そして門から続く大通りにもたくさんの人が溢れ、今日のこの瞬間、空気は喜びに満ちている! そこへ、ぱあん!という空砲とともに、大きな拍手と歓声が沸き立って、一瞬のうちにまるで波紋のように広く広く広がっていった。


 ―――毎年であればここで皇帝はこの場を後にし、開かれた皇宮のあちらこちらで貴族同士の社交が始まる。だが、今年は幾分様相が違っていた。


 拡声器の前に立ったままの皇帝が、右手を大きく上げたのだ。

 そのため、いったい何事かと広場中央から始まった静まりは、今度は少しずつ緩やかに門まで到達する。それとタイミングを同じくして皇帝は口を開いた。


 拡声器を通した声が静まった広場内に響く。

「今年は、皆に報告がある。」


 現皇帝の治世となって10年余り。

 この場で皇帝自らが語るというその初めての出来事に、すわ、重大なことに違いないと、広場に立つ貴族らは一言だって聞き漏らさないようにと、固唾を飲んでその続きを待っていた。


 すると皇帝はゆるりと口角を上げ、(あご)をゆっくりと動かすと、斜め後ろに立っていた人物を呼ぶ。

 その人物、皇帝とよく似た風貌をした皇太子は一歩前へと進み出ると、皇帝の隣へと並び立ち、先程の皇帝同様に大きく右手を掲げた。


 一瞬ざわと動いた空気は、しかし身じろぎひとつしない皇太子の姿勢によって水を打ち、その代わりに、とまた皇帝の声が響く。

「こここに立つ我が息子、皇太子アダルの婚姻がこのたび成立した。相手はアゼルティーナ王国の第一王女である。ここに二国のさらなる発展を宣言しよう!」


 その直後、うおぉぉぉと歓声が沸き立った。


 それはそうだろう!

 皇帝の発したそれは、多くの国民にとってはまさに吉報そのものなのだから!


 隣国アゼルティーナ王国とは5年前の友好条約以降、急速に交流が進んでいる。

 巷には、かの国の特産品が並び、また魔術具を使った便利な道具によって、国民の生活は変化してきた。

 そして、条約締結、ちょうどその時に交わされた約束のひとつがようやく実現されることとなるのだ。


 アダルと呼びかけられた皇太子は皇帝に代わって拡声器の前に立つと、ぐると群衆を見回した。

「みなさん、私は50年前の戦争を知りません。戦争のために亡くなった国民のみなさんがどれほどいらしたのか、圧倒的な力の前に屈するしかなかったこの国土がどれだけ荒れていたのか、歴史書で学んだそれを私は知りません。ですが、一皇族として、この国の平和のためにできることがある! そのことを私はとても嬉しく思います。()の国の王女とは、その思いを同じくして、今まで親交を重ねてまいりました。どうか、みなさん! 私たちの結婚を祝福してください! そして皆にますますの繁栄を!」



 ぱあん、ぱあん、ぱあん! と三発の祝砲が鳴り、広場は喜び一色に包まれた。


 広場の前方の一角で、俺はその光景を見上げ、不思議な感情に心が大きく波打っていた。


 俺、日本で生まれ育った(ひいろ)だって、戦争を知らない。日本で戦争があったこと、毎年夏に終戦の記念式典があることは知っていても、写真やニュースの映像で見たことしかない。

 でも、目の前の群衆の中にいるおじいちゃんとおばあちゃんが涙ぐんで手を取り合っていて、俺の目の前にはソウ様の肩があって、それが舞台の上の皇太子の姿を見上げて微かに震えていた。


 皇族の中では立場が弱いと言われているソウ様の元に、ヒーロクリフは身を寄せていた。

 だからヒーロクリフにとって皇太子陣営は政治敵のようなもので、ソウ様より能力が劣る皇太子は、その血筋と後ろ盾で優位に立っているに過ぎない、そんな偏見で見ていたみたいだ。


 それは、一流の芸能事務所の同年代のアイドルがもうデビューをしてトップライトを浴びているのを、舞台下から見たデビュー前の気持ちともよく似ていて、でも実際に舞台上に立った時、これはそんな簡単なものじゃないって、そう思った気持ちも一緒に思い出した。


 それで、ああ、今舞台で多くの人の前に立っている皇太子殿下もその重責のために努力を重ねてきた人なのか、とすーーっと心に落ちてきた。


 だから俺は思う

 俺たちは俺たちで、頑張ればいいと。



「―――ソウ様。」

 つい口を突いて出てしまった。

 その俺の呼びかけに振り返ったソウ様は、とてもすっきりとしたあどけない顔で笑う―――

 俺は、こくとひとつ頷いた。



 ちょうど同じくして、広場の興奮も落ち着きを見せるなか、ステージ上では、アダル皇太子に代わり、また皇帝陛下が拡声器の前へと立っていた。

 広場の前方に集まる笑顔の高位貴族たちをぐるりと見回した皇帝は、言う。

「皆の祝福に感謝する。そして、ここで、もうひとつの人事を伝えよう。ルシアナ。」


 その呼びかけでステージの影から現れた美貌に、会場は一気にしんとした。


 鮮やかな青のドレスを纏い、流れるように歩みを進める、大人にも少女にも見える彼女の、希望に溢れた表情。皇族女性にしては控えめと言うのも過言なくらいの数少ない装飾なのに、むしろそうだからこそより際立つ、煌めいたプラチナブロンドと圧倒的に華やかな目鼻立ち。


 広場の皆が息を詰めて、彼女を見つめていた。


 皇帝の隣へとすっと並び立った彼女が、ふわとひとつ微笑む。

 すると、まるで温かな光が野原一面を照らしたかのように、広場一面には、ほぅ~~という吐息が漏れた。


「まもなくやってくる皇太子妃には、補佐としてルシアナ第一皇女がこの任に当たる。これより表舞台に立ち、皇太子、皇太子妃とともに、この国をともに導いてくれることに期待している。ルシアナ。」


 彼女を見つめる皇帝の視線に、ルシアナ殿下はすっと頭を伏せて礼をとった。

 その仕草は洗練された美そのものだ。

 皇帝はまたひとつ満足げに頷くと、最後に、と拡声器をとった。


「最後に! 皇太子の成婚を機に、代替わりに向けて皇子たちの役割を見直していく。これまでソウル第二皇子が受け持っていた数多(あまた)の業務の幾分かを第四皇子が引き継ぐこととする。そして、第二皇子には、このたび新たな特務を担ってもらうこととなった。それを今ここで披露する!!」



 それを合図に俺たちはステージ上へと駆け上がった!

 いよいよ、俺らの初ステージの開幕だ!!!

こんにちは、逢七です

春になる前に投稿するつもりが、こんな時期(;゜ロ゜)

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