14
聖竜国、中央第一区。巨塔の地下、竜王の寝室。煌びやかさとは程遠い、実用さを重視した、ただ寝るためだけの場所である。
「竜兵隊2番隊隊長、竜王陛下の命の下に馳せ参じました」
空間からいきなり現れ、臣下の礼を取るアルバート。竜王の顔に驚きはない。竜王はベッドに腰かけてグラスの中の赤い液体を飲んでいた。
「時間取らせて悪かったね、体調は大丈夫かな?」
白銀の瞳がアルバートを捉える。竜王の目は白目の部分が黒く、人外さを引き立たせているためアルバートはあまり竜王から見つめられることは得意ではなかった。
「はい」
「ブランシュのことは残念だった。愛い子を失くしたよ」
「……私の妹は」
アルバートは本当に言いたかったことを飲み込んで、呻く様に言った。
「私の妹は、どうにもならないのでしょうか」
「両目と両足、だっけ? 治せなくもないよ」
その返答はアルバートの予期しないものだった。欠損を治す方法はないと言われると思っていたからだ。竜王は妖しく笑いながら、アルバートの目を覗き込む。否応が無くその黒と銀のあべこべな目が見える。その目に自分の怯えたような顔が映った。
「ほんとう、ですか……」
「フフフ。信じられない? 僕は古を生きてるからね。今は失われたものも多々あるけど、僕は覚えてる」
竜王は昔を懐かしむように、目を細くした。アルバートは、懇願する。
「どうか、どうか、妹を、救ってください……!!」
「うん。その方法くらいは教えてあげてもいい。君の兄妹愛に期待するよ」
クスっと竜王は笑う。
「そう、兄弟愛。ああ、なんて素晴らしいんだろう」
竜王は枕の下に手を入れると、分厚い本を引っ張り出した。その頁をパラパラめくると、アルバートに見せる。
「古代書、主に魔法薬に関する本だね。ある程度はこちらで用意してあげるけど、足りないものがあるんだ」
「では、私が集めてくれば……?」
「そう、僕自ら作ってあげるよ。体の欠損を治す魔法薬をね」
読んでいただきありがとうございます。




