13
僕→アルバート・リグセル
妹→ブランシュ・リグセル
アルヴァ・アングラレーク→主人公の体の人
風が吹く。まだ幼い妹の金の髪が棚引いている。青色の目が僕を見て輝く。
草原を走っていた。妹と、僕の二人だけで。多分僕が妹を捕まえるまで終わらないのだろう。
このお転婆さんめ、少しは僕の言うことを聞いてくれないと。転んでも知らないぞ。そう思って、危ないよ、と言おうとして、喉がつっかえた。
妹を捕まえなければ。でも、妹はなぜか僕より足が速くて、捕まえようがないのだ。一定の間隔を保って僕が捕まえないようにしてくる。
何か大切なことを忘れている気がする。
ふと、悪寒がした。息苦しい。僕の大切な妹が、化け物になったような感覚。いや、そんなわけないと、妹を追いかけ続ける。
追いつけない。
追いつけない。
「お兄ちゃん」
まるで囁きかけるように耳元で妹の声が聞こえた。妹が無邪気な笑みでこちらを振り返る。どうしたの、と返事をしようと思って、声が出ないことに気づく。
「お兄ちゃん」
ブランシュがまた僕を呼んだ。返事、返事をしないと。でも、息が声帯を震わすことはない。
「お兄ちゃん」
妹が立ち止まった。こっちを向いて首をかしげている。何か、何か言わないと。
「オニイチャン」
今度はちゃんと妹の口が動く。僕が何も言わないことを不思議に思っているようだ。
「助けて」
その一言を言った時、妹の体は紫色の煙に包まれた。ブランシュ!!――そう口にしたかったのに、口からはヒューヒューと空気しか出ない。
「タスケテ」
煙がなくなると、そこに現れたのは、化け物。足首から下は包帯が巻かれている。包帯はところどころ血が滲み、腐臭のような激臭を放つ。こちらを見つめる二つの空洞。そこに空を思わせるあの青い目はない。
「に……ィ、さ……、タ……ぅ、ケッ、デ」
「……ぁ、あ、ぶ、ブラン、シュ……」
美しい妹はどこへ行ったのだろう。
「アハハハハハハハハハハ!!!!」
黒髪の女がこちらを見て嗤っている。
あの女だ。一度だけ姿を見かけたことがある。まだ幼い時だったが、よく覚えている。
こちらを見て笑っている
アルヴァ。この女だけは許さない。
僕はベッドに眠る妹の手を握って寝ていたらしく、そのまま目覚めた。
「必ず、助けるよ、ブラン」
読んでいただきありがとうございます。




