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それは数十秒にも満たない飛行だったが、俺はひどく長く感じられた。
胃の中のものが全部出そうな浮遊感、修学旅行でジェットコースターに乗ったとき、一回転した時のような地面に足のついていない心許無さを喉奥からこみ上げてくるナニかとともに飲み込む。
「やっぱり今からでも森に返したらどうです?」
俺が一人で吐き気と戦っている間にフィンレイがアシュリィちゃんに詰め寄る。
「もー、わざとやったでしょ?いつもより荒いったらありゃしない」
「気のせいですよ。それに、これくらいでへばってるやつはこの村には要らないです」
明らかにフィンレイは俺のことを嫌っている。眉間にしわを寄せ、俺を睨みつけるように見ている。眼光が鋭い。
「アシュ……村長。お…私、行く場所ないんだ。村長は俺に旅人かどうか聞いたけど、お金も頼れる人もいなくて、家がどこかもわかんないんだよ」
自分が情けなくて仕方ない。思ったより弱弱しい声が出て、自分でも参っているんだなと分かる。本当は自分一人のほうが都合がいいはずだ。だれにも関わらずに生きたほうがいいはずなんだ。俺は人を一人死なせてしまったのだし。
「避難民のところまでは送ってやる。そっからはなんとかしろ」
フィンレイが妥協策を述べる。
「俺が飛べばそこまで時間はかからない。半日で戻ってこれる」
「駄目だ」
酷く低い声でアシュリィちゃんが言う。まるで別人になったかのようだった。纏う雰囲気が違う。フィンレイは気圧されるように一歩後ずさった。
「フィンレイ。彼女は蟲の王打倒の切り札になる人間なんだ」
「……」
「君の心配も分からないわけじゃないけど」
「村長、なんか訳の分からない期待されてるけど、別に私にそんな力ないけど……」
「イツク。君はまだ自分の聖刻に気づいてないだけだよ」
「だけどッ!」
期待されてそれに応えられなかったら?俺は一体どうしたらいいのだろうか。
「フィンレイ、イツクに村を案内してあげてくれ」
フィンレイは少し驚いたような顔をした。
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